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zoom RSS 川村湊『福島原発人災記』(現代書館)

<<   作成日時 : 2013/04/03 02:35   >>

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福島原発事故は、人災である。

人災であるからには、責任者がいる。

ところがこの国では誰も責任を追及されていない。

驚くべきことに誰ひとり処罰されていない。

そこで責任あるものたちを片っ端から名指していこう。

それが本書の特徴である。

著者自身認めているように、
本書の内容はインターネット情報の切り貼り(コピペ)である。

それでも大量の情報を1冊にまとめてくれた意義はある。

ここに列挙された人物の名前は、犯罪者のリストである。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


とても多くの人物の名が挙げられているから、
実際に本書を手にとって確認してもらいたいのだが、
ここではテレビに頻繁に出ていた厚顔から取り上げてみよう。

例えば青山繁晴である。

彼は原子力安全委員会のテロ対策委員だった人物で、
柏崎刈羽原発の事故の時に、
漏れた放射能はまったく人体に影響がないと放言していた。

影響がないのなら、彼には福島第一原発の近くに引越してもらおうではないか。

テレビに頻繁に出演していたといえば、
事故直後NHKに出ずっぱりだったのが関村直人であろう。

 ……関村直人・東京大学大学院工学系研究科副研究科長・原子力国際専攻教授は、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会高経年化対策検討委員会の下に設置された高経年化技術評価ワーキンググループの主査として、昨年の8月に福島第一原発の1号炉について、3日間、立ち入り検査をしていたのであり、その経年変化の現状について、安全であるかどうかを検査し、審査していたのだ。そして、安全を確認し、太鼓判を押したのである。(77−78頁)


なんと関村直人は福島第一原発の安全性をチェックした張本人だったのだ。

ところが3・11が起きた。

NHKはあろうことかこの人物を連日解説者として出演させた。

 何よりも、関村直人は、1年も経たない前に、自分たちが立ち入り検査を行い、安全シールを貼ってきたことについて、何らかの釈明、謝罪をしたうえで、日本国民の目の前に出てきて、あまり適切でもなく、タメにもならない“解説”を行っているのだろうか?(79−80頁)


本書で取り上げられている人物は、御用学者だけではない。

政官財のあらゆる責任あるものたちがずらりと列挙されている。

たとえば日本原子力文化振興財団という団体がある。

 こうして、日本原子力文化振興財団は、行政・業界・民間の総力を集めて、原発推進の宣伝・広報に日夜努めている。2010年度の財団の収入は9億円であり(原子力マネー、原子力予算のごく一部だろう)、この他に3億円あまりが、政府からの交付金として渡されている。その支出で注目されるのは、『朝日新聞』、『読売新聞』などへのコラム提供や大きな紙面広告、それに放送局への番組やCM提供、シンポジウムや講演会の主催など(『リング』などの小説家・鈴木光司、エジプト考古学者・吉村作治などが常連講師である)のマスメディアに対するアメだろう(麻薬といってもいいかもしれない)。(115頁)


財団のカネに群がる著名人たち。

理事のなかにSF作家の豊田有恒がいるが、上坂冬子、元朝日新聞記者・大熊由紀子らが、この「日本原子力文化振興財団」の“お抱え”の物書きだったと、広瀬隆は指摘している。『原子力』に連載を持っている岸本葉子や、東電のCMでお馴染みのキャラクター・デンコちゃんの原作者の内田春菊らも、そうした人たちだろう。(115−116頁)


木元教子が原子力委員になったり、
福島敦子が原子力安全キャンペーン講演の講師をしたり、
メディアとの癒着もひどい状態だった。

これらのチンピラがカネに群がって原子力村を支えた。

原子力村というのは結局どのような関係図になっていたのか?

本書で手際よくまとめてくれているので引用しよう。

 東大、東北大、大阪大、京都大、東京工業大学などの工学部や原子力の研究所などを中心とした「原子力村」のアカデミー村落。東芝、日立、三菱重工、富士電機、日本鋼管、鹿島建設などの機械製造・土木建設部門の村落。東京電力をはじめとする9つの各電力会社(東京電力、北海道電力、東北電力、中部電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力――沖縄電力は原発を持たないので、ここからはずれる)の村落。内閣府、文部科学省、経済産業省、国土交通省、総務省などの官僚村落。こうした“四位一体”の原子力推進勢力が、時の政府中枢の権力と野合しながら、日本の原発ビジネスを牽引してきたのであり、そのとどのつまりが、日本列島を沈没させかねない今回の福島原発震災というカタストロフィー(破局)を引き起こしたのである。(128頁)


