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zoom RSS 島本慈子『ルポ労働と戦争』(岩波新書)A

<<   作成日時 : 2009/04/08 14:41   >>

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前回のつづき。

武器輸出三原則について知らないひとのために、
簡単に説明しておこう。

まず1967年、佐藤内閣のときに、「共産圏の国」「国連決議で輸出が禁止されている国」「国際紛争の当事国あるいは紛争のおそれがある国」に対しては武器を輸出してはならない、という武器輸出三原則が示された。1976年には、三木内閣がその規制を強化して、「三原則対象地域については武器の輸出を認めない」「それ以外の地域についても武器の輸出を慎む」という政府統一見解を示した。その規制は1983年、中曾根内閣のときに緩和され、「米国に対してのみ、武器技術を供与してもかまわない」という例外が設けられた。(81−82頁)


ちなみに、日本経団連は2004年に武器輸出三原則の見直しを要求している。

ひとを殺すための兵器をじゃんじゃん売って金儲けしようというわけだ。

そこまでして金儲けがしたいということだ。

金のためならひとを殺してもなんとも思わないのだろう。

ナイフの規制については大騒ぎするひとたちも、
この日本経団連の主張には何とも思わないほどの鈍感さを身にまとっている。

ある自衛官はこう述べている。

 その人は、「防衛装備品の調達を見て、強い疑問を感じる」のだという。
 「それは、一体どこで終わるんだろうという強い疑問なんです。どこで歯止めを効かせるのか、と。相手がいいものを持てば、こちらはもっといいものを持たなきゃいけないということで、終わりがないですよね。知り合いに福祉関係の仕事をしている人がいるんですが、その人は約2000万円の予算をとるのに大変苦労をしたそうです。そのときに僕がつい『自衛隊の戦闘機1機は約100億円くらいする』と言ってしまったんですが、その人は黙ってしまった。そして、横にいた奥さんがぽつんと『もったいないねえ』と言いました」
 ――だって、100億円って、派遣労働者の生涯賃金100人分以上ですから。(89−90頁)


北朝鮮政府が1発3億ドルすると言われる「人工衛星」を発射すると、
テレビのコメンテーターどもはこう批判してみせる。

「北朝鮮国民は飢えているのに何というひどい政府なのか」と。

よくある北朝鮮批判のパターンである。

しかし、彼らは同じ批判を自国政府には決して向けない。

貧困で苦しむひとがいて、飢えているひとがいて、
病院に行けないひとがいるこの「美しい国、日本」で、
軍事費に膨大な税金を投入する日本政府を批判するメディアは少ない。

つい先日も昼間の民放ワイドショー番組で、
そうしたおめでたいコメンテーターを見かけた。

では、軍事関連で儲けている企業にはどのようなところがあるのだろうか?

見てみよう。

【2007(平成19)年度 防衛省中央調達企業】

1  三菱重工  3272億円
2  三菱電機  961億円
3  日本電気  717億円
4  川崎重工業  668億円
5  東芝  570億円
6  富士通  442億円
7  富士重工業  374億円
8  小松製作所  334億円
9  IHI  320億円
10 川崎造船   314億円
11 中川物産  216億円
12 日立製作所  198億円
13 新日本石油  162億円
14 コスモ石油  148億円
15 日本製鋼所  139億円

〔出典:『自衛隊装備年鑑2008−2009』朝雲新聞社〕(41頁)


三菱重工が突出しているのが分かる。

民間の航空会社もすでに軍事利用されている。

JALもANAも武器・弾薬・兵士の輸送に協力している。

ANAは、1997年、米軍のチャーター機として利用された。

民間機であっても、米軍によってチャーターされた飛行機は「米軍機」になる。

JALは、陸上自衛隊がイラクから撤退する際にチャーターされた。

日本の民間航空会社もこのように軍事利用されている。

どうしてこのようなことが進んでいるのか?

アメリカ国防総省からの強い要請があったからだ。

ここでも米政府の要求・圧力に屈服する日本の姿が見える。

わたしたちはよく覚えておこう。

こうしたアメリカに従順な政策を実行しつづけている自民党・保守派どもに、
「押し付け憲法」を批判する資格など微塵もない。

ほかにも民間企業が戦争に動員されている。

 2004年に陸上自衛隊がイラクへ派遣されたときは、ロシアの大型輸送機アントノフがチャーターされ、日本からイラクの隣国・クウェートまで、機関銃を備えつけた装輪装甲車などの車両と多数のコンテナを空輸。コンテナの中には個人携帯対戦車弾、無反動砲などの武器が収納されていた。その輸送を請け負ったのは運送業界最大手の日本通運である。ほかにもいくつもの企業が自衛隊のイラク派遣に協力している。防衛省のホームページによれば、旅行代理店ジェイティービー船橋支店は記憶する自衛隊員のクウェートでの宿泊を担当し、円谷プロダクションは「イラク復興支援活動広報ビデオの作成」を随意契約した。(114−115頁)


日本通運。

そして旅行代理店のJTB。

さらにはなんと円谷プロまで。

企業が戦争に利害関係を持ちはじめることで何が起こるか?

