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zoom RSS 斎藤貴男『安心のファシズム』(岩波新書)B

<<   作成日時 : 2010/02/10 10:58   >>

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セキュリティへの関心を高めていく社会は、「監視社会」を実現する。

犯罪を生み出す社会構造を改革するのではなく、
犯罪を抑え込む方法がここでは採用されることになる。

よく取り上げられるのが、ニューヨークの試みだろう。

割れ窓理論(Broken Windows Theory)という。治安が劇的に悪化した80年代のアメリカで、J・Q・ウィルソンとG・ケリングという2人の犯罪学者が提唱した考え方だ。
 のちにR・ジュリアーニ・ニューヨーク市長が打ち出して、あの世界最大の犯罪都市を一変させたと伝えられる。彼は94年から2001年までの在任期間中に、市内の犯罪件数全体を57%、殺人事件件数に限ると67%も減少させたという。(165−166頁)


もしこのことに何の危機感も抱かないひとがいるとしたら、
そのひとはもうすでに立派な「家畜」になり下がっているということである。

ひとびとに与えられる「自由」は、商品を選ぶ「自由」だけ。

お行儀のよい「消費者」。

 アメリカ政府はまた、2003年1月に「国土安全保障省」(DHS=Department of Home Security)を創設している。複数の政府機関に分散していたテロ対策に関る権力機構を集約し、職員数17万人を擁する巨大官庁として拡充強化を図ったもの。(176頁)


「小さな政府」を標榜しているはずのアメリカなのに。

他方、監視システムは日本にも導入されている。

成田空港や新関西空港など主要な空港には、顔認識システムと連動した監視カメラも導入された。そのことを取材した朝日新聞の記者に、国土交通省の担当者はこう語ったそうである。
「要するに、例えばですが三菱商事の社長さんとか、朝日新聞の記者さんとか、身元のはっきり分かっている人を厳重にチェックしても仕方ないですよね。そういう人には検査は迷惑だし、先を急いでいるかもしれないから早く通ってもらって、イラクとか北朝鮮の人を厳しく調べた方が有益ですよね」(小笠原みどり「視線の不公平――くらしに迫る監視カメラ」、小倉利丸編著『路上に自由を――監視カメラ徹底批判』インパクト出版会、2003年所収)
この役人は、自分が何を言っているのか、わかっているのだろうか。(181頁)


たぶん何も分かっていないのだろう。

監視社会は人種差別を強化する。

監視社会は国家にとって都合のわるい情報を隠蔽する。

……小泉首相はと言えば、慶應義塾大学在学中に婦女暴行事件を起こしていた疑いがあるとして、2004年3月には東京地裁に損害賠償請求の訴えまで起こされている。原告は日本テレビ出身のジャーナリスト・木村愛二氏で、「日本国民として計りがたい屈辱と苦悩を強いられた」という主張である。(209頁)


そして、次に紹介する事件をよく見ていただきたい。

国家権力の暴走はもうはじまっているのである。

 三多摩地区の反戦住民団体「立川自衛隊監視テント村」のメンバー3人が警視庁公安部と立川署に逮捕され、事務所や関係者の自宅など6ヵ所が家宅捜索を受けたのは、2月27日早朝のことである。1月に自衛隊立川東駐屯地の東側にある官舎で、イラク派兵反対を呼びかけるビラを配布した活動が、住居侵入罪に当たるとされた。
 額面通りに受け取れば、飲食店などがメニューをポスティングしても犯罪である理屈だが、もちろん、そんなことにはならない。自衛官たちに戦争反対を訴えたから、彼らは捕まった。


国家に批判的なひとたちは、ただそれだけで逮捕される。

3月5日には、社会保険庁目黒社会保険事務所の係長が東京地検によって起訴された。前年の10月19日と25日、11月3日の3度にわたり日本共産党の機関紙『赤旗』の号外を配布したことが、国家公務員法の定める政治的行為の制限に違反したとされ、警視庁公安部が逮捕の上、自宅や勤務先を家宅捜索して、パソコンなどを押収していた。
係長が号外を配布した日は、いずれも日曜や祭日の休目だった。休日の政治活動も犯罪とされるなら、公務員には思想信条の自由はまったく認められないことになる。一方で自民党郵政族の大票田と言われる全国の特定郵便局長たちが罪に問われる可能性は万に一つもない。(224−225頁)


