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zoom RSS 安田節子『自殺する種子』(平凡社新書)A

<<   作成日時 : 2009/07/30 09:15   >>

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グローバル化の波に乗って急成長しているのが、アグリビジネスである。

アグロバイオ(農業関連バイオテクノロジー〔生命工学〕企業は、
遺伝子操作技術を開発・駆使して、何をたくらんでいるのだろうか?

それは、世界の農業を支配すること、である。

そのための遺伝子操作技術のひとつが「自殺種子技術」だ。

これを施すと、その種から育つ作物に結実する第二世代の種は、
なんと勝手に「自殺」してしまうのである。

この技術は別名「ターミネーター・テクノロジー」と呼ばれている。

 ターミネーター技術とは、作物に実った2世代目の種には毒ができ、自殺してしまうようにする技術のことです。この技術を種に施して売れば、農家の自家採種は無意味になり、毎年種を買わざるを得なくなります。(55頁)


農家に毎年種を買わせるために、自殺する種子を開発する。

こうして世界中の農家は、
毎年、種をアグロバイオ企業から買わざるを得なくなる。

よくもまあこんなあくどいことを考えつくものである。

企業は、この遺伝子操作技術に特許権を設定して、利益を独占する。

……世界的に著名なインドの科学者・環境活動家のヴァンダナ・シヴァが基調報告を行いました。「生物特許は生物に対する海賊行為。生物との共生ではなく、利己的利用を行っている」と述べ、世界銀行、IMF(国際通貨基金)、WTO(世界貿易機関)の3つの機関を批判……。(53頁)


まさしく「海賊行為」にほかならない。

人類が受け継いできた植物の遺伝子に特許を設定するという「暴挙」を、
「海賊行為」と呼ばずに何と呼べばよいのだろう。

世界銀行・IMF・WTOを立派な国際機関だと思い込んでいたひとは、
しっかりとここで反省していただきたい。

では、このような「ターミネーター技術」を開発したのは、どこなのか?

 この技術は、米国農務省と綿花種子最大手デルタ&パインランド社(D&PL、のちにモンサント社が買収)が共同開発して、1998年3月に米国特許を取得し、続いてシンジェンタ社が同年9月に、デュポン社も翌年1月にそれぞれ米国特許を取得しています。開発の目的は、GM種子の特許侵害を防ぐためとしています。(55頁)


モンサント社は、世界最大のアグロバイオ企業である。

……同社を有名にした商品の一つはPCBであり、「アロクロール」の商品名で独占的に製造販売した。また、農薬のメーカーとしても著名で、ヴェトナム戦争で使われた枯葉剤の製造メーカーでもある。この枯葉剤には不純物としてダイオキシン類が含まれており、のちに問題となった。人工甘味料アスパルテームや遺伝子組み換えの牛成長ホルモンrBSTの販売、近年では除草剤ラウンドアップとそれに耐性を持つ遺伝子組み換え作物をセットで開発・販売している。(198頁)


アグロバイオ企業は、こんにち、さらに技術を「発展」させているという。

また業界はターミネーター技術をさらに進化させた、トレーター技術も開発しています。植物が備えている発芽や実り、耐病性などにかかわる遺伝子を人工的にブロックして、自社が販売する抗生物質や農薬などの薬剤をブロック解除剤として散布しない限り、それらの遺伝子は働かないようにしてあります。……自社薬剤と種子のセット売りは、除草剤耐性GM作物の「自社除草剤と種子のセット売り」戦略と同じです。……アグロバイオ企業の真の狙いは種子の支配なのだ……。(56頁)


これを悪魔の所業と言わずに何と言うべきか。

ターミネーター技術やトレーター技術は、専門的には「植物遺伝子の発現抑制技術(GURT=Genetic Restriction Technology)」と呼ばれるものです。(56頁)


いまのところは食用の植物にはこの技術を使用しないと述べているらしい。

D&PL社は綿花種子最大手であり、食用ではない綿花でターミネーター技術の商業化を進める狙いと思われます。(58−59頁)


では、アグロバイオ企業は、どのように悪行の数々を自己正当化しているのか?

それは、「地球温暖化対策」という口実である。

地球温暖化は、高温、乾燥、塩害土壌、洪水などに強いGM植物によって解決できるし、また石油代替のバイオ燃料にもエタノール転換効率を高めたGM植物が貢献する……。……このようなGM作物の広範な作付で懸念される遺伝子汚染問題は、ターミネーター技術で解決できるというロジックを展開しています。
 それにしてもアグロバイオ業界は、自分たちが生み出したGM種に起因する遺伝子汚染を防ぐためといって、そのつけを社会に払わせるつもりなのです。(59頁)


この本に書かれていることではないのだが、
遺伝子汚染はすでに日本でもはじまっている、と指摘するひとびともいる。

実際、遺伝子組み換え菜種が、
搬送される途中の日本の沿道で自生しはじめているというのだ。

次に、カナダの農民パーシー・シュマイザーの闘いを取り上げよう。

とても怖ろしい話である。

……モンサント社の種子を購入する農家は、特許権を尊重するテクノロジー同意書に署名させられ、どんな場合でも収穫した種子を翌年に播くことは許されません。毎年種会社から種を買うことが求められます。(61頁)


ある日、シュマイザーのもとに1通の手紙が届いた。

それはモンサント社からのもので、
「賠償金」を支払わなければ訴訟に持ち込む、という警告だった。

どういうことか?

シュマイザーの農場のキャノーラ(西洋菜種)畑で、
モンサント社の特許作物の存在が確認された、というのである。

だが、シュマイザーにはまったく身に覚えのない話であった。

モンサント社と契約したこともなかった。

ではどうして彼はモンサント社から警告されたのか?

それは、彼の敷地で遺伝子組み換えキャノーラがどこからかやってきて、
勝手に自生し、彼の畑を「汚染」していたというのである。

彼が怒るのも当然であろう。

モンサント社が開発した植物が勝手に生えていたのに、
「賠償金を支払え」と一方的に言ってきたのだから。

これに応じなかったシュマイザーを、結局モンサント社は訴えた。

シュマイザーは、この提訴を受けて立つことにした。

当然、彼は、負けることなど考えてもいなかっただろう。

 しかし、カナダの最高裁の判決は、シュマイザー側の敗訴でした。この判決の意味するところは、GM作物の花粉や種子が、風や鳥、あるいは蜂や動物に運ばれたとしても、トラックやコンバインからこぼれたとしても、遺伝子汚染の経路は問題ではなく、そこに生えていたその事実が特許権侵害に当たるということです。(63頁)


次の話は、わたしもまったく知らなかった話である。

 ビル・ゲイツのビルアンドメリンダゲイツ基金、ロックフェラー財団、モンサント社、シンジェンタ財団などが数千万ドルを投資して、北極圏ノルウェー領スヴァールバル諸島の不毛の山に終末種子貯蔵庫を建造し、2008年2月に活動を開始しています。ノルウェー政府によれば、それは、核戦争や地球温暖化などで種子が絶滅しても再生できるように保存するのが目的といいます。
 この貯蔵庫は、自動センサーと2つのエアロックを備え、厚さ1メートルの鋼鉄筋コンクリートの壁でできています。また爆発に耐える二重ドアになっています。北極点から約1000キロメートル、摂氏マイナス6度の永久凍土層深くに建てられた終末種子貯蔵庫には、さらに低温のマイナス8度の冷凍庫3室があり、450万種の種子を貯蔵できます。(73頁)


彼らの本当のねらいは、いったいどこにあるのだろうか?

考えただけでも身震いする。

アグロバイオ企業がいくらいいことを言っていても、
それをそのまま鵜呑みにするわけにはいかない。

「緑の革命」という重大な失敗例があるからだ。

 1940年代から60年代にかけて、「緑の革命」が穀物の大量生産を達成したといわれています。そこに資金提供し主導したのがロックフェラー財団やフォード財団でした。(74頁)


この「功績」によって、研究者はノーベル賞を授与されている。

だが、「緑の革命」の真のねらいはどこにあったのか?

飢餓問題に直面するメキシコやフィリピン、インドの共産化(赤の革命)を防ぐために緑の革命が必要であったとも指摘されています。緑の革命では、トウモロコシ、小麦、米などの多収量品種を投入しましたが、それらはいずれも従来の2倍以上の収量(肥料の吸収効率が良い)があり、茎が短く、肥料を余分に与えても倒伏しないなどの特徴を持つものでした。しかし、茎が短いため湿地での生産に不向きで、灌漑事業と農薬・化学肥料を大量に必要としたのです。
 70年代に入った頃から、表土の塩類集積が大きな問題となり、また、農薬に耐性を持つ病虫害の大発生に見舞われたりして、逆に生産量を減らす例が出てくるようになりました。(74頁)


結果は悲惨なものだった。

農地を担保に借金をしなければならない農民が続出した。

農業で食べていけない農民が増え、
彼らは都市のスラムへと流れていった。

「緑の革命」は完全な失敗だったのだ。








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