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zoom RSS 的場昭弘『とっさのマルクス』(幻冬舎)

<<   作成日時 : 2009/08/03 07:04   >>

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先日、旧左翼の重鎮によるマルクス入門を紹介した。

きょうは、ニューレフトの旗手によるマルクス入門を紹介しよう。

普段、本をほとんど読まない初心者にも手に取りやすように工夫されている。

ひとつのページに、マルクスの「名言」がひとつ紹介されるのだが、
『資本論』だけでなくさまざまな著書からの引用で成り立っている。

まずはじめに筆者による見出しがつけられ、
次にマルクスの「名言」が引用され、
そのあとに、筆者によるコメント・解説がつけられる。

たとえば、こんな感じ。

未払い残業がなくならないワケ

 ある立派な工場主が私にこう語ってくれた。
「もし毎日10分だけ余分の超過労働時間があれば、毎年1000ポンドを手に入れることができるのだ」と。
 一刻一秒が彼の利益の一部なのだ。(資本論)


◎今の会社や工場でもよく聞く話です。「5時前に帰っていいよ」。それを真に受けてタイムカードを押すと、30分ぶん賃金が切られていた。そういえば賃金は30分置きにつくという細則だった。逆に、5時までなのに、「あと5分でいいから働いてくれないか」と頼まれることもしばしばあります。無下に断れないので働くと、そのぶんは賃金に付加されていなかった。従業員1万人の工場であれば、5分×1万=833時間20分。あちらは大きな利潤を得たはずです。このドロボウめ!(014頁)


タイムカードで細かく労働時間を管理するくせに、
30分・60分といった単位で勝手に時間を切り下げるのが、企業の汚いやり方だ。

企業はどこまでもずるい。

日本ではそれを“ピンはね”と呼ぶ

 出来高賃金は一方では資本家と賃金労働者との間に寄生者がはいること、すなわち仕事の請負を容易にする。
 もっぱら介入者の利得は資本家が支払う労働の価値と、その中から介入者が実際に労働者に与える価格との差から生まれる。
 イギリスではこの制度を特徴づけてSweating-system(搾り取りの制度)という。(資本論)


◎昔は労働者を集め、ピンはねをする乱暴な手配師がたくさんいました。日本では戦後、それを禁止すべく公共職業安定所(ハローワーク)以外は、原則、仕事を斡旋できなくなった。ところが、1986年の労働者派遣法の施行から始まる規制緩和で、人材派遣会社が堂々と斡旋できることになった。表向きは非暴力的ですが、これはピンはね屋の復活に他なりません。(015頁)


人材派遣業というのは、要するに「手配師」のことである。

だから、人材派遣会社の経営者のことをこれからは、
「おい、ピンはね屋!」と呼んで差し上げようではないか。

人材派遣会社ザ・アールの社長・奥谷禮子や、
グッドウィルの会長だった折口雅博などは、要するに「ピンはね屋」である。

ドラキュラ資本主義め!

 だから資本は自分の唯一の生命の衝動――自己を増殖し、剰余価値を創る衝動をもつ。すなわりその不変部分である生産手段を使って、できるかぎり多くの剰余労働を吸い取ろうとするのである。
 資本がまるで吸血鬼のように元気になるのは、生きた労働を吸い取るときだけであり、多く吸えば吸うほどますます元気になる。(資本論)


◎ドラキュラは若い娘が好きです。若い生き生きとした血が健康にいい。資本家もそうです。価値が変わらない不変資本の原料や機械は死せる血、そんなものにはそそられない。若い労働者の鮮血、労働の価値を吸いたい。工場の中で労働者はなかば奴隷。トイレに行くこともはばかられる。これは資本家の賃金の略奪だ。ふざけんじゃない。(032頁)


だから、「健全な資本主義」などというものは、そもそも存在しない。

シェイクスピアが言ったように

 商品は貨幣を愛する。
 しかし「本当の恋が簡単にいったためしはない」ことは知られている。(資本論)


◎この片思いのつらさは景気の悪いときほど痛感します。客は来ない、物は売れない。どうして買ってくれないのか。金さえあれば何でも買えるが、商品では何も買えないから。これが厳しい現実というもの。(045頁)


シェイクスピアを愛読するマルクスならではの表現だと言えるだろう。

現実を正面から見る

 弱い者はいつも奇跡を信じることで救いを見つけたものだ。
 空想の中で敵をやっつけ、その敵に勝ったものだと思いこみ、やがて待ち受ける未来や、やる気もないことを、ただほめたたえることで、現在を理解する力をまったく放棄するのだ。(ルイ・ボナパルトのブリュメール18日)


◎現実を見ようとしない。見れば怖くなるので目を隠し、そんな現実などないのだと空威張りする。権力を持たない弱い人々はそれしかできない。彼らの頭の中にあるものは現実ではない。(051頁)


わたしはこの言葉を読むと、「ナショナリスト」を思い出す。

彼らは、世界や社会の現実を直視することができないからだ。

変えるために解きほぐす

 哲学者たちは世界をさまざまに解釈してきただけだが、重要なことは世界を変革することだ。(フォイエルバッハのテーゼ)


◎マルクスの言葉の中でもとりわけ有名なものです。世界をさまざまに解釈してきた哲学者と違って、これからは世界を変革することが重要だというわけですが、実は世界をさまざまに解釈できないと変革もできません。その意味では、解釈も変革のひとつです。(054頁)


これは、マルクスの書いたもののなかでも、とくに有名なものである。

著者のコメントがなかなか渋い。

宗教のヤバい効き方

 宗教の悲劇は、現実的な悲劇の表現であり、現実の悲劇に対する抗議だ。
 宗教は抑圧された人々の嘆きであり、非情な世界の心情であるとともに、精神を失った状態の精神である。
 それは民衆のアヘンである。(法哲学批判序説)


「宗教はアヘンである」。この言葉は宗教の否定の意味として流布しました。しかし問題なのは、宗教が現実を見せないための手段として使われてきたことです。現実を見せないための宗教はアヘンである、と考えるべきでしょう。(056頁)


これもマルクスの有名な言葉だろう。

ただ、これほど正しく理解されていない言葉もないかもしれない。

とくに創価学会の諸君には注意深く読んでいただきたい。

愛し愛される人間たれ

 もし君の愛が片思いに終わるなら、つまり君の愛が愛として相手の愛を生み出さず、愛する人間としてみずからの生の表出をとおして、みずからを愛される人間にしないなら、君の愛は無力であり、不幸である。(経済学・哲学草稿)


◎愛というのは愛することによって、他人の愛を獲得することです。その意味で片思いに終わることなく、積極的に愛されるようにならなければならない。人間社会はまさに愛し、愛されることによってしか成りたたないのです。(067頁)


これは、わたしが学生時代に出会ってからずっと忘れられない言葉である。

「君の愛は無力であり、不幸である」という部分に、凄味が感じられる。

学問に近道はない

 学問をするのに簡単な道などない。
 だからただ学問の険しい山を登るのをいとわないものだけが、輝かしい絶頂を極める希望を持つのだ。(資本論)


◎楽を求めてはいけません。近道なんてありません。あせらずじっくりと歩みながら、希望を胸に抱くのです。分厚い『資本論』を見た読者に、ひるまないで最後まで読めという言葉。(076頁)


これもわたしが日々心に刻んでいる言葉である。

共産主義には形がない

 共産主義はこうあるべきといったひとつの状態、現実を変える理想状態などではない。共産主義と私たちが呼んでいるものは、現在の状態を止揚しようとする運動のことである。(ドイツ・イデオロギー)


◎マルクスが初めて共産主義を定義した言葉です。共産主義はある決まった形式をもつ制度ではなく、現在の状況を変革しようという運動であると言っています。共産主義をあれやこれらの形で捕らえようとするものにとって、この言葉の意味は大きいと思われます。(104頁)


マルクスのなかでこの言葉が大好きだ、というひとはわりと多いと思う。

マルクスの思想の特徴をよくあらわしたものであろう。

貧しさのインターナショナル

 労働者に祖国はない。(共産党宣言)


◎労働者は、世界中どこでも労働者であることにおいて同じ仲間です。労働者であるかぎり、最終的には国民としての繁栄に与れない。いつかは捨て去られる。保護主義の中、一億層中流化の夢に酔った日本の労働者も、いつしか世界の貧民に戻る。(106頁)


労働者の祖国は、「国民国家」ではない。

ナショナリスト・愛国主義者は、そこがまったく分かっていない。

「祖国のために銃をとれ」?

ご冗談を。

労働者に祖国はない。

だからマルクスは言うのである。

「万国の労働者よ、団結せよ!」と。


  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


幻冬舎という出版社は、歴史偽装の本も出す、わるい出版社である。

お金が儲かるなら歴史も偽装してしまえという出版社だ。

そこが今回、的場昭弘によるマルクスの入門書を出した。

罪滅ぼしのつもりなのだろうか?

それとも、ひどい本をつくる編集者のことを快く思わないまともな編集者がいて、
そのひとががんばって作ったのだろうか?






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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
 参考になります。
山路 独
2009/08/04 05:38
◆山路独さま

どうもありがとうございます。

これからもがんばります。
影丸
2009/08/05 15:58

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