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zoom RSS 菅野仁『友だち幻想』(ちくまプリマー新書)

<<   作成日時 : 2011/06/26 00:27   >>

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著者は、ジンメルなどの研究をしているひとらしい。

専門家が「友だち」についてどんな興味深い考察をしているのか、
と大いに期待して読んだ。

でも、がっかりした。

がっかりしたけど、大筋では間違ったことを書いているわけではない。

簡単に紹介しておく。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


日本の若者には、海外の若者には見られない特徴があるという。

アメリカ、中国、韓国の若者には、
「偉くなりたい」「自分をみがきたい」といった上昇志向が目立つ。

「将来ビッグになってやるぜ」といった感じだろうか。

それに比べて日本の高校生は「偉くなりたいとは思わない」「そこそこ生活できればいい」という将来に対する醒めた意識が他の3国に比べて目立つ一方、「友人重視指向」の傾向が突出して高いのです。(11頁)


日本の若者はすでに疲れきっているということか?

「友だちとの関係をいかにうまくつくれるか」。

それが日本の若者にとってもっとも重要な関心事になっている。

友だちをたくさんつくりたい。

友だちに嫌われたくない。

友だちがいないとさみしい。

友だち関係に神経をすり減らしながら生きている日本の若者。

 友だちが大切、でも友だちとの関係を重苦しく感じてしまう。そうした矛盾した意識をつい持ってしまうことはありませんか。(14頁)


日本の多くの若者がとりつかれている意識を、著者は「友だち幻想」と呼ぶ。

 これはじつは、非常に心が休まらない状態をお互いに作りあってしまっていることになりはしないでしょうか。(52頁)


子どもたちは心が休まらない状態を生きている。

ところが、大人たちはそのことをまるっきり理解していない。

……やはり「子どもたちというのはみんな良い子たちだから、教師がサポートさえすれば、みんな一緒に仲良くできるはず」という前提で頑張っているようなのです。(66頁)


しかし、このような大人の考えがかえって圧力を強めているのではないか?

熱心な教師ほどこう考えている。

……「それにはみんなで一つになって」とか、「人格教育に力を入れて、心豊かな子どもたちを育てたい」「みんなで心を通い合わせるような、そんな豊かなクラスを作っていきたいと思っているんです」……。(66頁)


教師は、子どもがひとりでいることを許さない。

「○○ちゃん、そんな1人でいないで、みんなの輪に入りなさい」……。(67頁)


親もそうであろう。

「個性を大切に」と言う一方で、ひとりでいることを許さない大人。

「友だち」がいない子どもは、それだけで不安な存在なのだ。

「友だち」は仲良くしているものだ、と大人は考える。

だから「いじめ」はたんなる「友だち関係の失敗」だと考える。

仲良くできないのは、仲良くする努力が足りないからだ、と。

そうすると、大人が言えるのはせいぜい「みんな仲良くね」である。

 単に「いじめはよくない、卑怯なことなんだよ」「みんな仲良く」という規範意識だけではいじめはなくなりません。そうではなくて、「自分の身の安全を守るために、他者の身の安全を守る」という、実利主義的な考え方も、ある程度学校にも導入したほうがよいのではないかと思います。(90頁)


「友だち」がすべてだと思っている子どもたち。

彼らにとって「友だち」がいなくなることは何を意味しているのか?

 例えばいじめで自殺する子がいる学校というのは、どういう状況になっているのか。子どもが、生命の安全が保障されないようなところに毎日通わなければならないということです。これはイラクの危険地帯に行けといわれているのと同じようなことで、とんでもない話なのです。(101−102頁)


日本の学校には、「友だち」に嫌われたら生きていける空間がない。

家にも学校にも逃げ場がない。

「嫌われる」ということは嫌われる理由が自分にあるということだ。

だからこそ「友だち」を大切にしないと生きていけない。

もっと「友だち」から好かれる自分にならないといけない。

もし「友だち」に嫌われても、「ほんとうの友だち」がいてくれれば……。

そうすれば生きていける。

どこかにいてくれるはずの「ほんとうの友だち」。

だがこのような発想について著者はこう断言する。

「自分のことを100パーセント丸ごと受け入れてくれる人がこの世の中のどこかにいて、いつかきっと出会えるはずだ」という考えは、はっきり言って幻想です。(126頁)


不安になったとき、その不安に耐え切れなくなったとき。

自分は存在している価値がないと思わされてしまう。

だからかえって「ほんとうの友だち」にめぐり合いたいと願う。

「自分をぜんぶ丸ごと受け入れてくれる」ということを、「絶対受容」という言葉で表現したりしますが、この絶対受容性を、人間はついつい求めがちなのです。
 たとえば女の子なら、それは「王子様願望」のような形で現れますよね。(130頁)


日本人が好んで使うフレーズに「あなたはひとりじゃない」がある。

「だいじょうぶ、あなたはひとりじゃない」。

この呑気な励ましも、「友だち幻想」を増幅させるているのではないか?

大人も子どもも「友だち幻想」に囚われている。











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