フォーラム自由幻想

アクセスカウンタ

zoom RSS 蓮池透・太田昌国『拉致対論』(太田出版)A

<<   作成日時 : 2010/01/11 13:08   >>

トラックバック 0 / コメント 0

1950年6月25日に朝鮮戦争が始まった。

その前年の1949年に、毛沢東指導下の中国共産党が中国全土を解放。

これを見た金日成も、
中国のように武力をもって朝鮮全土を解放するという戦略を持った。

そして70年代後半。

金日成はベトナム全土解放にヒントを得て、
自分たちも一気に朝鮮全土を解放できるのではないかと考え、
そのために総合的な戦略を立てていたのだろう。

このように歴史的分析を行なった太田昌国は、言葉をつづける。

太田 ……また日本は、かつて朝鮮を植民地支配し、その間に、土地取り上げ、強制連行、従軍慰安婦連行、徴用などあらゆる悪行を行なった。戦後になっても歴代政権はその償いをするどころか、そのような日本近代史を肯定する政治指導者が絶えることはない。過去、日本に受けた仕打ちを考えれば、わずかな数の日本人を拉致・連行しようと構わないじゃないか、という考えがあるでしょう。……拉致問題に関して相手を問い詰めるためには、自らの過去にも向き合い、その責任をとるという意思を具体的に示すべきだということです。(94−95頁)


日本人の多くは、「北朝鮮は許せない」と言う。

しかし、もし彼らが北朝鮮に生まれ、そこで育っていたら、
きっと今頃は「日本をやっつけろ」と言っていたにちがいない。

蓮池 ……私はいつも思うんですが、昔日本が何をやったのか、強制連行や従軍慰安婦、そういう話題になるとすぐイデオロギーの問題が入ってきてしまうんです。私はそれが非常に苦手です。右寄りの人は「そんな事実はなかった」と言う。左寄りの人は「絶対あったんだ」と言う。そういう不毛な議論を繰り返していてもダメです。(96頁)


このあたりの蓮池透の認識は、まだまだ甘いと思う。

ともあれ、拉致問題の解決を遅らせている重大な責任は、
日本の側にこそあるのだということを、ふたりは確認する。

太田 ……繰り返しますが、「拉致解決なくして国交正常化なし」というのは、交渉を閉ざしてしまう方針だと思います。……日本が国家の論理として「拉致解決なくして国交正常化なし」と言えば、北朝鮮だってそういう水準で争うことになる。(97頁)


この方針は、拉致問題を解決するものではない。

拉致問題は、ウルトラ右翼の政治家たちに都合よく利用された。

保守派の政治家は、イッキに日本の右傾化を進めた。

実際、これまでの日本の政治を落ちついて振り返ってみるとよい。

拉致問題は何ひとつ解決していないのに、
右派がこれまで実行したくてウズウズしていた数々の政策は、
見事に実行されていったではないか。

太田 ……そういう方向に日本社会を持っていくために、北朝鮮が犯した国家犯罪としての拉致という問題を、彼らは徹底的に利用したのです。今も利用しています。右翼イデオロギーのために、拉致問題という、本来的には人権問題として解決されるべき問題を利用してしまった。(99頁)


ここで太田昌国が拉致問題を「人権問題」と捉えていることがきわめて重要だ。

右派は拉致問題を「人権問題」として捉えてはいない。

右派がよく取り上げるウイグル問題もチベット問題も、
「人権問題」としてこれらを重視しているわけでは毛頭ない。

中国を批判する便利な材料として利用しているにすぎない。

だから彼らは、自国政府が少数民族を抑圧しても殺害しても、
何も言わないのだ。

こういうひとたちのことをふつう「恥知らず」と言う。

だから日本の右派は、アメリカでも国際社会でもまったく信頼されていない。

蓮池 私は今度のミサイルの一件には腹が立って仕方がないんです。フジテレビがすごいことをやっていましたよ。ミサイルが東京タワーの上に落ちたらと、地図を出して解説するんです。一段目〔ママ〕が落ちたら、あの液体燃料は猛毒ですからこの辺まで被害が及びますと。(101頁)


