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zoom RSS 愛敬浩二『改憲問題』(ちくま新書)A

<<   作成日時 : 2010/05/30 11:04   >>

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ここからは、現代の改憲論を見ていこう。

改憲論には、次のような主張もよく見られる。

「現実に自衛隊が存在している以上、それをハッキリと明文化するべきだ」

「現行憲法の内容は現実に合っていないから、現実に合わせるべきだ」


しばらく前に当ブログでもこの主張がいかにおかしいかを論じたことがある。

たしかに憲法では「非武装」を定めているはずなのに、
現実には立派な「自衛隊」が存在している。

だからといって憲法の文言を変えればいいのだろうか?

もし現在のような憲法の拘束がなくなれば、自衛隊は強大な軍隊になる。

よって、改憲によって東北アジア地域にいきなり「フリーハンドの軍事大国」が出現した場合、地域の安定をかえって損ないはしないか(たとえば中国などの軍拡の理由にならないか)などの問題を考える必要がある。したがって、「自衛隊は国軍だ。改憲してこの事実を明確にしよう」とか、「非武装中立など無責任だ」という発言ほど、無責任な発言はない(小泉純一郎首相の発言。朝日新聞2003年11月3日朝刊)。(76−77頁)


すでに自衛隊は現行憲法のもとでさえ、世界有数の軍事費を投入されている。

改憲した場合、自衛隊が堂々と「軍隊」を名乗るだけではない。

軍事費はさらに膨らみ、装備も高度化していくだろう。

活動範囲も今よりもさらに広くなるだろう。

だって、現行憲法のもとでさえ政府は自衛隊をイラクにまで派兵したのだから。

それによる周辺地域・世界各国に与える影響も無視できない。

 自民党「新憲法草案」作成の中心人物である舛添要一(起草委員会事務局次長)は、9条改定の必要性について、「うそをつくのはやめようということですね、F15戦闘機やイージス艦を持つ自衛隊は軍隊ですよ」と述べているそうだが(朝日新聞2005年11月12日朝刊)……。(79頁)


「うそをつくのはやめよう」という理屈が通るなら、
9条以外のさまざまな部分も変えないといけなくなるだろう。

「うそ」をついてきたのは憲法ではなくて、政府の側である。

舛添発言はそのことをまったく無視した無責任きわまりないものだ。

 ……現行9条2項の厳格な「禁止」の下で、政府は「自衛隊」を「自衛のための最小限度の実力」として正当化するほかなかったからこそ、海外派兵の禁止、防衛費のGNP1%枠、武器輸出禁止3原則、非核3原則、そして集団的自衛権行使の禁止などの「小国主義」的な政策が打ち出されてきた……。(80頁)


これらは「タテマエ」に過ぎないものの、
だからこそ無制限に軍事力を拡大することも防いできた。

 ……「自衛軍」を明文化する改憲案が、現在の「自衛隊」を単に公認するだけだと考えるのは誤りである。(81頁)


「9条を書き換えたとしてもそれほど政治は大きく変わることはない」、
と考えているひとがいるとしたらそのひとはよっぽどおめでたいひとだ。

他方、「9・11事件」以後の「追い風」を背景にして、国防関係者が「年来の宿願」の成就を目論んでいるという側面もある。たとえば、2002年4月29日にはウォルフォビッツ国防副長官(当時)からイージス艦のインド洋派遣に関する公式要請があったが、朝日新聞2002年5月6日朝刊は、この要請の背景に海上自衛隊幕僚部幹部の「工作」があった旨を報じている。また、イラク戦争の際、ローレンス国防副次官補から、「軍靴を地につけろBoots on the ground」という言葉が公電にのって首相官邸に届いたが、これも日本の「顔」を見せるために陸上自衛隊を派遣したい外務省の意向を受けて、ローレンスが発した言葉だった……。(82頁)


当時の駐米大使が画策したという話も聞いたことがあるが、
ともあれ、外務省と自衛隊が海外派兵に積極的であることはまちがいない。

「押しつけ憲法論」を主張しているはずのひとたちが、
「アメリカが自衛隊派兵を求めているのだから」とぬけぬけと言っているのだ。

彼らは恥ずかしくないのだろうか?

さらに重要な点がある。

それは、財界も熱心に改憲を主張しているという点である。

日本経済団体連合会、経済同友会、日本商工会議所の財界三団体もそれぞれ改憲に積極的な態度を示している。(83頁)


ではどうして財界は改憲を求めているのだろうか?

それについては、本書で詳しく説明しているので直接読んでいただきたい。

改憲案にはつぎのようなものが出ている。

読売04年改憲試案。

中曽根康弘「わが改憲論」(2000年3月)。

小沢一郎「日本国憲法改正試案」(1999年9月)。

山崎拓「新憲法試案」(2001年5月)。

日本会議・新憲法研究会「新憲法の大綱」(2001年4月)。

世界平和研究所「憲法改正試案」(2005年1月)。

などなど。

これらについて著者はこう述べている。

 判で押したように、改憲派の9条改定の内容は似ている。定期試験で、これだけ似た内容の答案が出てくれば、集団的なカンニングを疑うのが、大学教員の習性である。(96−97頁)


それぞれの改憲案の内容が似ているのは偶然ではない。

自民党、民主党、財界、読売新聞社、民間のタカ派勢力、アメリカ政府などなど。

彼らが一致して主張しているのは、
自衛隊を「正真正銘の軍隊」にしたうえで海外での軍事行動を積極的に展開すること、
これである。












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