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zoom RSS 反戦イラク帰還兵の会/アーロン・グランツ『冬の兵士』(岩波書店)A

<<   作成日時 : 2009/12/22 10:15   >>

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イラク戦争がつづくにつれて、米兵の犠牲者の数も増えていった。

兵士は、数多くの仲間の死を目撃していくことになった。

この占領の開始以来、友人が何人死んだか、数えるようになりました。でも34まで来てやめることにした。(152頁)


米軍の内部では、別の問題も起きていた。

近年、女性兵士の数が急激に増加している。

それにともなって、
女性兵士が男性兵士から被害を受ける事件が増えているのである。

ベトナム戦争では7500人の女性が従軍し、90年代初頭の湾岸戦争には4万1000人の女性が派遣されたのに対し、イラクとアフガニスタンにはこれまで16万人を超える女性兵士が配置されてきた。現在、米軍の現役兵士のうちの15%と、前線に配置される兵士の11%を女性が占めている。……退役した女性兵士の3分の1近くが、軍隊にいたあいだに性的な暴力行為や強姦の被害に遭い、71%から90%が任務をともにした男性から性的な嫌がらせをされたという。(155−156頁)


「軍隊は国民を守ってくれる存在だ」と素朴に信じているひとびとは、
こうした事実を直視しようとしない。

軍隊はその本性上、性差別的な組織である。

軍の内部では同性愛者に対する露骨な差別も横行している。

アメリカ政府は、イラクに派遣する兵士を増やすために、
アメリカ国内の犯罪者を送り込むことに決めた。

2006年にイラクでの戦闘のために採用された新兵は、5人に1人の割合で、入隊するにあたって「道徳的権利放棄〔米軍で使用されている婉曲表現の一つ。実質的には犯罪歴免責あるいは不問処置〕を与えられた。2003年から2006年までのあいだに、軍部は経歴に問題のある10万6000名を入隊させ、これには既決重罪犯が4230名、暴行など深刻な軽罪犯が4万3977名、そして麻薬犯が5万8561名含まれている。陸軍が許容する犯罪歴には、テロの脅迫をはじめ、殺人や誘拐も含まれる。
 国防総省は誘拐犯や殺人犯の入隊を許可しながら、なぜ、自ら公言しているゲイとレズビアンを入隊させないのかと、冬の兵士公聴会において帰還兵は問いかけた。(157頁)


兵士が足りないのであれば、
政治家自身や政治家の家族を送り込めばいいのに、
彼らは自分たちの身は守り、代わりに犯罪者を送り込むことにしたのだ。

ここにも戦争というものの本質が見えてくる。

公聴会では、レズビアンの元兵士が証言をしている。

軍隊内部に浸透している性差別を浮き彫りにしている。

 私は気さくで物怖じしないタイプの人間です。誰とでも仲良くなり、人と話すのが好きです。入隊後まもなく友達をつくり始めましたが、私の気さくさはふしだらと誤解されました。ある既婚男性と肉体関係があるという誤った噂が流れたのです。これを教訓に私は内にこもるようになりました。すると今度は、失礼だの、不親切だの、お高くとまっているだの、あるいは意地悪女だ、いやな女だというレッテルを貼られました。(162頁)


女性兵士はつねに疑惑のまなざしを向けられている。

これは軍隊にかぎらず、じつは一般社会でも見られる光景なのではないか?

これこそ差別のもっとも分かりやすい表現である。

黒人は、明るくふるまってもおとなしくしても、レッテルを貼られる。

これが黒人差別である。

日本で暮している外国人も同じような目にあう。

日本を批判すれば「反日だ」とののしられ、
明るくふるまおうとすれば「何か企んでいるのではないか」と疑われる。

女性兵士は次のような体験までしたという。

基地で、同僚隊員たちが私たちのことを「売春婦」「ふしだら女」「嘘つき」と呼ぶのをしょっちゅう耳にしました。1人の一等水兵からは「おまえ、セクシーだな。俺も強姦したいぜ」と言われました。……さらに、殺すぞという脅迫も受けていました。(177頁)


こうしたことが軍隊のなかでは日常的に起きているのだという。

我が国の軍隊ではいまだ、ゲイであることを理由に人びとが暴行を受けたり、ときには殺されたりしています。(180頁)


軍隊は、「敵」を非人間化すると同時に、兵士をも非人間化する。

だから、この「非人間化」は軍の外にも内にも広がっていくのである。

 米軍では、毎日18人の帰還兵が自殺している。退役軍人省の管轄下で治療を受けている元兵士のうち、毎月1000人が自殺を試みる。自殺する帰還兵のほうが、国外の戦闘で戦死する兵士よりも多いのだ。これらの統計数値を大半のアメリカ人は知らない。政府がその公表を拒否しているからである。(187頁)


都合のわるい事実は隠す。

これが「政府」のやることである。

そして、都合のわるい事実をいっしょになって隠すのが「右派」である。

「右派」はつねに証拠隠滅を図る。

それが「右派」の本質である。

政府は不都合な事実を隠すだけではない。

平然と嘘をつく。

……帰還兵は二度にわたって欺かれてきた。戦争を始める理由が最初の嘘で、祖国に帰還した後は政府が福利厚生を保証するという約束が、二つめの嘘だ。(189頁)


低所得層ばかりが戦場に送り込まれる。

ホームレス人口の3分の1は帰還兵です……。(193頁)


公聴会では、あるアメリカ人夫婦も証言した。

彼らの息子はクウェート経由でイラクに送られた。

息子はアメリカにに帰国したあと、自宅の地下室で自殺した。

……地下室でメモを見つけました。……「こんな人間になってしまって、本当に恥ずかしい。幸せで、自信をもって、人生を楽しんでいた子どものころの僕のことだけを覚えていてほしい」(210頁)


アメリカ軍はいかなる大義名分も持ち合わせてはおらず、
その正体は侵略軍にほかならなかった。

軍隊は、性差別と人種差別を繰り返す。

イラク市民の身体は粉々にされ、
良心をかろうじて保っていた米兵は苦しみつづける。

その後ろでほくそ笑んでいるのが、政府と富裕層である。









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