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zoom RSS 星川淳『なぜ日本は世界で一番クジラを殺すのか』(幻冬舎新書)B

<<   作成日時 : 2010/03/04 07:44   >>

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著者によれば、日本の悪行はまだまだあるという。

知れば知るほど呆れるばかりなのだが、
普段報道されない情報に触れれば事実はこれまでと異なる姿を見せるものだ。

実際、捕鯨賛成派の多くは、
こうした問題をほとんど考えたこともなかったのではないか?

ちょうど「脳死」問題を知らずに臓器移植に賛成してしまえるのと同じように。

では、以下に詳しく見ていくことにしよう。

じつは、日本は鯨肉の「「密猟」と「密輸」までも繰り返してきたという。

最初に日本の密猟がバレたのは、1976年のアメリカ下院聴聞会でのこと。「ソマリア国籍の冷凍加工捕鯨船シエラ号(所有会社はノルウェーの銀行を通じてリヒテンシュタインに登録)がアフリカ西海岸へ出猟し、捕鯨が禁止されているセミクジラとイワシクジラを毎年500頭前後捕っている。シエラ号には日本人バイヤーが乗り込んで監督し、鯨肉にスペイン産のスタンプを押して日本に輸出している」という報告があった。
 そして3年後、1979年6月24日号の英日曜紙『オブザーバー』に、「日本人の密猟捕鯨現場暴露」という記事が載る。1978年12月、スペイン領カナリア諸島ラス・パルマス港で、日本の冷凍運搬船が、かねてより悪名を馳せていた海賊捕鯨船「シエラ号」から、密猟鯨肉を受け取る現場をおさえたスクープで、シエラ号が捕鯨中のビデオまで紹介したのだ。
 このとき、シエラ号には日本人の鯨肉検査員4人が乗り組んでいた。4人とも元捕鯨会社(大洋漁業、現マルハ)の社員。(120−121頁)


若いひとたちはもう知らないかもしれないが、
現在の「マルハ」はもとは「大洋漁業」という名の企業で、
プロ野球球団の現「横浜ベイスターズ」の前身「大洋ホエールズ」の親会社だった。

ここで大事なのは、「海賊捕鯨船」というところである。

ソマリア沖に出没するという海賊対策を口実に日本は自衛隊を派遣しているが、
捕鯨に関しては当の日本が「海賊」の一味だったというのである。

上の事件が発覚してから、日本は鯨肉の輸入を禁止した。

ところが、この約束もまた日本は破る。

 シエラ号事件が発覚し、日本がIWC非加盟国からの鯨肉の輸入を禁止して1年もたたないうちに、こんどは100トンを超える「韓国産」の冷凍鯨肉が築地に入荷されはじめた。(122頁)


ほかにもまだある。

 このほか、さまざまな調査から、1984年に東京湾大井埠頭に水揚げされた台湾産の冷凍サメ肉の3分の1が鯨肉だったと推測されている。(123頁)


アイスランドから鯨肉を不法輸入しようとしたこともあったという。

また、別の専門家によれば、
日本は国際的に決められた捕獲数を守っていなかったという。

マッコウクジラなどは、捕獲枠の倍近い数を捕っていたらしいのだ。

また、1973年から実施されたマッコウクジラの雌雄別捕獲枠も、実質上、守られてはいなかった。メスの捕獲枠を超過すれば報告書の上で“性転換”を図るか、無報告のままメスを捕り続けたのだ。知っているのは事業所で働く人間だけ。(126頁)


このような違反行為を何度も繰り返してきたのが、日本である。

こうしたことを知っていれば、
国際社会が日本を厳しく批判するのも当たり前なのではなかろうか?

ところが、反捕鯨論に反発してみせる日本人の多くは、
こうした事柄をほとんど知らないであろう。

日本のメディアもほとんど報道していないように思う。

だが、海外のメディアは報道してきたから、海外のひとたちは知っている。

おのれの無知を棚に上げて自己正当化に走るのは、
あまりにみっともないことだと思わないか?

さて、次に取り上げるのは、反捕鯨派へのお決まりの非難について。

捕鯨推進団体は、グリーンピースなどの抗議活動に対して、
「断じて許すことの出来ない危険なテロ行為」と主張している。

日本のメディアもしばしば、
日本の捕鯨船の針路を妨害する抗議船の様子を映像で伝える。

これを見て日本の視聴者は「テロ行為だ!」と短絡的に受け取る。

だが、本当にそうなのだろうか?

むしろ年々、グリーンピースの抗議に対する妨害の度を強めているのは、日本の捕鯨船団のほうである。ときどきテレビ映像でも紹介されるように、捕鯨船からグリーンピースのゴムボートに高圧放水を浴びせたり、クジラに電気ショックを与える長い棒でつついたりするのは序の口で、2005年から2006年にかけての“調査捕鯨”では2度にわたり、きわめて危険な操船によってグリーンピースの船に体当たりしてきた。それをまったく逆に、グリーンピースが調査捕鯨船に体当たりしたと宣伝するのだから、あいた口がふさがらない。(134頁)


