フォーラム自由幻想

アクセスカウンタ

zoom RSS モフセン・アフマルバフ『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない、恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』

<<   作成日時 : 2009/07/14 10:19   >>

トラックバック 2 / コメント 2

あまりに長い書名なので、出版社名をこのタイトル欄に打ち込めなかった。

タイトル字数に限度があることをはじめて知った。

あらためて書いておく。

モフセン・アフマルバフ著
『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない、恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』
現代企画室


イランの映画監督が書いた薄くて小さな本だが、超超超おすすめ。

ずいぶん前にもこの本を紹介したが、あらためて取り上げておきたい。

「9・11」よりも前のことだ。

かつてアフガニスタンでタリバンが政権をとった。

イスラム原理主義を掲げるタリバンは、
バーミヤンの歴史的遺産である石仏をダイナマイトで破壊した。

爆破の映像が世界中に流されると、世界中から非難の声があがった。

ひとびとは、貴重な歴史的遺産を守れ、と叫んだ。

宗教が異なるからといって仏教遺跡を破壊する行為は野蛮だ、と叫んだ。

しかし、そう叫んだひとたちこそ野蛮なのではないか! と怒ったひとがいた。

著者のアフマルバフだ。

これは先頃、全世界の人びとの悲哀を掻き立て、文化人や芸術家は誰も彼もが、破壊された仏像を守れ、と叫んだ。しかし、干魃によって引き起こされた凄まじい飢饉のためにアフガニスタンでの100万人の人びとに差し迫っている死については、国連難民高等弁務官の他に懸念を表明する人がいなかったのはなぜなのか。なぜ誰もこの死の原因について発言しないのか。「仏像」の破壊については皆声高に叫ぶのに、アフガンの人びとを飢えで死なせないために、なぜ小さな声も上がらないのか。現代の世界では、人間よりも像のほうが大事にされるというのか。(14−15頁)


アフガンのひとびとが死んでいったときには世界中がこれを黙殺してきたのに、
仏像が破壊されようとしたときに世界中のひとびとは抗議の声をあげたのだ。

彼らにとって、仏像と人間の命と、どとらが大切なのか?

人間がバタバタと死んでいるときには何の関心も示さなかったくせに、
仏像が破壊されようとした途端に「非難」を浴びせかけて「偽善者」ぶりを発揮した。

以前わたしは、アザラシの「タマちゃんフィーバー」を見て、
同様の怒りを抱き、このことについて記事を書いたことがあった。

日本人にとって、アザラシの命と人間の命と、どちらが大切なのか?

日本人は、アザラシなら必死に助けようとするのだが、
在日外国人や路上生活者は平気で見殺しにできる国民なのである。

アフマルバフは、考えた末に次の結論に達することになる。

ついに私は、仏像は、誰が破壊したのでもないという結論に達した。仏像は、恥辱のために崩れ落ちたのだ。アフガニスタンの虐げられた人びとに対し世界がここまで無関心であることを恥じ、自らの偉大さなど何の足しにもならないと知って砕けたのだ。(27頁)


仏像を破壊したのはタリバンではないのだ。

仏像は人間世界の愚かさに恥じ入り、自ら崩れ落ちたのだ。

まだ心が石になっていなかった唯一の人は、あのバーミヤンの仏像だった。あれほどの威厳を持ちながら、この悲劇の壮絶さに自分の身の卑少さを感じ、恥じて崩れ落ちたのだ。仏陀の清貧と安寧の哲学は、パンを求める国民の前に恥じ入り、力つき、砕け散った。仏陀は世界に、このすべての貧困、無知、抑圧、大量死を伝えるために崩れ落ちた。しかし、怠惰な人類は、仏像が崩れたということしか耳に入らない。こんな中国の諺がある。「あなたが月を指差せば、愚か者はその指を見ている」
 誰も、崩れ落ちた仏像が指さしていた、死に瀕している国民を見なかった。(107頁)


突き刺さるような痛烈な批判だ。

先進諸国のひとびとは、タリバンの暴力性を批判する。

タリバンは野蛮であると批判する。

まるで自分たちは野蛮を克服し暴力を否定した立派な文明国であるかのように。

しかし、先進諸国こそ、暴力をもっとも洗練させている国なのではないか?

先進諸国のひとびとこそ、自分たちのふるう暴力に無自覚なのではないのか?

暴力は、より近代的な文明の中にも存在する。人間は暴力を根絶したのではなく、その手段を近代化したのである。(131頁)


タリバンを批判しているひとたちは、
自分たちのなかにある「野蛮性」にはまったく目を向けようともしない。

近代的な西側諸国でアフガン人の暴力性として批判されているのは、暴力の形式であって、その本質ではない。(132頁)


日本では、ソマリア沖の「海賊」退治を口実にして、
はるかアフリカの海にまで「自衛隊」を派兵しはじめている。

欧米も軍を展開している。

ここでは「本当の海賊は一体どちらなのか?」という疑問はかき消されている。

そしていま、またアフガニスタンは世界から忘れ去られようとしている。








テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(2件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ
アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ ...続きを見る
ロドリゲスインテリーン
2009/11/22 11:32
『カンダハール』★★★☆☆
カナダで暮らすアフガン人ジャーナリストの女性のもとに、手紙が届いた。 ...続きを見る
フォーラム自由幻想
2010/01/18 09:54

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは、船頭です(o^-')b

バーミヤン遺跡へのタリバンを悪名高くした事件でした。
そして、ブッシュは9.11のアルカイダとタリバンを結び付け、罪のないアフガニスタンの人々を殺しまくりました。
そして町も破壊され、それまでタリバンとうまく付き合い、独自に井戸や、病院を作った人達との絆もズタズタにしていきました。
オバマは、国内の失業率対策としてなのか、アフガニスタンへの派兵を増員していくそうですね。 この件に関してのオバマの政策には首を傾げざるをえません。
壊れてしまったものを元に戻す・・・それは、新たに作り上げる事よりも難しいと感じます。

マフマルバフの作品で観た「サイクリスト」と「カンダハール」、どちらも世界に取り残された人々を映し出しているものでした。
自分は、すぐに忘却力を発揮してしまうので、アフガニスタンの人達の事、忘れないようにしたいと思います。
船頭
2009/07/14 17:26
◆船頭さま

お返事が遅くなりまして、失礼いたしました。

オバマ大統領のアフガニスタン政策については、同感です。結局、国防関連の官僚と軍需産業を巨大化させてきてしまったために、そうそう簡単には政策を大きく転換できない仕組みになってしまっているのだと思います。だからこそ、日本は取り返しのつかない構造を作り上げないように、9条の現実化を図っていかなければならないのだと思います。

以前このブログでもご紹介したと思いますが、『アフガン零年』も超おすすめです。まだご覧になっていなかったら、ぜひ。
影丸
2009/08/01 00:51

コメントする help

ニックネーム
本 文
モフセン・アフマルバフ『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない、恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』 フォーラム自由幻想/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる