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zoom RSS 雨宮処凛『生きさせろ!』(太田出版)@

<<   作成日時 : 2011/01/04 12:38   >>

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いまや数多くの著作をもつ雨宮処凛。

本書は、彼女の代表作のひとつと言っていいのではないか。

日本の現状がいかに残酷で無惨なものかを克明に記述する。

驚くがよい、これが日本の陰惨な現状なのだ。

中高年諸君よ、これがあなたがたのつくり上げた日本の姿なのだ。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


本書は、つぎの言葉でもって幕を開ける。

 我々は反撃を開始する。
 若者を低賃金で使い捨て、それによって利益を上げながら若者をバッシングするすべての者に対して。
 我々は反撃を開始する。
 「自己責任」の名のもとに人々を追いつめる言説に対して。
 我々は反撃を開始する。
 経済至上主義、市場原理主義の下、自己に投資し、能力開発し、熾烈な生存競争に勝ち抜いて勝ち抜いて勝ち抜いて、やっと「生き残る」程度の自由しか与えられていないことに対して。(5頁)


日本は格差社会になった。

小泉純一郎は必死に否定していたが、もはや誰にも疑いようがない。

格差拡大の要因のひとつは、非正規雇用の激増だ。

 正社員の平均年収387万円に対し、フリーターの平均年収は106万円。生涯賃金は正社員2億1500万円に対し、フリーターは5200万円(UFJ総合研究所)。(6頁)


年収106万円でどうやって生活しろというのだろうか?

ただ、正社員の平均年収の低さにも驚いてしまう。

自己責任論者は、こう言う。

「フリーターの年収が低いのは、努力が足りないからだ」と。

「フリーターは怠けている」と言いたいらしい。

だが実態はちがう。

 フルタイムで月曜から金曜まで働き、月収が10万円以下の派遣社員はザラにいる。
 既婚の派遣社員が妊娠したら当たり前のように中絶を迫られ、中絶しないと解雇される(ある産婦人科では、中絶手術に来る多くの人が派遣社員ということだった。彼らはそんな人々を「現代のエアポケットに落ちた人たち」と呼んでいる)。
 そんな派遣会社が莫大な利益を上げている。(7頁)


こんなひどい現状がまかりとおっているというのに、
世の中のひとたちは非難の矛先を若者に向けようとする。

企業には一切向けようともしない。

 なぜ、日本の若者は暴動を起こさないのかという言葉をよく聞く。(8頁)


わたしもよく聞く。

イギリスでもフランスでも若者は怒っている。

なのに日本の若者は怒らない。

デモにも行かない。

しかし著者は、すでに若者は別の形で抵抗をはじめている、と言う。

 すでにひきこもりと呼ばれる100万人が、労働を拒否して立てこもっている。ニートと呼ばれる85万人が、無言のままにストライキを起こしている。(8頁)


なるほど、そういう見方も可能かもしれない。

ニートは、粘りづよくストライキを戦いつづけているひとたちなのかもしれない。

 悪いのは自分だけではないような気もするし、しかし、誰が悪いのかわからない。たまった怒りは、そうして自分自身へと向かう。手首を切ってみたり、大量に薬を飲んでみたり、ネット上で心中相手を探してみたり、不毛な誹謗中傷合戦を繰り広げてみたり、あるいは明らかな嘘をしたり顔で繰り返す親に暴力をふるってみたり。暴発は起こっている、散発的に。1人の部屋で、家庭内で、ネット上で。
 しかし、悪いのは決してあなたではない。(9−10頁)


敵は、いまもほくそ笑んでいる。

弱者をバッシングして、問題をすりかえている。

だから労働者は反撃を開始するのだ。

 闘いのテーマは、ただたんに「生存」である。生きさせろ、ということである。生きていけるだけの金をよこせ。メシを食わせろ。人を馬鹿にした働かせ方をするな。俺は人間だ。(10頁)


そうだ、われわれは人間なのだ。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


かつて「日本型経営」がもてはやされた時期があった。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと言われ、日本人は浮かれていた。

だが、グローバリゼーションの時代、それではやっていけなくなってきた。

そこで日経連は1995年、「新時代の『日本的経営』」を提唱した。

よく知られているこの提言は、これからの働き方を3つに分類した。

 @ 長期蓄積能力活用型

 A 高度専門能力活用型

 B 雇用柔軟型


@は、正社員採用される幹部候補生のエリート社員のことだ。

Aは、高度なスキルを持ったひとたちで、契約社員のかたちで採用される。

Bは、有期雇用で時給制、昇級なし、使い捨て可能な労働者である。

〈畜舎の求める犬種は、営業犬や事務犬、警備用の猛犬から介護犬、オペレイター犬や単純作業犬まで様々で、柵を出たり入ったりする雑種の野良犬、捨て犬などかき集め方も色々。まずいので食用には向かず寿命も短いが、なにしろ数が多いので補充はいくらでもきく。したがってエサはすぐに死なない程度でいい〉(『ミッキーマウスのプロレタリア宣言』より)(35頁)


言わなくても分かると思うが、ここで言う「犬」とは、労働者のことである。

非正規雇用を急増させたのは、若者ではない。

若者が努力しないせいで非正規雇用が急増したのではない。

労働者派遣法という法律によって増やされていったのだ。

労働者派遣法は、86年、ソフトウエア開発や秘書、翻訳、通訳、旅行の添乗などの専門性が高い職種に限って人材派遣を認めるものとして施行された。それまでは、民間の職業紹介や労働者供給業は原則として禁じられていたのだ。「人夫供給業」などと呼ばれるものはあくまでも裏の仕事で後ろ暗いイメージが常につきまとっていた。が、それが大手を振って堂々と合法化されたのだ。(36頁)


先の日経連の提言のあと、政府はただちに「改革」に着手した。

そして日経連提言の翌年の96年、労働者派遣法は改正され、それまで16種だった業種に新たにテレマーケティングやセールスエンジニアなど10職種が追加される。99年には更に改正され、人材派遣の対象業務が原則自由化となり、ほぼ全職種に拡大。そして04年、製造現場への派遣も解禁される。この背景には01年に発足した小泉政権がバカのひとつ覚えのように「規制緩和」と繰り返していたという流れがある。(36頁)


さらに付け加えるなら、その小泉のバカを国民が支持したせいでもある。

今日も北海道から沖縄まで、全国の若者が愛知や兵庫や三重などの大工場に送り込まれている。時給は1000円程度。しかし、600円代のバイトしかない東北、北海道や沖縄の若者たちにとって1000円の時給は魅力だ。求人広告には「月収30万円可能」などという言葉が踊る。しかし、実際に働いてみれば、寮費や光熱費、また寮のテレビなどの「レンタル料」まで数百円単位でむしりとられ、残るのは十数万円程度。(37頁)


若者バッシングをする中高年は、こういう実態を知らない。

知らないくせに、
「求人はたくさんあるはずだから、選り好みする若者が悪い」
と知った風な口をきく。

また、各企業が「偽装請負」という犯罪行為を行なっていたことも明らかになった。

では、なぜ企業は派遣より請負を使いたいのか。理由は、派遣より請負のほうが労働コストが安く、また監督官庁もなく、労働者派遣法にも縛られず、自由にクビを切れるからである。また、製造業の場合、派遣で働く人は1年経ったら直接雇用しなければならないが(07年からは3年)、請負であれば何年使っても直接雇う義務はないし、安全責任に関しても責任が暖昧だからだ。とにかく請負は派遣よりずっと無権利で、働く人にとってはたまった話ではないが、企業にとっては都合が良すぎるのだ。(47頁)


それなのに奇妙なことに自己責任論者たちは、企業を責めようとはしない。

犯罪行為を行なっている犯罪者なのに、だ。

犯罪者を非難しないで、犯罪犠牲者の若者を非難するのである。

まったくひどい話だ。

実際に働くときに何の説明も受けないことから、彼らは自分が派遣か請負かすら知らない。……使用者責任が暖昧なため、揉み消されるなど「労災隠し」が横行する。結果、怪我をしたりしても、労災扱いにならないばかりか自費で治療し、休んだ分の補償など何もないという事態が当たり前に起こっている。そしてそんなふうに「労災にしない」請負会社が、派遣先の企業から「評価」されるというどうしようもない現実まである。(47頁)


企業は犯罪を繰り返す常習犯なのだ。

信じがたい話だが、指を1本切断しても労災にせず、2万円払って済ませたという話もある。(48頁)


請負会社が不当に儲ける仕組みもあるという。

請負代金には社会保険料も含まれるため、未加入にしておけばその分がそのまま利益になる。また、堂々と「2カ月ごとの契約更新」を掲げている請負会社もある。厚生年金は「2カ月以内の期間を定めて使用される者」は除外されているので、これを悪用し、2カ月ごとに更新をくり返しているのだ。(48頁)


パナソニックの工場の話もひどい。

『東洋経済』06年9月16日号には、松下プラズマディスプレイの茨木工場で働いていた吉岡力さんの信じられない体験が掲載されている。同誌によると、彼は鉛の粘度調整をおこなう封着工程を担当していたのだが、同じ仕事をしていた正社員は特殊健康診断を受けたことがきっかけでその工程の担当をはずれた。理由は、血中の鉛濃度が上昇し危険と判断されたからだ。が、同じ仕事をしている吉岡さんは特殊健康診断の案内すら届かなかったという。正社員ではなく請負だからだ。(48−49頁)


これだけではない。

また、吉岡さんは父の死によって仕事を休んだ際には時給を100円下げられている。3日以上休んだらその月の時給が100円引きという契約だったそうだが、忌引きに関する配慮など請負にはないのだ。それだけでなく、向こうの都合で勝手に時給が下げられたりと理不尽なやり方は当たり前に繰り広げられる。吉岡さんは05年5月、松下プラズマディスプレイに対し、直接雇用を求めて交渉。また、偽装請負も内部告発した。そして8月、吉岡さんは直接雇用されたが、立場はなんと、社内でたった1人の「期間工」。つい立てに仕切られた1人だけの作業場は外部と遮断され、そこで、それまでは廃棄処分にしていた不良パネルの再生の仕事をさせられる。嫌がらせのレベルは幼稚園児以下だが、これを大人が本気でやっているのが恐ろしい。そして5カ月後、松下プラズマディスプレイは吉岡さんを雇い止め(有期契約の期間満了で契約を更新しないこと)。現在、彼は会社に損害賠償を求めて提訴している。(49頁)


わたしはこれまで何度も「いじめは大人の社会にこそある」と書いてきたが、
名だたる大企業が「いじめ」を平然と行なっていたわけか。

キヤノンで働く労働者のひどい話も紹介されているのだが、
それは本書を直接読んでいただきたい。

じつは、派遣労働者にまったく希望がないわけではなかった。

ずっと間接雇用ではなく、直接雇用へと切り替える時期が来るからだ。

……派遣にすると1年経てば直接雇用しなければならない。……そこで直接雇用の義務が生じる11カ月前、派遣をまた請負に戻したのだ。わかりやすい人たちである。(49頁)


現在はたしかこの期間は3年ほどに引きのばされてしまったと思う。

企業というのは、本当に薄汚いマネをする。

 ……偽装請負にかかわっているとして名前が挙がった企業は、……キヤノンをはじめとして日立、ニコン、松下、東芝、トヨタ、富士重工、いすず、コマツなど。名だたる大企業ばかりである。(51頁)


もう1度言うが、
メディア露出の多い「論客」たちは、こうした犯罪企業をちっとも批判しない。

なぜだろう?

何かいろいろともらっているのだろうか?

『赤旗』には4歳の娘と32歳の失業中の夫を持ち、自身も求職中の41歳の女性が登場したが、彼女のそれまでの給料は残業代込みで15万円。これで3人の生活を支えるわけだが、請負会社直営の託児所の保育料は10日で5万7000円。これでは一家心中しろといっているようなものではないか。(62頁)


こうした状況のなかで、幼児虐待が増えている。

06年5月、愛知県豊川市で9カ月の女児が20代の夫婦によって浴室で折檻死させられるという事件が起きたが、夫婦は2人とも請負で働き、住んでいたのも寮だった。低賃金、昼夜交替のきつい仕事、将来の見通しが立たないまま、子連れで工場や住む場所を転々とさせられる日々。(62頁)


いちおう断っておくが、この部分を読んで、
「だからと言って親の虐待が許されるわけではない」などという
的外れなコメントは寄こすなよ。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


著者は、つぎに、自身の弟のケースを紹介する。

弟は、2001年、25歳で「Y電機」の契約社員になったという。

「Y電機」というのは「ヤマダ電機」のことだろうか?

彼は、まじめに働き、1年後には正社員になれたという。

 ……弟は管理職であるフロア長に昇格する。……まず、ボーナスはなくなり、年棒〔ママ〕制に変更。勤務時間は決まっていない(ということは、時間が自由になるのではなく、いくら残業しても残業代はつかない)、休みは会社の指定した日にしかとれない、そして労働組合には入れない、という条件だった。(67頁)


な、なんだ、この会社は???

休憩時間は昼の40分だけ。夕方頃、15分の休憩もあるにはあるが、毎日とれるとはかぎらない。それで朝8時20分から深夜1時頃までほぼ立ちっぱなしで休みなく働くのだ。(68頁)


まるで労働基準法ができる前の時代みたいではないか。

これだけでない。

何と「夕食の時間」は存在しない、というのだ。

早くても毎晩深夜1時頃の帰宅である。1人暮らしだった弟は、そこから夕食をとり、洗濯をしたり入浴などをしていたらあっという間に2時、3時だ。起床は毎朝7時。睡眠時間は4時間ほど。(69頁)


「Y電機」はこうやって大もうけしていたのか。

となると、1日1食で17時間も働いていることになる。これはほとんどナチスの強制収容所とか、そんなレベルの話ではないか。ギリギリ死なない程度の食事と睡眠だけを与え、死ぬまでこき使うのだ。(69頁)


みなさん、もうこんなY電機で買い物をするのはやめよう!

わたしはここで思い出していた。

エンゲルスが『イギリスにおける労働者階級の状態』で描写した、
あの労働者の苛酷で悲惨な現実を。

時給に換算してみると、なんと700円以下だ。(70頁)


最低賃金を軽く下回っているではないか。

 こういった「激安」を謳い文句にした企業が全国展開し、利益を上げている。なぜそれほどの激安が保たれているかというと、従業員をそれこそ「激安」の賃金で働かせ、使い捨てているからだ。が、1円単位の安さを求めてそこに飛びつくのもまた、激安で働く不安定雇用層である。悲しき貧乏スパイラルがすでに成立していて、そんなものに関係ない金持ちは痛くも痒くもない。貧乏人同士で過酷な激安競争をすればするほど金持ちが儲かるというシステム。まったく腹立たしいことこのうえない。(70頁)


追いつめられていく弟を見て、著者はすぐに辞めるように説得したという。

だが、なかなか辞めてくれない。

彼が辞めたとしても、こんどは他のひとが同じ目にあう。

 そうしてそこで働き始めて1年10カ月後、弟はとうとう辞める決心をした。家族としてはその日のうちにでも辞めてほしかったが、あと1カ月続けるという条件で退社となった。ちなみに最後の日、弟は朝の4時まで働かされた。
 そんなふうに従業員をボロボロにして使い捨て、その会社は不況といわれた時期に株価を数倍にするという快挙を成し遂げた。見上げた根性である。また、02年、この会社の社長の娘が交通事故で亡くなったのだが、社長は交通事故を起こした相手に7億円以上の損害賠償を請求して提訴している。高額な損害賠償は、将来社長を継がせるつもりで、社長になれば得られた生涯賃金から生活費を引いた額だけで6億、それに慰謝料などを加えた額だそうだ。従業員を時給700円程度で働かせている割には、経営者はボロ儲けしているようである。また、この会社では、慢性的な睡眠不足から交通事故を起こして亡くなる社員が多いそうだが、そういった社員にはどういった補償がなされているのだろうか。娘の死には7億以上請求するわけだが、その辺を問い詰めたいところである。(74頁)


これは誰がどう見ても奴隷制である。

こんなことが日本ではまかり通っているのである。

こんなことをしている企業経営者がどうして裁かれないのだろうか?

本当なら刑務所へ行くべきひとなのではないのか?

甘えているのは一体誰なのか?

(つづく)








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日本は世界最悪の格差社会です!!常に弱い立場の人を犠牲にして、金持ち・権力者を優遇するような国です。生まれながらにして貧しい家柄に生まれた人には人生逆転のチャンスすら与えられない!!こんな国は滅びてしまえ!!
匿名
2011/02/28 21:39
◆匿名さま

世界最悪というのは言い過ぎだと思いますけど、そのほかの点についてはほぼ同感です。
影丸
2011/04/02 18:58

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