彼らだけが勝手に滅亡してくれるならよい。

それならそれは歓迎すべきことだと、著者も述べている。

だが彼らは安全で快適なところでのうのうとしている。

被害に苦しむのは一般市民なのである。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


日本に原子力を持ち込んだA級戦犯は、正力松太郎中曾根康弘である。

 正力松太郎中曾根康弘が日本の原子力国策、原子力行政、ひいては原子力産業の“生みの親”となったのは、「敗戦」と「原爆」がトラウマとなっていたということが想定される。日本はアメリカに科学の力によって敗北したというのは、日本の科学者たちの共同観念であって、とりわけ原爆製造については、日本でも理化学研究所仁科研究室でウラン爆弾の製造研究を行っていて、その困難さに直面していたこともあり、アメリカのその製造技術に驚嘆したのである。(167−168頁)


正力松太郎は原子力委員会の初代委員長にも就任している。

5代目は三木武夫

7代目は中曾根康弘

12代目は佐藤栄作

ほかにはこんな連中も委員長になっていた。

田中眞紀子中川秀直谷垣禎一有馬朗人中曾根弘文大島理森町村信孝など。

また今回の事故に関するA級戦犯で忘れるわけにはいかない人物がいる。

原子力安全委員会委員長の班目春樹だ。

本書の彼に関する部分を読んでいても、腸が煮えくり返る。

 自己保身、欺瞞、無能力、ゴマカシ、虚偽、事態を小さく見たいという小心さ、それらのものが、この期に及んでも彼を縛り付けているのであり、こんな男を「専門家」として重用しなければならない政府もどうしようもないが、その被害は近隣の市町村民、福島県民に限らず、日本国民全部、いや、地球上の全人類と全生物に及ぶことを考えれば、まさに万死に値する罪なのである。もちろん、こんなことを、こんな男にいってもしようがないのだが。(180頁)


さらにカネのためなら何でもやるのが経済界だ。

 かつての東京電力の社長・会長で、経団連の会長も歴任した平岩外四が、原子力産業への大いなる応援団長(当事者でもあった)だったように、経団連と原子力産業協会とは、深いつながりがあったのである。(200頁)


現在の日本経団連会長の罪もきわめて重い。

 日本経団連の米倉弘昌会長が、福島原発震災の起きた数日後の記者会見で、記者から「日本の原子力政策は曲がり角か」と聞かれて、「そうは思いません。今回は千年に一度の津波だ。(地震に)あれほど耐えているのは素晴らしい」といい。原子力政策の見直しの必要性に「ないと思う。(東電は)自信を持つべきだと思う」と答えて、被災者たちの顰蹙を買った発言をしたのも(『東京新聞』「こちら特報部」2011年3月21日朝刊)、経団連のこうした昔からの原子力産業への関与ぶりを見れば、その遺伝子がきわめて愚かな形で出てきただけともいえる。
 それにしても、この期に及んでも、まだ東京電力を庇い、ぬけぬけと「千年に一度」の地震や津波に耐えたのだから素晴らしいなどといっている愚言、暴言を、記者会見に臨んだ記者たちは黙って拝聴していたのだろうか。こんな愚か者が、財界総理とか、日本の実力者とかいわれる地位に就いているというのは、こうしたマスメディアの批判精神の欠如にあることに、気がつく記者がいないということは、まったくもって嘆かわしい限りだ。所詮、同じ穴のムジナ同士の庇い合いということなのだろうか。(201頁)


巷ではこういう人物が「エライひと」とされるのだから、
世の中は狂っているとしか言いようがない。

本書には、原子力政策で甘い汁を吸ってきた企業名も列挙されている。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


著者は韓国に渡った。

ソウルに着くと、空港にも、ホテルの入り口にも「頑張れ、日本!」の文字の垂れ幕やらポスターがあり、義捐金箱が置かれていた。……だが、原発震災については、こうした善意や好意を簡単に受けていいものだろうかと、少し懐疑的になる。(218頁)


世界中から多額の義捐金が寄せられた。

だが日本人はこれらの善意を簡単に受け取ってよかったのか?

わたしも同じように感じる。

なぜか?

 原発の売り込みを目論んで、CO2削減に率先して取り組むフリをし、“クリーン”なエネルギーとして原発をアジアなどに売り込もうとした国策的商売に邁進していた日本が、そんな善意や好意を受け取る権利があるだろうか。ましてや核武装の思惑からプルトニウム保持を企み、他国ではとっくの昔に中止した高速増殖炉やプルサーマル計画などの「核燃料サイクル」の“見果てぬ夢”に固執し、日本人だけどころか、人類そのもの、地球上の作物すべてを滅亡の危機に陥れようとした日本の原発関係者と、それを漫然と許容してきた日本国民は、他国からの友情溢れた好意や善意を受けとめる前に、深甚な反省と謝罪をしなければならないはずだからだ。(218頁)


われわれ日本人は、取り返しのつかない罪を犯してしまったのだ。








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