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zoom RSS 奥村宏『東電解体』(東洋経済新報社)

<<   作成日時 : 2013/04/11 02:13   >>

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中小企業が不祥事を起こせば、厳しい責任追及が待っている。

場合によっては倒産に追い込まれる。

わたしたちも悪いことをしたら厳しく責任が問われる。

民事や刑事で責任が問われる。

では、福島原発事故を引き起こした東京電力はどうか?

 東京電力福島第一原子力発電所の事故の損害賠償を支援するため原子力損害賠償支援機構法案が2011年6月の国会に提出され、8月になって可決、成立した。(25頁)


これはいったいどのような内容だったのだろうか?

 ……10兆円を超えるといわれる賠償費用を負担するために、原子力損害賠償支援機構……を作り、東京電力を含む原発を持つ9電力会社が「機構」に負担金を支出し、この資金をもとに「機構」が東京電力に資金を交付し、この資金から東京電力は被害者に賠償金を支払う、そして政府は必要な時に現金化できる交付国債を発行して、それを「機構」に与えるというものである。
 電力各社の負担金は経済産業省が電気料金算定時の原価に含めることにするため、各社のコスト削減努力で吸収できなければ電気料金の引き上げとなり、消費者の負担になる。(25−26頁)


つまり私たち消費者の負担で片付けるというわけだ。

加害者の賠償を被害者に負担させるという狂気。

このずる賢く無責任な仕組みを考案したのは誰だろうか?

じつはここに黒幕がいた。

東京電力のメインバンクである三井住友銀行が作成したものだったのである。

 それは国民の税金と消費者の負担を前提にして東京電力を救済しようとしているところからすべては出発している。
 そしてこれが銀行救済のためであることはいうまでもない。(29頁)


なんともご立派な日本人ではないか。

 人を殺したり、傷つけたりした場合、刑法によって罰せられ、刑務所に入れられたり、あるいは死刑になる。
 ……
 ところが東京電力は福島第一原発の事故で放射能を放出し、多くの人に危害を与えたにもかかわらず、なんらの刑事罰も課せられていない。問題になっているのは損害賠償だけである。人を傷つけてもカネさえ払えば済む、というような国はどこにもない。(29−30頁)


カネさえ払えば済むというより、
そのカネも彼らは実質的に負担しないのだからすごい話である。

週刊誌『アエラ』(5月23日号)に次のような記事が掲載されたという。

 「この東電救済『機構』(原子力損害賠償支援機構)は問題点だらけだ。
 第一に東電に融資する三井住友銀行の原案をもとに政策立案している点だ。……同行を含む銀行団は3月末の約2兆円の緊急融資を含めて4兆円以上の債権を東電に有するが、債権保全をしたい銀行のアイデア(立案者である三井住友の車谷暢昭常務の名を取って霞が関・永田町では“車谷ペーパー”と呼ばれている)が政府案のたたき台になったため、当然銀行はビタ一文も損をしない案になっている。東電の大株主は第一生命と日本生命の大手生保および三井住友などメガバンク三行である。銀行案がベースなので、彼らの懐が痛む融資をするわけがない。債権者であり大株主でもある彼ら利害関係人――つまり東電で儲けてきた人たち――が損せずに済みそうなのだ」。(98頁)


企業が不祥事を起こしたら、株主が責任をとるはずではないのか?

だから株主は「会社は株主のものだ」と主張してきたのではなかったか?

 東京電力の場合、原発事故で損害賠償額が巨額になるということから株価は暴落していたが、原子力損害賠償支援機構ができて、公的資金が投入されるというところから急反発した。
 国民の税金で救済されながら、銀行も株主も損をしないで、会社はそのまま存続する――これほど不思議な話はない。(100頁)


原発事故で責任を果たさないばかりか、
平然と利益まで得てしまうのだからこれもまたすごい話だ。

原発事故があっても儲かるなら、株主の笑いは止まらないだろう。

機関投資家にとっては、
ひとびとが被曝しようと、ガンになろうと、環境が破壊されようと、
関係ないのだろう。

福島のひとびとが被曝しても、へらへら笑っているのだろう。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


莫大な損害賠償を考えると、東京電力だけではどうにもならない。

かといって、東京電力をつぶすわけにもいかない。

そこで国有化というアイデアが登場する。

では東電の国有化は何を意味するのだろうか?

