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zoom RSS NHK「東海村臨界事故」取材班『朽ちていった命』(新潮文庫)

<<   作成日時 : 2012/07/20 00:20   >>

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1999年9月30日のことだった。

大内久さん(35)は朝6時に起床して、いつものように職場へ向かった。

彼には妻と小学3年生の息子がいた。

彼は、茨城県東海村の核燃料加工施設JCO東海事業所の作業員だった。

午前中、上司の指示にしたがい、
バケツのなかで溶かしたウラン溶液をろ過する作業を行なっていた。

ろ過されたウラン溶液は沈殿槽と呼ばれる大型容器に移し替えられた。

そのときだった。

大内さんはパシッという音とともに青い光を見た。

臨界に達したときに放たれる「チェレンコフの光」だった。その瞬間、放射線のなかでももっともエネルギーの大きい中性子線が大内たちの体を突き抜けた。(11−12頁)


作業所内にサイレンが響き渡り、別室にいた上司が「逃げろ!」と叫んだ。

大内さんは、ただちに病院へ搬送された。

医療スタッフも駆けつけた。

「被ばく量 8Sv」


当時の事務職員が書いたと思われるメモにはこう記されていた。

8シーベルト以上の放射線を浴びた場合の死亡率は、100パーセントだ。染色体検査などの結果から、最終的に大内の被曝量は20シーベルト前後とされた。これは一般の人が1年間に浴びる限度とされる量のおよそ2万倍に相当する。(21−22頁)


医師が尋ねると、大内さんはしっかりと受け答えをした。

相当量の被曝をしたが、しばらくは意識もはっきりしていた。

顔面が少しむくんでいるように見えたものの、
皮膚が焼けただれているわけでもなく、水ぶくれも見られなかった。

このとき、見かけはそれほど深刻そうではなかった。

 大内は「ゆっくり休みたい、寝たい」と……こぼした。しかし、すぐそれを打ち消すように、「疲れるけれども、みんながよくしてくれるし、やさしくしてくれるから、そうも言ってられないね。がんばらなきゃいけないよね」と言い直した。(71頁)


しかし、身体の具合はみるみる悪化していった。

このころ、看護記録に記された大内の言葉には我慢の限界を超えた叫びが多くなっていた。
「もう嫌だ」
「やめてくれよ」
「茨城に帰りたい」
「おふくろ」
「1人にしないで」(75−76頁)


検査と治療の連続。

 なかでも、あるとき大内がつぶやいた言葉は治療を担当した医師や看護婦たちにショックを与えた。
「おれはモルモットじゃない」(78頁)


医療従事者たちは、放射能の恐ろしさを目の当たりにしていた。

 被曝して1カ月後に撮影された右手の写真では、皮膚がほとんどなくなり、手の表面は大火傷をしたようにじゅくじゅくして赤黒く変色していた。
 右手から右上腕、右胸から右脇腹の部分、そして太股へかけて、皮膚が水ぶくれになっては、はがれ落ちていった。障害は浴びた放射線の量が多いところから徐々に広がっていった。皮膚がはがれたところは点状に出血があり、体液が浸み出していた。(108頁)


やがて、目ぶたが閉じない状態に陥った。

目が乾かないよう黄色い軟膏を塗った。

ときどき、目から出血し、爪もはがれ落ちた。

大内さんは、2カ月以上の間、命を必死につなぎとめていた。

だが、20Svもの被曝に耐えられるはずもなかった。

 1990年12月21日午後11時21分。
 大内久、死亡。享年35だった。(169頁)


被曝してから83日間、あまりに急激な変化だったという。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


大内さんの同僚の篠原理人さんも、被曝から211日目に亡くなった。

この臨界事故でいったいどのくらいの量のウランが核分裂したのか?

今回の臨界事故で核分裂反応を起こしたウランは、重量に換算すると、わずか1000分の1グラムだった。(195頁)


本書を読んでも何も感じないひとが、原発推進派・容認派・黙認派である。

そしてあまたの無関心層のひとびと。

この期に及んで無関心というのはもはや犯罪であろう。

本書に掲載されている大内さんの写真は衝撃的である。

なお、本書の「あとがき」にこう書かれていた。

 原子力に頼る、世界で唯一の被爆国・日本。(211頁)


当ブログは何度も述べてきたが、日本は「唯一の被爆国」ではない。

これからも何度でも言っていく。

日本は唯一の被爆国ではない。










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高木仁三郎『原発事故はなぜくりかえすのか』(岩波新書)
当ブログは、2008年に高木仁三郎の著書を紹介している。 ...続きを見る
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2012/12/06 12:02

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