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zoom RSS 安田節子『自殺する種子』(平凡社新書)@

<<   作成日時 : 2009/07/28 23:24   >>

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グローバリゼーションは世界に何をもたらすのか?

本書はきっと多くのひとにとって衝撃的な内容である。

「あなたは遺伝子組み換え作物(GM作物)をどう思いますか?」


こう聞かれたら、おそらく多くのひとが「不安だ」と答えるだろう。

「遺伝子組み換え作物を使った商品は買わないようにしている」と答えるだろう。

では、日本人は世界のなかでもGM作物を多く食べている国民ですよ、
と言われたら、どう思うだろうか?

じつは、知らないうちに多くの日本人は遺伝子組み換え作物を摂取している。

遺伝子操作技術は、わたしたちの知らないところで、どんどん進化している。

そのひとつが、「自殺する種子」である。

「自殺する種子」の存在については、わたしは知っていたが、
より詳しく調べてみたいと思って本書を手に取った。

やや危うさを感じる記述も見られるのだが、それでもおすすめできる本だ。

長くなると思うが、ていねいに拾い読みしてみたい。

ネット右翼の方々にはこういう問題は語れないだろう。

  **************************************

資本主義システムは、農業・酪農・畜産のあり方も大きく変えてしまった。

そこにあるのは、利益至上主義・合理的コスト主義である。

あくなき金銭への欲望である。

 それは、まず頭数を増やす規模の拡大で1頭当たりのコストを削減し、飼料コストを下げるために飼育をスピードアップし、採卵量・乳量増加のために濃厚飼料・成長ホルモン剤を与え、密飼いによる病気の防止や成長のために抗生物質はじめさまざまな薬剤を投与する、さらに人手を省くために大規模な機械化をするといった工業的システムです。(33頁)


利潤を最優先させるとこうなってしまう。

肉牛の成長を促進させるために肉骨粉を使用していたことは、よく知られている。

草食動物である牛に「牛」を食べさせるという、いわば「共食い」をさせていた。

この肉骨粉はBSE(牛海綿状脳症)の原因と考えられている。

なお肉骨粉の飼料禁止により、世界的に発生頻度は下がりましたが、それでもいまだ散発的に発生し、日本では2009年1月に入ってからも36例が見つかっています。(38頁)


え?

そうだったのか。

まだ日本でもBSE感染牛が発見されつづけているのか。

 また日本では、乳業メーカーが定めた乳脂肪分3.5%以上という水準が酪農家に要求され、それより低いと加工用として一段と低い価格でしか買ってもらえません。脂肪分は冬には増え、暑い夏に減るのは、牛に限らずどの動物でも自然の生理なのです。(38頁)


脂肪分を増やすために、穀物(濃厚飼料)を給餌することになる。

アメリカではどうしているのだろうか?

 米国では、成長を早めたり乳量を増やすために、牛にホルモン剤を投与することが行われています(EUでは禁止)。(38−39頁)


ホルモン剤を販売していたのが、モンサント社である。

この企業については、このあと何度も引用することになる。

 しかし近年、米国でも、人工ホルモン剤残留の牛乳や牛肉による、アレルギーやホルモンへの影響(とくに女性と子どもに乳がんが発生する危険性)が問題視され、売り上げが落ちたこともあって、ついに2008年8月、モンサント社は牛成長ホルモン事業からの事実上の撤退を発表しました。(40頁)


こうした工業的な生産システムは、意外なところに影響を及ぼしている。

病院に入院している患者の間で広がる院内感染だ。

院内感染を引き起こしているものでよく知られているのは、
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)だろう。