国有化はじつは企業救済以外のなにものでもない、と著者は喝破する。

それは、あのりそな銀行を想起すればよい。

 ……りそな銀行(りそなホールディングス)……が経営破綻したというので株価が暴落していたのだが、減資しないで、政府が1兆9600億円もの公的資金を投入して、普通株と議決権付きの優先株を取得し、事実上国有化すると発表したとたんに株価は急反発して、株主は助かった。
 これは株主の負担なしに公的資金でりそな銀行を救済したということである。株式会社は本来、株主有限責任であり、株主は持っている株式がタダになってしまうかもしれないが、それ以上の責任は負わなくてよい、ということになっている。
 ところが、その株主は有限責任の責任さえ負わなくてよい、というのであるから、これは“無責任会社”というしかない。(112頁)


こんな無責任な連中が国民にモラルを説く国。

それがわが日本である。

ここでも株主は責任をとるどころか、儲けたのである。

同じことはアメリカでも起きた。

 2008年のサブプライム危機でリーマン・ブラザーズが倒産したあと、アメリカ連邦政府はシティ・グループなど大手の商業銀行の優先株を取得するという形で公的資金を投入した。また、経営危機に陥ったクライスラーや、GMに対しても公的資金を投入して、部分的にこれらを国有化したが、その後、事態が収まると、政府は持っていた株式を放出している。
 これは企業の国有化という名の救済であって、真の意味での国有化ではない。(113頁)


では、どうするべきなのだろうか?

著者は、解体して、分割するべきである、と主張する。

 そこで発電部門については、原子力発電はもちろん、各地の火力発電所や水力発電所もそれぞれ独立させ、それを新会社に移すか、あるいは県や市・町・村営にする。
 同様に送配電についても地域ごとに独立した会社にする。そして新規に参入する会社にも経営させる。(141頁)


発送電分離のうえ、解体・分割。

東京電力はあまりに大きすぎたのである。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


かつてバブル経済が崩壊したとき、
いくつもの金融機関が公的資金によって救済された。

経営責任が追及されることもほとんどなかった。

経営が失敗しても税金で救われるなら、こんな楽な商売はなかろう。

救済のときに決まって持ち出された理屈があった。

「会社が大きすぎて、倒産させると影響があまりに大きい」。


そう言って政府は問題企業を救済してきた。

そうして無責任経営は温存された。

大きすぎてつぶせないのなら、
そもそも企業を大きくしてはいけないのではないか?

そう考えさせる本書であった。

最後に、東京電力の体質の一端をうかがわせるエピソードを紹介する。

大野誠治著『沈黙の巨人 東京電力』にはこんな話が出ているという。

 1994年6月、荒木浩が東京電力の第8代目の社長に就任したが、その時、笑いながら次のように語ったという。
 「『よく考えてみたら、当時会長をなさっていた平岩さんからも、社長だった那須さんからも、「お前、社長をやれ」と言われたことはなかったんですよ。ある時、お二人から呼ばれてたので、平岩さんの部屋に行ったら、お二人が並んでいて、私がソファーに座ると、「では記者会見は何時にしますか」とお二人で話をはじめたんです。(中略)その記者会見が社長就任のものでした。だから、私は誰からも、一言も社長をやれとは言われていないんです』(151頁)


これを微笑ましいエピソードと感じたひとは、
そもそも企業とは何なのかがまったく分かっていないひとである。

もうひとつ。

「日経ビジネス」(2011年4月25日号)から。

 「東電中興の祖で、長く経済同友会代表幹事も務めた故・木川田一隆(社長在任1961〜71年、会長在任71〜76年)は『企業の社会的責任』『質的経営』を唱えた。日本企業が高度成長の担い手として事業を拡大する一方、公害問題に直面する中、木川田はオピニオンリーダーとして存在感を高めていった。その理念を実現するため、『コストの低い、クリーンなエネルギー』を模索する電力会社は原子力発電に行き着く」。
 そこで福島県出身の木川田は当時、同県選出の衆議院議員木村守江、同県知事佐藤喜一郎らと一緒になって働きかけて、大熊町と双葉町の旧陸軍航空基地跡地に東京電力としてははじめての原発基地を建設した、というわけだ。(166頁)


原発と軍との関係が明らかになる。

それより、「企業の社会的責任」だそうである。

その企業がいままで何をしてきたのか?

笑わせてくれるではないか。









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