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zoom RSS 島本慈子『ルポ労働と戦争』(岩波新書)@

<<   作成日時 : 2009/04/06 21:51   >>

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世間ではこんなことがよく言われる。

「戦後約60年、日本は戦争をしないで平和を維持してきた」

次につづく言葉は、改憲派と護憲派では異なる。

護憲派はこう言う。

「それは憲法9条のお蔭である」

改憲派はこう言う。

「しかし、これからはそうもいかない」

戦後の日本は、安全保障をもっぱらアメリカの軍事力に依存してきた。

日本はそのため、経済復興と経済成長に専念することができた。

「戦後約60年、日本は戦争をしないで平和を維持してきた」

これは本当なのだろうか?

端的に言って、これは「ウソ」である。

青森県には三沢基地がある。
ここに駐留する米軍はイラク戦争に出撃している。

神奈川県横須賀基地の米軍も、アフガニスタンやイラクに出撃している。

そして多くのひとを殺害している。

キティホーク打撃群のミサイル巡洋艦はトマホーク巡航ミサイルを発射し、空母を飛び立った艦載機はイラクの空からクラスター爆弾を投下した。(14頁)


クラスター爆弾というのは、
投下されると同時にたくさんの小爆弾が広範囲に散らばるもので、
わざと一定の割合で不発弾になるように設計され、
蛍光色で目立つように着色された小爆弾を子どもたちがさわって
また爆発すると言われている悪魔のような爆弾である。

軽やかなポップスに歌われる港町ヨコスカは、直近の戦争と直結している。(14頁)


日本は、戦争のために基地を提供している。

だから、日本は戦争をしてこなかったというのは「ウソ」である。

しかも、日本の土地を米軍に提供しているということだけではない。

厄介なのは、在日米軍で働く日本人がいて、
彼らにとって米軍基地は雇用を生み出してくれる場になっていることだ。

彼らはどのような形態で働いているのだろうか?

一番多いのが「基本労務契約」「諸機関労務協約」によって働く人たち。雇用形態はいわゆる間接雇用で「雇用主は日本政府、使用者は米軍」という形になっている。その人数は、全国で約2万5000人(そのうち日本政府が賃金を負担している人は約2万3000人)。ちなみに地域別の人数は、@神奈川県=9096人 A沖縄県=9051人 B東京都=2705人となっている(2007年7月末現在)。(15頁)


全国で約2万5000人ものひとびとが、米軍基地での仕事を得ているという。

基地で働くひとびと。

ある労働組合の幹部はこう述べている。

「基地従業員といえども、戦争に賛成だとか、戦争が好きだとかで働いているわけではない。みんな生活の糧を得る場として、あるいは自分の技術を生かす場として働いている。そこだけはね、ぜひわかってください。これは日米安保条約があって、地位協定があって、労務提供をするという日米間の政策・国策のうえでやっていることですから」(30頁)


基地で働く労働者は、軍事力を支えている。

これは現実である。

しかし労働者にも生活がある。

自らの生や家族の生を支えていかなければならない。

ひとびとの暮らしが豊かで、
わざわざ軍事基地で働かなくても済むならば、
基地は地域に必要のないものになるだろう。

戦争を支える必要もない。

だが、労働者を取り巻く環境はますます厳しくなっている。

1998年以降、労働基準法の改定によって、あらかじめ雇用期間を定めた「有期雇用」の労働者が拡大されてきた。1999年には労働者派遣法が改定されて、派遣社員を使える職種が原則自由化された。2003年には再び労働者派遣法が改定され、製造現場への派遣も解禁された。特に2003年の法改定(施行は翌2004年)によって「日雇い派遣」という究極の不安定雇用が爆発的に増えたことは、もう周知の事実である。現在、役員を除く日本の雇用労働者は5181万人(総務省労働力調査2008年4〜6月)。そのうち、有期雇用の契約社員・派遣社員などの非正規雇用は33.4%に達している。(42頁)


派遣労働者たちは、厳しい労働現場で働いている。

千葉県の電子部品メーカーで働く派遣労働者は、
仕事中に被曝したという。

神奈川県の化学機器製造会社で働く派遣労働者は、
作業中に事故にあって死亡したという。

千葉県の化学製品メーカーで働く派遣労働者(女性)は、
工場の火事で死亡したという(43頁参照)。

不安定な労働者たちは、企業に対して自由にモノが言えない。

社員に「在職中はもちろん、退職後も秘密は一切もらしません」という誓約書を提出させる軍需職場が増えているのだ。(78頁)


北朝鮮や中国の言論弾圧に対しては厳しい意見を持つ日本人も、
このような日本における「言論弾圧」「口封じ」には批判を向けない。

ナショナリズムというのは怖ろしいものである。

それに洗脳されてしまうと、自国の不自由には鈍感になるのだから。

2001年9・11同時多発テロ事件の直後。

「テロ対策特措法案」と同時に「自衛隊法改正案」が成立した。

 その改正で、自衛隊法に「96条の2・防衛秘密」という項目が新設された。……防衛秘密を漏らすと5年以下の懲役、秘密漏洩を「共謀・教唆・煽動」すると3年以下の懲役。その刑罰を受けるのは自衛隊員だけではなく、防衛庁と取引のある民間企業の従業員も刑事罰に処せられることになった。
 当時の国会では、「いま、なぜ、防衛秘密の新設が必要なのか」という点が質問された。それに対して、政府は繰り返し「幹部自衛官による秘密漏洩事件があったから」と答えた。(79頁)


自衛官による秘密漏洩事件が大きく報道されたことが何度かあったが、
こういう事件も国家権力にとっては規制強化の絶好のチャンスだったわけだ。

メディアの多くも、秘密漏洩事件のとき、
「政府の危機管理能力が問題だ」として、規制強化のために空気を作った。

それが結果として自衛隊法改正の後押しをしたことになる。

それにしても、どうして民間人まで処罰の対象にしなければならないのだろうか?

理由は簡単である。

アメリカがそう要求していたからである。

2000年10月にアーミテージ・レポートが出された。

そこにはこう書かれているという。

「米国の防衛産業が日本企業と戦略的同盟を結ぶように奨励する」

「日本の指導者たちは、機密情報を保護する法の立法化に向けて、
 国民の支持と政治的支持を得なければならない」(80頁参照)


またしてもアメリカの要求に全面的に屈服したかたちだ。

もし日本に本当の右翼・愛国者がいるなら、
こうしたアメリカの要求に屈する自民党政権こそ打倒しなければならないはずだ。

でも日本にはそんな愛国者はいない。

自称愛国者たちは、尻尾を振ってアメリカに擦り寄るばかりだ。

アーミテージは、
日本国憲法9条が日米同盟の障害になっているとして、
その改憲を堂々と主張している御仁だ。

日本国憲法は押し付け憲法だと言い張る自称ナショナリストたちは、
アメリカによって押し付けられようとしている9条改憲には
尻尾をぷるぷると振って賛成するほどの節操のない連中なのだ。

そしてこの自衛隊法の改正に関してもそうだ。

テロとの戦いを口実にして、
日本政府はアメリカの行なう戦争に積極的に協力している。

では、アメリカが行なう「正義の戦争」とはどのようなものか?

「イラクで最も求められている航空機がプレデターだ。何千マイルも離れたこの基地から操縦し、われわれは世界的なテロリズムの戦争に参加している」。同基地のミハエル・スコット副司令官が力説する。
 兵士は画面上で同機を操り、イラクの各地で見つけた“テロリスト”に対し、誘導ミサイルを発射し、殺傷する。昨年だけでもネリス基地で遠隔操縦した武装プレデターは4万時間、2600回もイラクとアフガニスタンに出撃した。
 戦地から遠く離れた場所にいるプレデターの操縦士は、相手からの報復攻撃を受けることもなく、その日の「イラクでの戦闘任務」を無事に終える。ネリス基地から自宅に帰ると「テレビでスポーツ観戦をしながら、家族と食事を楽しむ」(同基地広報課)といった日常生活を送っているのだ。
 これが米軍の進める「効率の良い戦闘」を実現するための「軍事による革命(RMA)」の一端だ。(以下略)(『琉球新報』2006年3月13日付)(86頁)


おぞましい光景である。

これは、技術上・戦略上は進歩であっても、人間性にとっては悪夢である。(87頁)


まさしく悪夢である。

ひとを殺すための技術はここまで高度化・進歩しているのである。






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