右派はこうした事件を問題視しないだろう。

中国の人権侵害は批判してみせるくせに、これらは批判しない。

なぜなら、人権侵害そのものを彼らが問題視しているわけではないからだ。

だから私たちは右派を「恥知らず」「政府の家畜」と呼ぶ。

 いつ逮捕されるのかと怯えながら反戦運動を続けている夫婦もいる。神奈川県内に住むボスニア・ヘルツェゴビナ人の夫と日本人の妻。9・11の直後にアメリカ軍がアフガニスタンへの空爆を始めた頃から、彼らは東京・赤坂のアメリカ大使館前で抗議活動を続けてきた。
 やがて通勤途中の電柱に、夫の顔写真入りで「指名手配」と書かれた張り紙が数十枚も発見された。悪質な嫌がらせは、それだけでは終わらなかった。半年後には妻が警視庁赤坂署に任意出頭を求められ、暴行の容疑があると告げられた。アメリカ大使館から出てきた人をハンドマイクで怒鳴りつけたという。
 彼女にはそんな覚えがまったくない。だが警察は2004年2月16日、彼らの強制捜査に踏み切った。4人の私服刑事が自宅を訪れ、令状を示して家宅捜査を始めた。この事件を報じた『東京新聞』(2004年6月17日付)によると、帰り際、刑事の1人がこう言い放ったという。
 「とことんやってやるからな」――
 吹き荒れる言論弾圧の過程に、思えばイラクの人質たちに対するバッシングもあった。戦争に反対すれば逮捕される。とりあえず罪状が見当たらない場合でも、大衆がよってたかって袋叩きにして、二度と立ち上がれなくなるほど打ちのめす社会。(225−226頁)


ぞっとする。

これがいま日本で起きていることなのだ。

まだある。

2004年4月、東京・中野の区立小学校の入学式で、挨拶に立ったPTA会長が近頃の学校現場での日の丸・君が代の強制に対する疑問を口にした。とたんに猛烈な攻撃を受けた。地域の有力者らで構成される学校評議員会への出席を求められたそのPTA会長は、通学している子どもがいじめられると脅かされ、教頭が別室に待機させていたPTA役員たちから、「一緒にやっていけない」「勘弁してください」などといった言葉を浴びた。辞任すると一筆書けと校長に迫られて、PTA会長はそれを書いた。(227頁)


もう一度書いておきたい。

これでもまだ日本はファシズムではないと思っているひとがいるなら、
そのひとはすでに国家に従順な「家畜」である。

いや、もっとハッキリ書いた方がよいだろう。

彼らはすでに立派な「ファシスト」なのである、と。

自民党内の憲法改正プロジェクトチームの会合で、こんな発言があったという。

森岡正宏・衆議院議員「先進国で20歳以下の若い人たちに体を動かす団体活動をさせていないのは日本だけだという話を聞きました。私は徴兵制というところまでは申し上げませんが、少なくとも国防の義務とか奉仕活動の義務というものは若い人たちに義務づけられるような国にしていかなければいけないのではないかと」(227頁)


本書には、ほかの議員たちによる愕然とする発言の数々が紹介されている。

ぜひ読んでみていただきたい。

 5月にはバグダッド近郊で、フリージャーナリストの橋田信介さんと小川功太郎さんが襲撃されている。わずか2月足らず前に吹き荒れた人質バッシングの嵐とはうって変わって、この時のマスコミ報道は礼賛一色。「武人」と讃えたのは『読売新聞』だった。(229頁)


何と気持ちのわるい新聞社なのだろうか?

ひとびとのどす黒い憎悪は、いつも「敵」を探して目を光らせている。

政府に批判的な市民活動家。

反戦活動家。

周りに同調しない市民。

そのターゲットとなったひとは、とことん傷つけられていく。

拉致被害者の家族も例外ではなかった。

やはり5月、再び訪朝したものの満足な成果を勝ち取れなかった小泉首相に、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)が不満を述べたシーンがテレビで流れると、彼らにも批判や悪罵が殺到した。「首相にねぎらいの言葉がない」「線香でも送ったるわ」等々。(230頁)


ここからもよく分かるだろう。

ひとびとは、拉致という「人権侵害」に怒っていたわけではないのである。

北朝鮮に憎しみを向ける口実があれば十分なのだ。

だから、被害者家族でさえときには憎悪の対象になり得るのである。

これが日本人の現在のレベルである。








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