これによって日本全国の病院で何人ものひとが死亡している。

黄色ブドウ球菌などの常在菌が抗生物質に耐性を獲得し、
病院のなかで院内感染症を引き起こしているわけだ。

MRSAの特効薬が「バンコマイシン」なのだが、
この「バンコマイシン」が効かないMRSAがあらわれたのである。

なぜ、黄色ブドウ球菌や腸球菌がバンコマイシン耐性を獲得してしまったのでしょう。アボパルシンは家畜専用の飼料添加物ですが、これとバンコマイシンは化学構造が類似しています。これを飼料添加物として使用し続けることで、鶏の腸球菌が耐性を得るようになります。鶏肉を介しその耐性因子が人のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(院内感染症)にうつれば、もはやバンコマイシンの特効薬としての有効性はなくなります。バンコマイシン耐性菌を作り出したのが、養鶏場などでのアボパルシンの多用だったのです。(42頁)


抗生物質を多用する生産システムは、思わぬ被害を生み出したというわけだ。

 WHO(世界保健機関)によると、抗生物質を含む飼料の使用を禁止したデンマークでは、耐性菌に感染した家畜の割合が80%から5%に減少しました。抗生物質の使用を禁止しても、デンマークの農家における飼育コストは、1%(豚1頭あたり約1ドル)増加したにすぎないといいます。(43−44頁)


鳥インフルエンザの発生も、合理的コスト主義が関係しているという。

WHOは、高病原性の鳥インフルエンザの発生は多羽飼育によると、警鐘を鳴らしています。(45頁)


どういうことだろうか?

 太陽光さえない環境で、狭いケージで密飼いされ、自然では口にしないような餌(薬剤、飼料添加物、遺伝子組み換えトウモロコシなど)を与えられていては、鶏たちの生命力は衰え、免疫力が低下するのは当然です。(45頁)


なるほど。

 養鶏場はいまではどの国においても大規模飼育が普通です。鳥インフルエンザの同時多発はこの大規模飼育が背景にあります。(46頁)


資本主義システム・グローバリゼーションは、利潤の最大化をねらって、
無理な生産システムをつくりあげてしまったということである。

新型インフルエンザウイルスが出現し、もし大流行すれば、最悪の場合死者は5億人に達し社会崩壊の危機となると、WHOは警告しています。新型インフルエンザは人災なのです。(46頁)


鳥インフルエンザがそうなら、
豚インフルエンザもこの無理な生産システムと関係しているのだろうか?

もちろん、している。

 2009年4月上旬、メキシコで豚由来のインフルエンザウイルスが分離され、人から人に感染する新型インフルエンザウイルスと認定されました。……
 メキシコの各新聞は、今回のインフルエンザの発生源を、世界最大の養豚会社である米国スミスフィールドフード社が経営する高密度の養豚場だと伝えています。最初に発生した地域と見られているラグロリア村に同社子会社の養豚場があります。ここでは5万6000頭の雌豚から、年間95万頭の豚が生産されています(08年度)。この養豚場は、管理が不衛生だとして以前から悪評が高く、住民やジャーナリストたちは、ウイルスがこの養豚場の豚において進化し、その後、ウイルスを含む廃棄物(糞や死体など)によって汚染された水やハエなどを介して人間に感染したと主張しています。(47頁)


新型インフルエンザの不安を煽ってバカ騒ぎしたひとたちは、
このような生産システムのあり方にはまったく目を向けなかった。

まだ確定したわけではないかもしれないが、
新型インフルエンザの原因にアメリカ企業が絡んでいたとしたら、
とても「象徴的」なことなのではないだろうか。

日本の場合、屠畜場で検査されて、抗菌性物質の残留や屠畜場法に定められた疾病(尿毒症、敗血症、膿毒症、白血病、黄疸、腫瘍など)や奇形が認められることが頻発しています。その場合、屠殺禁止、全部廃棄、また内蔵など一部廃棄となるのですが、その頭数は牛・豚ともに屠殺頭数の6割にも達します(2006年度)。出荷される家畜の多くが病体であるという現実はほとんど知られていません。(50頁)


「霜降り」の牛肉によだれを垂らす日本の消費者も多いが、
この「霜降り」も牛にとっては「病気」でしかない。

次は、いよいよ遺伝子操作技術について紹介しよう。






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