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zoom RSS 湯浅誠『どんとこい、貧困!』(理論社)@

<<   作成日時 : 2010/06/09 18:01   >>

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起立! 気をつけ! 礼! 着席!

はい、静かに。

きょうは先生がホームルームの時間を使って、
きみたちにとてもすばらしい本を紹介したいと思います。

「年越し派遣村」村長の湯浅誠さんがお書きになったものです。

本のタイトルは『どんとこい、貧困!』です。

子どもたちにも読みやすいように、
大きな文字で書かれていて、しかもすべての漢字にふり仮名までふってあります。

ほら、麻生くん。

きみも安心して読めるようになっているよ。

よかったなあ。

「自己責任論」にトドメを刺す内容になっていて、先生はとても感動しました。

こら、麻生くん、漫画を読んでいないで、先生の話を聞きなさい。

ほら、そこの中山くん。

いま、口答えしましたね?

あなたはいつも「日教組」批判をしていますね。

そして、もっと厳しい教育をするべきだと言っていますよね。

あなたが好きな戦前の教育なら、先生に口答えするなんて許されませんよ。

あとで体育館の裏にいらっしゃい。

ボコボコにしてあげますから。

安倍くん、きみもいま口答えしましたね?

きみは以前「日本は核兵器を持つべきだ」なんて言っていましたよね。

それより、あとで先生がきみに「ロケット・パンチ」をお見舞いしてあげます。

こら、石原くん、いま何か言った?

「貧困なんて自己責任だよ、根性が足りないんだよ」

きみはまず、ひとの話を聞くこと、
そして頭を使って考えることを学ばなければなりませんね。

きみは作家志望らしいけど、国語の成績はひどいぞ。

それにきみは、クラスで集めた大事なお金を使い込んでいるそうだね。

たしかきみも体罰容認派だったよね?

あとできみのこともボコボコにしてあげるから、体育館の裏に来なさい。

みんな、ちゃんと黙って先生の話を聞きなさい。

それでは「ホームルーム」をはじめたいと思います。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


◆自己責任論・その1「努力しないのが悪いんじゃない?」


ここ数年間、こういう言い方をよく耳にするようになりましたね。

「努力しないのが悪いんじゃないの?」って。

先生の周りにもこういうことを言う大人がたくさんいました。

 たとえば「あなたのテストの点数が100点じゃないのは、あなたがどこかで怠けてたからだろう」「あなたのおとうさんの年収がいまより500万円高くないのは、おとうさんがどこかで怠けたからなんだよ」と言われれば、誰だって心当たりのまったくない人はいない。つまり、この考え方だと、すべての好ましくない結果は「本人の努力が足りなかったからだ」「本人の責任だ」となる。解決策は、本人がもっとがんばること。
 これを世の中では「自己責任論」という。(28頁)


そう、こういう考え方を「自己責任論」と言います。

失業したひと、家を失ったひと、給料がとても安いひと、生活が苦しいひと。

こうしたひとたちに向かって「自己責任論」が浴びせられます。

最近では、山で遭難したひとや病気や障がいを持っているひとにも使われます。

ここではとりあえず、生活が苦しいひとたちのことを考えてみましょう。

生活が苦しいのはそのひとの「自己責任」だ、とよく言います。

でもこれっておかしくないですか?

たとえば「イス取りゲーム」で考えてみましょう。

10人で「イス取りゲーム」をしたと仮定しましょう。

 イスは8つしかない。だとすれば、今回座れなかったのはこの2人だけど、もういちどやったらべつの2人が座れないかもしれない。さらにもういちどやったら、またべつの2人かもしれない。イスが2つ足りない以上、たとえゲームに参加した10人が全員イチローや石川遼みたいに「すごい人たち」でも、かならず2人は座れない。だとすれば、イスに座れなかったのは、かならずしも「本人の努力が足りなかった」からではなくて、「イスの数が足りなかった」からだ、ということになる。この場合、解決策はイスの数を増やすこと、だ。
 これを構造的な見方という。(28−29頁)


「構造的な見方」、これ、とても大事なモノの見方ですね。

マンションでいえば、それほど大きくない地震でも倒れちゃうように設計されていれば、住んでいる人たちがどれだけ気をつけていても、地震がくればマンションは倒れてしまう。その場合、マンションの仕組み(耐震構造)に問題があるんで、住んでいる人たちが悪いとは言われない。それと同じ。(29頁)


失業や格差の問題だって、これといっしょなのです。

それなのに多くの大人は「自己責任論」をふりかざしました。

 こういう考え方は、どこか俗っぽい宗教に似ている。
 いい結果が生まれたのは信仰心のおかげ、悪い結果が生まれたのは信仰心が足りないせい。だから、1日100回はお経を唱えないといけない。もし100回唱えたのにいい結果が生まれなかったら、それは信仰心がまだ足りないからだから、こんどは1日1000回唱えなければいけない。それでもいい結果が生まれなかったら、それは本心から信仰していないからだ。気持ちがこもってないからだ。だからこんどは1500回だ、2000回だ……キリがない。(31頁)


先生は、この考え方は「抑止力」にも似ていると思います。

戦車を持ってもまだ足りない。

戦闘機を持ってもまだ足りない。

兵隊をたくさん集めてもまだ足りない。

ミサイルを持ってもまだまだ足りない。

「抑止力」ってキリがないですね。

平和や国際紛争の問題も、
ほんとうは「構造的な見方」をしなければいけないのです。

はい、ここで反論があるひと、いるかな?