つくづく思うのだが、フジテレビはもう終わっている。

フジテレビのひとたちというのは、戦争がしたくて仕方がないのだろう。

わたしが見たフジテレビの報道も目を覆いたくなるものばかりだった。

しかし、蓮池透は、もう目が覚めた。

「制裁」を叫べば済むとは思わなくなった。

蓮池 ……北朝鮮に制裁を加えれば拉致被害者が帰ってくるというのは、誰が証明したことなんでしょうか? 以前にもお話ししましたが、私は山本一太参議院議員に「制裁は一つの手段としてはあると思いますが、制裁をどうするとどういうメカニズムで拉致被害者が帰ってくるんでしょうか? そのロードマップはあるんですか?」と訊いたことがあります。山本さんは「戦略的にやるから」と言っていましたが、今は、現状の制裁では効果がないから強化しろと言っているわけですよね。拉致被害者が帰ってこないのは、制裁が弱いからだと。果たして制裁を強化したら帰ってくるものなのか……私には理解できません。(103頁)


山本一太議員も、この程度のひとだ。

彼は頻繁にテレビに出演して顔と名前を売るのに熱心だったが、
彼がやってきたことというのは、
北朝鮮バッシングを煽って「制裁」を実現させたことと、
日本国内の在日コリアンに対する人権侵害を助長させたことだけだ。

拉致問題は何も解決しなかった。

では家族会は、いまの家族会はどうなのだろうか?

これがまた悲惨な状況にあるようだ。

やや長い引用になるが、太田昌国の発言を見てみよう。

太田 ……私は……今の家族会事務局長である増元照明さんがおっしゃった言葉が忘れられません。
 「金正日自身が拉致を認めて謝罪したことによって、(……)ようやく日本は『過去の植民地支配の贖罪』という呪縛から放たれ」た(朝日新聞2002年11月10日付け)、
 というものです。私は、被害者の家族の方がこういうことを言われるのは間違いだと思います。悲しみとか怒りというのは個別的なものです。自分の怒りも悲しみも固有だし、相手の、朝鮮の民衆の怒りも悲しみも固有です。蓮池さんも言われるように、それは相殺できるものではないはずです。……
しかし実際問題として、金正日の告白によって「しめた」と思った人は、残念ながら少なからず、います。
「今まで、戦争責任だ、植民地責任だ、と一方的に言われ続けてきたが、これでようやく日本が一体となって被害者として発言できる」
と思っている人たちが多すぎます。
……それなのに家族の方と一緒になって被害者になったような気分で発言している第三者が、私は一番許せません。とりわけこの問題に乗じて好戦的なことを言っている連中は、人間的にひどい連中だと考えています。
……みんなが被害者になりたがり、怒りと悲しみの言葉をぶつけたがっているかのようです。これは一方的に北朝鮮にぶつければ良いのですから、こんなに楽なことはありません。自分は何も傷を負わないわけですから。(104−105頁)


まったく同感である。

こうしたひとたちは、
「中東系のひとたちをみんなやっつけてしまえ」と叫ぶアメリカの右派と、
何も変わるところがない。

太田 ……拉致問題とは、すぐれて歴史的かつ政治的な課題です。冷静な歴史観、透徹した政治哲学が必要です。情緒と感情にまかせた発言しかできない政治家に耐えうる任ではない。……でも、1年足らずの首相在任期間中、対北朝鮮外交は1ミリも動かなかった。(106頁)


言うまでもなく、これは安倍晋三のことである。

太田 ……彼はまた、自滅的な辞任劇の直前には、頼りとしている米国の政府、議会、メディアから、その二枚舌ぶりを批判されました。自国民が拉致された事件には熱心だが、日本帝国が行なった強制連行や従軍慰安婦問題に関する正確な事実認識と責任意識を欠いているのは二重基準だと言われたのです。問題の当事者(この場合は、旧慰安婦の方たち)に批判されても答えぬ(かつ、堪えぬ)人物なのに、米国支配層に批判されると、ひとたまりもないのですね。彼は自分のダブル・スタンダードを、頼みにしている米国から批判されたことで、神経がもたなくなったのだと思います。(107−108頁)


なるほど。

それで安倍は首相の責任を放り出してしまったというわけか。

太田 安倍氏も……官房副長官や首相だった時期に何も解決できなかったのは恥なのです。家族会はそれを言ってもいい。(109頁)


拉致家族会ばかりではない。

救う会やその支持者、そして右派メディアのひとたち。

彼らは安倍晋三の責任を追及しようともしない。

だが、彼が無能であったことは、いまや誰の目にも明らかである。









テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
蓮池透・太田昌国『拉致対論』(太田出版)A フォーラム自由幻想/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる