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zoom RSS 斎藤貴男『いま、立ち上がる』(筑摩書房)

<<   作成日時 : 2010/07/26 06:39   >>

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このところ、唖然&呆然とさせられるコメントがつづいている。

「レイシズム」や「ファシズム」の意味を勝手に書き換える投稿が発生した。

彼(ら?)はそれらの意味をまったくご存知ないらしい。

わたしはかわいそうで見ていられない。

言葉の意味を正しく理解していないひとに向かって返事を書くことに、
いったいどれほどの意味があるのか、それはわたしにも分からない。

が、これらが日本の病理現象であることはまず間違いないと思われる。

とすると放置はできまい。

コメントへのお返事はもう少しお待ちいただきたい。

何せくたくたなのである、毎日毎日。

それにしても、右派の病理の進行は想像以上に深刻であるようだ。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


菅内閣は、法人税率を引き下げるつもりらしい。

「みんなの党」も同じことをもくろんでいるらしい。

なにしろそうしないと日本経済の復活は見込めないというのだから。

企業経営者というのは、どこまで無責任なひとたちなのだろうか?

……巨額の損失を出して退陣に追い込まれた投資会社メリルリンチの会長が、日本円換算で約186億円の退職金を受け取ったという。(22頁)


自分たちが出した巨額の損失は国民に穴埋めさせて、
自分たちはちゃっかりがっぽり儲けてさっさと逃げるわけだ。

これはアメリカだけの話ではない。

彼〔御手洗冨士夫〕は2008年12月1目、首相官邸で麻生太郎首相と会談。首相の要請を受けて「雇用の安定に努力する」と応じたわずか3日後に、カメラの生産子会社「大分キヤノン」で請負労働者など約1200人を切り捨てる計画が明るみに出てしまった。(67頁)


前日本経団連会長だった御手洗冨士夫は、
自著『御手洗富士夫「強いニッポン」』のなかで次のように述べているという。

〈いまの日本人は、個人も企業も、ともかく依頼心が強すぎる。何か困ったことや欲しいものがあると、すぐに、「国が」「会社に」となり、補助金のようなものをあてにする。そういう「誰かがやってくれるだろう」という甘えは、きっぱり、捨てなくてはいけない〉(67頁)


御手洗はさぞかし自立心の強い立派なひとなのだろうと思ったら、
とんでもない人物だった。

 手元にキヤノンと大分県土地開発公社とが2006年10月13日付で結んだ契約書の写しがある。それによると、プリンタ関連の生産子会社「大分キヤノンマテリアル」の工場が立地している大分市内の用地の売買代金は50億円。ところが県側がこの用地の造成に要した費用は約69億円だった。
 差額の19億円は県が負担した。キヤノンに直接ではなく、土地開発公社に支払われた、いわば隠れ補助金で、そうするためには「大分県工場用地等特別対策事業費補助金交付要綱」の改定さえも図られた。この問題を県議会で取り上げた共産党県議によれば、大分県が企業誘致のために支出した補助金は過去10年間で約71億円。このうち48億円がキヤノンに関係していたというから恐れ入る。(67−68頁)


大分県は、御手洗冨士夫の出身県だそうだ。

そう言えばキヤノンが大分で最初に工場を建設した際、大手ゼネコンの鹿島による6億円の所得隠しが露見して東京国税局の処分を受けている。この事実が明るみに出された当時、裏金の一部は御手洗会長の知人に渡ったと伝えられていたのが記憶に新しい(『朝日新聞』2007年12月10日付夕刊など)。
 要は、甘えているのはどちらなのかということなのだ。(68頁)


わたしもそう思う。

甘えているのはどっちなのか、と思う。

彼らはいわゆるハイリスク・ハイリターンのうち、ハイリターンの全部を懐にガメていた。だがハイリスクが現実になると、丸ごと世間に押し付けて済ませてしまう。だから何の教訓も生まれない。とことん無能で無責任な“経営者”ばかりが世代を超えて拡大再生産されていく。(69頁)


経営がたとえ失敗したとしても、そのツケは国民が払ってくれる。

労働者のせいにしてしまえばいい。

経営者が無能でも、労働者を解雇してしまえばいい。

そうすれば、世のなかのひとたちは「自己責任論」で労働者の方を非難してくれる。

テレビ業界には、
「自己責任論」で労働者をいじめてくれるタレントがたくさんいるからである。

頼まれてもいないのに。

新自由主義を掲げるひとたちは、アメリカの経済を見習えと言う。

「小さい政府」を作ってアメリカみたいになれ、と言う。

ではそのアメリカでは何が起きていたのか?

ローン業者は60歳を超えた無職のシングルマザーに日本円換算で5000万円以上を貸し出して、築80年のボロ家を買わせる。学のない彼女は契約書の内容を理解できないが、収入がないのだから返せっこないと疑いの眼差し。業者はにっこり笑って弁護士を同席させ、その目の前で契約書に「○○宝石店営業部長、年収20万ドル(約2000万円)」と書き込んだ――。(160頁)


「小さな政府」を主張するひとたちは、日本もこういうふうにしたいらしい。

企業経営者たちの地位は安泰である。

他方、一般市民の方はどのような扱いを受けているのだろうか?

 さる(2006年)3月31日付の『朝日新聞』朝刊に、重い記事が載っていた。それによれば、5年前の6月、あるダウン症の男の子(当時8歳)が交通事故で亡くなった。加害者に損害賠償を求めた裁判は、最終的に和解で決着はしたものの、ご両親はこの間、あまりにもつらい日々を強いられた、という。
 加害者側の弁護士は「逸失利益(事故がなければ獲得できていたであろう財産上の利益)は発生しない」との主張を繰り返していた。ダウン症児は他の病気にもかかりやすく、平均寿命も健常者より短いとする学説を提示して、生きていても収入など得られなかったのだから、と。交通事故死をめぐる裁判では珍しくもない考え方だ。(214頁)


ダウン症のひとの命の「価値」は低くて当然だ、と言いたいらしい。

 やりきれない思いでいたら、今度は4年3カ月(2002年1月)に三菱自動車製の大型トレーラーから外れたタイヤに直撃されて2児の母親が亡くなり、子どもたちも負傷した事件で、欠陥車を製造した同社と、改善を求めなかった国に遺族が損害賠償を求めた裁判の判決が、2006年4月18日に横浜地裁で言い渡された。当然、いずれの被告も厳しく指弾されていた。
 にもかかわらず、三菱自動車に命じられた慰謝料などの総額はわずか550万円。1億6550万円の請求額に対して、である。国の過失責任も認められなかった。(214−215頁)


男に比べて女の命の「価値」も低くて当然だ、と言いたいらしい。

とすると、働いていない女性が亡くなったら、「0円」になってしまうのか?

なるほど、現代のこの国のシステムと権力はただひたすらに、一般の人間の生命を安く、安く、見積もろうとしている。(215頁)


最近著者は、アメリカを視察した障害者福祉関係者にある話を聞かされたという。

「あちらの就労施設では、仕事がなくて困るということはあまりないそうです。私の知り合いが見学した施設はクリーニングを請け負っていたようですが、ただ、発注元が軍隊だった。赤い血に染まった軍服を、障害者たちが洗っていたとか」(216頁)


命をひたすら軽くしていこうとするひとたちは、ほかにもいる。

右派である。

伊藤市長を射殺した容疑者と30年来の交友がある人物としてマスコミにも登場していた弁護士が、「新しい歴史教科書をつくる会」の長崎支部長で、「日本会議長崎」の副会長でもあったという事実。(273頁)


右派は、テレビ業界も牛耳っている。

フジテレビの朝のワイドショー『とくダネ!』は、
ある日、辺野古の新基地建設問題を取り上げたという。

2005年11月に来沖した『とくダネ!』の取材クルーは、中でも80歳を超える高齢を押して連日テントに座り込むOさんにこだわったという。ベトナム戦争当時に地元で雑貨店を営んでいた“おばあ”である。(277頁)


そこではこんな「取材」が行なわれたという。

 ――50年前(の辺野古)はどうでしたか。
 「(景気は)よかったですよ。(米軍の兵士たちが)ベトナムから一時休暇で(キャンプ・シュワブに)帰ってくると、次(に戦地に赴く際)は死ぬかもしれないと、持っているお金を町で全部使っていきましたから」
 クルーとのこんなやり取りだけが切り取られ、クローズアップされていた。直後に「基地に隣接して栄えていた辺野古の町は、しかし、ベトナム戦争が終わると衰退の一途を辿った」とするナレーションと、「われわれは基地収入で飯を食っていますからね。(新基地の建設は)大歓迎ですよ」と叫ぶ飲食店経営者の言葉が続いた。(277頁)


番組制作者の意図は明確である。

 この日の『とくダネ!』は、新基地の建設に反対している住民が多数派であることを示すアンケート調査の結果を紹介しながら、彼らの目的は基地の見返りとしての金銭的利益にあるに違いないとの悪意と偏見に満ちていた。
 「米軍にしてみれば、沖縄が一番、地の利があるわけですからね。豊かにしてあげないと、基地を受け入れるところはありません」
と、小倉智昭キャスターの訳知り顔。レポーターの「結局はバランスですよね!」という、捨て台詞のようなコメントで、画面はコマーシャルに切り替えられた。(278頁)


沖縄の何万人もの「怒り」の声は、平然とかき消されてしまった。

「沖縄が一番、地の利がある」だって?

このひとたちは地図を見たことがないのだろうか?

沖縄のひとびとをこれほどまでにあからさまに侮辱するさまは、
元「従軍慰安婦」の女性たちに対する侮辱ときわめて似ている。

北朝鮮による拉致を批判するひとたちに対して、
世界のひとびとはこう言葉を返してやったらどうだろうか?

「日本人よ、要するに金がほしいのか?」と。











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