彼らは戦争や国際的緊張を望むようになるのだ。

なぜなら、それによって企業の利益はますます増えるからである。

これがいま日本で着々と進行している事態である。

次に紹介する話は、世間ではあまり取り上げられることのないものである。

それは、「天気予報と戦争」のつながりだ。

1941年12月8日、真珠湾攻撃の当日には、中央気象台長が陸海軍大臣から気象管制を命じられた。この日からラジオの天気予報も消え、「台風が近づいても警告はない」「大地震が起きても被害は報道されない」という日々が続いていく。(121頁)


なぜラジオの天気予報がなくなってしまったのか?」

それは、天気予報が重要な「軍事情報」だったからである。

 そういう状態のなか、1942年8月、九州から近畿地方に台風が襲来。不意打ちの台風に襲われて、被害は「死者891人、行方不明267人、負傷者1438人」という甚大なものとなった。翌1943年7月には、再び九州と近畿を台風が急襲し、「死者211人、行方不明29人、負傷者231人」にのぼった。続けて9月にもやってきた台風で、九州と中国地方に「死者768人、行方不明202人、負傷者491人」の大被害が発生した。国をあげて戦争をしている状態のなかでは、災害を防ぐことより、軍事秘密を守ることのほうがはるかに重要であり、災害の死者は「やむをえない犠牲」とみなされたのである……。(121−122頁)


ここからも分かるだろう。

国家は、戦争においては、国民の生命・財産など守ろうとはしないのだ。

軍は、国民の生命を守るものではないのだ。

戦争は、国民の生命や生活を破壊する。

先ほど、企業が軍事利用されはじめていることを取り上げたが、
軍事的緊張や戦争が本当に利益につながると考えてはならないだろう。

かつてノーベル賞を受賞した著名な経済学者スティグリッツは、こう述べているという。

「イラクで戦う兵士たちは、重軽傷者をこれまでになく多数出している。ベトナム戦争と朝鮮戦争では、死亡者ひとりにたいする負傷者の数はそれぞれ2.6人と2.8人だった。第一次大戦と第二次大戦は1.8人と1.6人。しかし、イラクおよびアフガニスタンではその数は7人以上となり、アメリカの歴史上、群を抜いて多い。非戦闘での負傷を含めれば、その割合は死亡者ひとりにたいして負傷者15人にまで上昇する」
 「負傷者数の増加は、生存率の飛躍的な上昇と言い換えることができ、戦場での医療の進歩を証明しているとはいえ、政府の財政に影響をあたえた」(133−134頁)


いまアメリカは「100年に1度」と言われる金融危機に見舞われている。

その原因は「金融の自由化」であり、「サブプライム問題」だとされている。

しかし、それは問題の一面しか捉えていない。

「小さな政府」を唱えながら、
膨大な軍事費を湯水のように使いつづけてきたアメリカの軍事戦略も、
問題の原因を形成しているのである。

「〔湾岸戦争から〕16年以上経った現在でも、アメリカは湾岸戦争で戦った20万人以上の退役軍人にたいして、毎年43億ドルを超える補償金、恩給、障害手当を支払っている。湾岸戦争の障害手当だけで、すでに500億ドル以上も費やしているのだ」
 「アメリカには存命中の退役軍人が2400万人いて、そのうち約350万人(とその遺族)が障害手当を受けとっている。総合すると、アメリカは2005年、過去の戦争の退役軍人に年間の障害給付金として345億ドルを支払っている。そこには、湾岸戦争の退役軍人21万1729人、ベトナム戦争の91万6220人、朝鮮戦争の16万1512人、第二次大戦の35万6190人、第一次大戦の3人が含まれる。それに加えて、アメリカ軍は障害退役手当に年間10億ドルを支払う」(135−136頁)


戦争などしていなかったらまったく支出の必要のなかった、巨額のお金である。

しかし、わたしたちにとってまったく利益にならないと分かっている戦争に、
利益を求めてしまう「どす黒い欲望」のひとびとがいる。

軍需商社・山田洋行事件は、記憶に新しい。

米国で兵器をつくる人々。その兵器を輸入する人々。米国の軍事行動にはひとかけらの疑問も持たず、日米の実力者の間をひらひらと泳いでいく民間人。大手商社の軍需部門で世界の兵器市場をくまなく調査し、「有望な次世代兵器」を防衛省に売り込む人々。大手商社に負けじと、あの手この手で食い込みをはかる小さな商社の人々。そういう商社への融資を担当する金融機関。米軍普天間基地の名護市への移転、米海兵隊のグアム移転にからんで、巨額の建設事業を受注しようとしのぎを削る建設業界の人々。(163頁)


防衛と安全保障の名のもとに、
巨大な利権構造が作り出されているのである。

本書の紹介が長くなったが、
そうした軍事的利権にまみれた日常生活を明らかにしている点で、
この本は必読書である。

ぜひ多くのひとに読んでもらいたい。







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