「結局さ、仕事を選んでるからみつからないんじゃないの?」


まるで失業したひとの方が「ワガママ」みたいな言い方だなあ。

どうしてあなたはそんなふうに思ったの?

え? 親がそう言っていたから?

なるほどね、子どもは親が言うことをよく聞いているのだね。

それについて湯浅さんは何て書いているかな?

選ばなければ仕事はある。人を殺してお金を稼ぐ仕事もあるらしいから。合法的な仕事ばかり選んでいるなんて選り好みだ。食べられないんだったら、強盗でも人殺しでもなんでもしなきゃ。
 でも、そうは言われない。それはどんなに困ってもやっちゃいけないと言われる。法律違反だから。(39頁)


「仕事を選ぶな」って言うひとは、
たとえばあなたの親は「犯罪でもしろ」って言ってるのかな?

そんなことは言うはずないよね。

 じゃあ時給100円の仕事はどうだろうか? 食べられないならやるべきだろうか? 時給100円だって、1時間働けばハンバーガーが食べられる。でもこれも法律違反だ。「最低賃金法」という法律に違反している。
 じゃあ時給800円で毎日8時間は仕事があるけど、雇用保険に入っていない仕事はどうだろうか? 1日働けば6400円になる。これなら拒否しちゃいけない? でもこれも法律違反だ。フルタイムで働いているのに雇用保険に入っていない仕事は、やっちゃいけない。なぜって、そういう働き方はほかの人たちの働く条件を引き下げるから。人に迷惑がかかるから。(40頁)


実際、法律を守っていない会社って、じつはた〜っくさんあるのだよ。

親はきみたちに「ルールを守りなさい」ってよく言うでしょ?

でもきみたちの親は会社で「ルール」を平気で破っているのだよ。

おかしくない?

「ルールを守っていない会社」であってもそこで働くべきなのかな?

「振り込め詐欺」グループに入るべきなのかな?

犯罪者になるのは良くないでしょ?

え?

「ハローワークに行けばいいじゃないか」って?

きみ、「ハローワーク」なんて言葉、よく知ってるね?

ともかく、やばい仕事でなくてちゃんとした仕事を探したいなら、
「ハローワークに行けばいい」というわけだね?

公共のもの、つまり国が税金を使って運営しているところだから、そんなにひどい、人に迷惑がかかるような仕事は扱ってないはずだ。ハローワークでみつけた仕事は、きっと大丈夫だろう。
 ところが困ったことに、ハローワークは自分たちの紹介している仕事がどんな仕事か、よくは知らないらしい。(41頁)


おやまあ、困ったね。

……求人票に「社会保険・雇用保険完備」と書いてあっても、本当に完備しているかどうかを、当のハローワークは調べていない。面接の段階やじっさいに働き出したところで、じつはウチには社会保険も雇用保険もない、と言われてしまうことがある。(41−42頁)


それじゃあ、ハローワークに行けばいいとは言えないよね。

 そうすると、自分があとで困らないためにも、人に迷惑がかからない仕事をみつけるためにも、よくよく吟味(選り好み)しないといけないということになる。最初の話(「選ぶのが悪い」)とはずいぶんちがう結論になってしまった。最初の話がまちがっていた、ということだ。(42頁)


どうでしょうか?

だからもうみんなは、
「選り好みするのが悪いんだよ」なんて言ってはいけませんよ。

いま日本では、生活がとても苦しいというひとたちがたくさんいるのです。

きみたちも親に言われたこと、ない?

親の機嫌がわるいときなど、「この金食い虫!」って。

 年間500万円稼ぐ人が40年働いたとして、もらえる生涯賃金は2億円。ところが……子ども1人を大学卒業させるまでにかかる費用は、全部国公立でも3000万円、全部私立だと6000万円。2人いたらその倍、3人いたらその3倍だ。親の食費、交通費、家のローン、税金などを考えたら、子ども3人は絶対無理。2人でも相当にキツイ。……でもそれはあたりまえじゃない。ヨーロッパには大学まで含めて授業料が無料という国がいくつもある。(46頁)


もちろん教育にお金がかかることの責任は、きみたちにはない。

だって、きみたちが生まれたのは、
そもそも親の都合だった(ひとによっては不都合かもしれない)のだからね。

それなのに、
子どもの気持ちも考えないで「金食い虫」なんて言う親は、
無神経にもほどがあると先生は思う。

国によっては、教育費がかからないところもある。

そういう国だったら、子どもは「金食い虫」だなんて言われることもない。

だから、大事なのは、
立場の弱いひとたちをいじめることではなくて、
弱いひとが苦しまないでいい制度をつくることなんだよ。

つづく









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