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zoom RSS 笠原十九司『南京事件論争史』(平凡社新書)A

<<   作成日時 : 2009/08/06 07:09   >>

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日本の敗戦後、極東国際軍事裁判(東京裁判)で南京大虐殺は裁かれた。

この裁判の内容を見てみると、驚くべきことが判明する。

それは、こんにちの「歴史修正主義者」の言い分が、
そっくりそのまま当時の弁護団の言い分と同じだということである。

南京事件の弁護団の主張を、そのまま「受け売り」しているのである。

南京事件否定論者たちは、すでに東京裁判の審理において否定された弁護側の主張を相も変わらず受け売りしているのである。(78頁)


裁判の過程でとっくに否定されているにもかかわらず、
60年以上経った現在もなお、聞くに堪えない「自己弁護」を行なっているのだ。

「受け売り」するしか能がないというのは、「否定派」の特徴をよく示しているではないか。

では、当時の弁護団はどのように主張していたのだろうか?

ぜひじっくりと見比べていただきたい。

こんにちの「歴史修正主義者」の言い方とあまりに酷似しているのがよく分かる。

思わず苦笑してしまうほどである。

 @ 証人の証言は伝聞によるもので直接現場を目撃したものではない。

 A 中国軍も退却にさいして殺人、略奪、放火、強姦をおこなった。死体の存在、略奪の結果だけを見て、これを日本軍の行為と断定することはできない。

 B 中国兵は便衣兵(民間服を着た兵士)、便衣隊となって南京安全区ないし南京城内に潜伏していたので、日本軍は便衣兵、便衣隊の掃討、処刑をおこなったので不法殺害ではない。

 C 中国の慈善団体による埋葬資料のなかには、南京戦の戦闘で戦死した兵士の死体が集められて埋葬されたものがふくまれており、虐殺被害者数に入れることはできない。

 D 日本軍が南京を攻撃する直前の南京市内の住民は20万人前後であったので、城内の住民全部を殺さないと集団虐殺20万人にはならない。20万人虐殺というのは、誇大無稽の数字である。(78−82頁参照)


いかがだろうか?

こんにちの否定派の主張とまったく同じで、びっくりするだろう。

@〜Dはすべてコテンパンに論破されているので、
「南京事件否定派」の主張はいずれもとっくに破綻している。

@は、数々の証言によって、反証されている。

A〜Cに関してはのちに見ていくとして、
たとえば、Dについてはどうだろうか?

南京の人口は20万人だったのに、20万人、30万人虐殺説というのは、
あまりに誇張された数字だ、と彼らは言う。

そこから、中国は被害の大きさを誇張して不当に日本を非難している、と言う。

ところが、彼らの言う「南京の人口」というのは、操作されたものだった。

……大虐殺を免れた住民が20万人から25万人という数字なのにそれを虐殺前の南京の人口と曲解して利用したものである。(78−82頁)


歴史修正主義者というのは、どこまで卑劣なのだろうか?

やはり人間的に重大な欠陥を抱えているのではないか?

そもそも南京の人口は、歴史家によると、正しくは「100万人」だったという。

だいたい南京のような主要都市の人口が「20万人」なわけがない、
ということくらいは普通の想像力があれば誰にでも分かることである。

「20万人」というと、現在の鳥取市くらいの規模である。

「そんなわけがないだろう!」と誰でもすぐ分かる。

「南京が鳥取市と同じ人口なわけがないだろ!」と誰でも思う。

さらに本書に掲載されている「所謂南京掠奪暴行事件(弁護側最終弁論)」を読むと、
さらにびっくりするのだが、長くなりすぎるので、ここでは省略する。

南京大虐殺を否定するひとびとの論点を、
昨今の歴史修正主義者たちの主張も含めて整理してみよう。

著者が手際よく要約している。

 @伝聞証拠説――南京安全区国際委員の証言や記録は自分で直接目撃したものではなく被害者・目撃者の報告をそのまま鵜呑みにした伝聞証拠にすぎない。

 A中国兵・中国人犯人説――中国兵が退却時に殺人、掠奪、放火、強姦さらには混乱に乗じた中国市民が掠奪や放火、強姦をおこなったのが、すべて日本兵の仕業とされている。

 B便衣兵・便衣隊潜伏説――日本軍が殺害した市民というのは民間服に変装した便衣兵(ゲリラ兵)だったので不法殺害ではない。便衣兵・便衣隊が安全区に潜伏したために、一般市民が疑われて殺害されたので、責任は中国軍側にある。

 C埋葬資料うさんくさい説――埋葬資料には戦死者もあり、賃金欲しさの水増し報告あり、女子・子どもの数字は捏造であるなど、誇張、杜撰で信用できない。

 D南京人口20万人説――日本軍が南京を占領する前の南京市内の人口は20万人だった、皆殺しにでもしなければ、20万人虐殺にならない。

 E戦争につきもの説――近代の戦争では都市の攻防戦と占領にあたってどこでも発生する不祥事。

 F略奪でなく徴発・調達説――日本軍は軍票や代価を支払って徴発・調達したのであり、掠奪ではない。受け取り人の現地住民が避難・逃亡して不在だっただけである。

 G大量強姦否定説――若干の強姦事件があったが、検察側のいう組織的な大量強姦はなかった。南京安全区国際委員会の強姦記録も伝聞であり、また中国女性の売春行為も発見されると強姦と報告されたケースもふくまれる。

 H中国の宣伝謀略説――中国政府・国民が一体となった排日・侮日の中国特有のプロパガンダである。中国政府の常套的な宣伝外交の手段である。

 I中国とアメリカの情報戦略説――南京在住の中国贔屓の欧米人が中国の宣伝外交のお先棒を担ぎ、アメリカもこれに与(くみ)して、世界に南京事件をあったものと流布し、日本批判を惹起させた。(87−89頁)


よくもまあここまで破廉恥なことが言えたものだと、呆れる。

これらは、すべて、被害妄想と自己中心性と暴力にまみれている。

「セカンド・レイプ」どころの話ではない。

日本人は、戦後60年以上も経って、これでもか、これでもか、
と旧植民地国のひとびとに対する「レイプ」を繰り返しているのである。

元日本兵のなかにも、南京大虐殺の事実を証言しているひとがいる。

ところが、彼らに対して、多くの日本人はバッシングを加えようとする。

どうしてなのだろうか?

バッシングを加えようとするひとびとには、どのような意識があるのだろうか?

……「日本人のくせにけしからん」という意識が、身内(日本軍)の犯罪行為を他者(外国人、国際社会)に暴露するな、という軍人あるいは日本人に共通する意識……。(91頁)


なるほどね。

「日本人のくせに」……ですか。

分かりやすい意識反応である。

だから隠蔽工作を行なう、というわけですか。

分かりやすいが、卑劣である。

しかも著者によると、現在ではネット右翼たちに「反日左翼新聞」と
見なされている『朝日新聞』も、「東京裁判は『勝者による不当な裁き』である」と
いう不平感を表明していたという。

日本人が戦後、史実と向き合うことができなかった要因には、
ほかには、どのようなものがあったのだろうか?

 ドイツと決定的に違ったのは、ドイツ国内にユダヤ人収容所があり、映像記録、文書記録があり、何よりも被害者のユダヤ人もドイツ国民であったことである。日本の場合は南京は外国であり、被害者は中国人であり、沖縄を除けば日本国土が凄惨な地上戦の戦場となったことがなかったので、軍隊が民間人を犠牲にするという戦場の修羅場の体験がなかった。(99頁)


著者によるこの説明には、納得できないところもある。

とりあえず引用しておく。






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