たとえて言えば、
違法行為をするために突進してくる大型ダンプカーに、
グリーンピースは自転車で近づいていこうとしているわけだ。

しかも、ダンプカーには「武器」も装備されている。

そして大型ダンプカーの側が自転車に向かって「テロ行為だ」と言っているに等しい。

 たとえば、その体当たりは2度とも、国際海上衝突防止条約にもとづく操船規則上、グリーンピース側に優先航行権があるところへ、ルール違反の左舷からぶつかってきたのは捕鯨船側だった。しかも、衝突を想定してビデオカメラを構え、あとで映像だけ見れば相対関係があやふやになって、グリーンピースが体当たりしたと主張できるよう準備している。そんな捏造をしてまで暴力行為を演出したいのは、昨今の国際情勢から「テロ」のレッテルを貼りさえすれば、抗議活動を排除して、無人の南極海でせいせいと“調査”に打ち込めると考えているからかもしれない。
 しかし、クエーカー教やガンディの流れを汲むグリーンピースの非暴力主義は、「目撃者として立ち会う」(英語ではbearing witness)ことを第一義におく。(134−135頁)


これまで日本のメディアの報道を妄信してきたひとたちにとっては、
ずいぶんと印象が変わってこざるを得ない話であろう。

ところで、著者によると、おもしろいことに、
水産庁捕鯨班とシーシェパードが「連携」して反対する問題があるという。

それは何か?

IWCがアラスカの先住民イヌイットに認めるホッキョククジラの生存捕鯨だ。
 「生存捕鯨」とは、ある民族にとってクジラの肉が重要なタンパク源で、代替物がなく、捕獲から消費までが他の地域におよばず、生息数に影響を与えない場合、商業捕鯨と区別して、モラトリアム以後も例外的に捕獲枠を与えるものを指す。現在、米国アラスカ州のイヌイット、ワシントン州のマカー、ロシアのチュクチ、デンマークのグリーンランド、カリブ海のセントビンセント及びグレナディーン諸島の各先住民に対し、ホッキョククジラ、コククジラ、ナガスクジラ、ミンククジラ、ザトウクジラの捕獲が認められていて、それぞれの地域で数年ごとに生息状況と捕獲実績を確認したうえ、次の捕獲許可が出る。(137頁)


なるほど。

ということは、シーシェパードは「生存捕鯨」にも反対しているというわけだ。

クジラを一切口にしてはいけないのかどうか、
この問題については後日あらためて記事を書こうと思う。

そして、世界中の研究者をもっと呆れさせているのが、下関で開催された2002年のIWC総会のころから捕鯨推進派が強調しだした「クジラが人間のぶんまで魚を食べてしまうから害獣として駆除すべきだ」という珍説。(141頁)


この「珍説」については前にも触れたが、
いくら何でもそれは世界中から笑いものにされるだろう。

そもそも、もし放っておくとクジラが魚を食べ尽くしてしまうのなら、世界の海にはとっくに魚がいなくなっていたはずだ。(142頁)


こんな「珍説」にまともに付き合っているヒマはわれわれにはない。

それよりも、重要なことがある。

日本人の多くは、クジラを食べないくせに、反捕鯨論に反発する。

どうしてなのだろうか?

じつは、ここにある広告代理店の巧妙な作戦が存在していたのである。

著者は、「捕鯨問題に関する国内世論の喚起」と題された、
興味深いある内部文書をここで紹介している。

「国際ピーアール株式会社」という多国籍広告代理店が1970年代の終わりに日本捕鯨協会のためにまとめたレポートで、前書きには「圧倒的な反捕鯨の国際世論を相手に、日本は孤立気味」で「わが国の外交、通商問題の観点から見ると、捕鯨の継続はデメリットといえるかも知れない」と認めつつ、それを挽回するために「捕鯨存続のための国内世論をいかにして形成してきたかについて述べてみたい」と明記されている。(145頁)


では、この広告代理店はどのような作戦を立てたのか?

まずは15人の「識者」からなる「捕鯨問題懇談会」を結成したという。

そしてメンバー各人には、
「鯨肉のお土産と若干の交通費」が、
会合のたびに「お返し」として渡されたのだという。

15人の顔ぶれは、写真家1人、作家4人、水産学者1人、漫画家1人、総理府参与1人、政治評論家1人、テレビ・ニュースキャスター1人、画家1人、食味評論家1人、日本学校給食会関係者1人、評論家2人とだけ紹介し、名前を出すのはやめておこう。(148頁)


彼らを中心に、メディア戦略が実践されていくことになる。

その内容は以下のとおり。

とにかく、(1)クジラは絶滅どころか増えているから捕っても大丈夫、(2)欧米の捕鯨が油だけを目的としていたのとちがい、鯨肉は日本人にとって重要な動物たんぱく源、(3)捕鯨と鯨肉食は固有の民族文化、(4)商業捕鯨モラトリアムはアメリカの陰謀、(5)反捕鯨運動は人種差別などなど、このときの国際PRによるセールスポイントがそのまま日本のメディアや世論に浸透していったことはおぼえておこう。(148−149頁)


おお、すごいぞ。

ネット上でぎゃあぎゃあ騒いでいた連中は、
広告代理店のPR作戦に見事にハマッてくれていたわけだ。

単純な連中を操作するなど、広告代理店にとっては朝飯前ということだろうか。

それにしても、これは効果テキメンだったようだ。

反・反捕鯨派は、見事に上記の「屁理屈」を反復しているのだから。










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