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zoom RSS 谷口誠『東アジア共同体』(岩波新書)

<<   作成日時 : 2010/04/18 09:24   >>

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著者は華麗な経歴をお持ちのようだが、本書の内容はスカスカである。

著者にとって、「東アジア共同体」の構築は疑いのない目標であるらしい。

欧州ではEUが実現しており、北中米でもNAFTAが実現している。

東アジアでも同じような経済統合を実現するのは当然のことだ、という。

とはいえ、日本国内には「東アジア共同体」構想に対するアレルギーも根強く存在する。

 日本外務省の高官がある会合で「日米間には『共通の価値観』があるが、日中間にはそれがない。日中間にあるのは、共通の『経済的利益』である」と発言した。(48頁)


このようなイメージは、一般人によってもしばしば語られる。

中国や韓国への蔑視が根強い日本人にとって、
日本を東アジアの一員と見なすことは納得できないことのようだ。

こうした「ありがちな偏見」は、きちんと検討されなければならない。

都合のいいときだけ日米間に「価値観の一致」ばかり見るのは、
典型的な対米従属を示すものでもあるからだ。

著者は、「東アジア」の経済的発展のために、
たとえば日本と中国との間に横たわる問題を解決しなければならない、と主張する。

その代表的な問題が、靖国問題であるという。

これを解決するためにはどうすればよいか?

そのためにも、福田官房長官(当時)の私的懇談会が提起した「国立の戦没者追悼施設」は、誰にでも受け入れられる解決策であり、その建設を急ぐことが望まれる。(55−56頁)


「誰にでも受け入れられる解決策」だって?

ご冗談もほどほどにしていただきたい。

問題の本質を何ひとつ理解していないご意見である。

国立の戦没者追悼施設が何の解決策にもならないことは、
以前の記事を読んでくださった方々にはお分かりだろうと思う。

未読の方は以下の記事を参照していただきたい。

◇「高橋哲哉『靖国問題』(ちくま新書)@

◇「高橋哲哉『靖国問題』(ちくま新書)A

◇「高橋哲哉『靖国問題』(ちくま新書)B

◇「高橋哲哉『靖国問題』(ちくま新書)C

◇「高橋哲哉『靖国問題』(ちくま新書)D

◇「高橋哲哉『靖国問題』(ちくま新書)E

また著者は、つぎのような不適切な発言をなさっている。

単一民族国家を標榜する日本は、他民族や他文化に閉鎖的である。しかしそれでは、日本はグローバリゼーションの流れに取り残され、孤立してしまうであろう。未来永劫、単一民族国家であり続けることは、グローバリゼーションの下では不可能である。(111−112頁)


日本はもっと開かれた社会になるべきだ、とは述べている。

閉鎖的で自国中心主義的なナショナリズムを批判しているように見える。

だが、日本は「単一民族国家」であるのは事実だ、と見なしている。

よくもこのようなことを平気で書けるものである。

言うまでもないことだが、日本は単一民族国家ではない。

事実としてそうではない。

どうして経済学者というのはこういう皮相な意見しか言えないのだろうか?

困ったものである。

「東アジア共同体」構想でもっとも問題になることは、やはり農業問題だろう。

農産物の自由化が進めば、国内の農業は致命的な打撃を受ける。

 2001年4月、日本は中国産のネギ、生しいたけ、畳表の3品目に、セーフガードを暫定適用した。1955年にGATTに正式加盟して以来、WTOの発足後も伝統的に、日本がセーフガードを適用したことはなかった。……日本の外務省関係者に聞くと、「日本はこれまで、セーフガードの適用をしなさすぎた。最近の中国はいささか生意気なので、セーフガードを適用し、脅しをかけた方がよい」と、強気の発言をした。ところが約2カ月後の6月、中国は日本の自動車、携帯電話、エアコンに報復関税をかけてきた。WTO加盟前の中国は、WTOのルールに縛られずに報復措置をとれるということを、日本は十分に知っていたはずであったが、これにより大打撃を受けることを恐れた日本は、中国の3農産品に対するセーフガードを正式発動せず、中国側も日本の3製造輸出品への報復関税を撤廃した。(72−73頁)


では、この問題について著者は何と述べているだろうか?

経済学者なら、農業経済の問題ならば解決策を提示してくれているか?

国土が狭く、農業人口も減少しつつある日本にとって、農業の自由化が非常に困難な課題であることは疑う余地がないが、WTO、APEC、ASEANとの交渉の場に置いて、農業の自由化が避けて通れない以上、日本としては、将来日本の農業はいかにあるべきか、そのためにはどのような改革が必要か、どうすれば農業の最大目的である日本国民への食料の安定的供給が維持できるかをしっかりと見据え、その展望に裏付けられた長期的戦略を打ち立てねばならない。(156頁)


ご覧いただけただろうか?

まったくもって無内容な言葉のつらなりである。

何も述べていないに等しい。

このように、本書の内容はきわめてスカスカである。

彼の主張は、日本経団連や読売新聞的なものと同レベルのものである。








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