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zoom RSS ノーム・チョムスキー『すばらしきアメリカ帝国』(集英社)

<<   作成日時 : 2008/12/08 23:58   >>

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筋金入りの反戦主義者・ノーム・チョムスキー。

彼のインタビュー本である。

1928年生まれということだから、もう80歳くらいなのだが、
チョムスキーの反骨精神はまだまだ旺盛だ。

すごい。

アメリカ国民の半数は、サダム・フセインが2001年9月11日のテロ攻撃に「直接かかわっていた」と信じています。(13頁)


信じられないことだが、アメリカ国民の半数はそう思い込んでいるという。

政府によるプロパガンダにやられてしまった結果だ。

デマや陰謀論やプロパガンダに洗脳されると、
どうなってしまうのかということの見事なお手本である。

誰でも知っていることだが、
「9.11同時多発テロ事件」と「イラク」は、何の関係もない。

日本人も、ここから学ぶべきであろう。
デマ、プロパガンダ、歴史偽装や陰謀論に洗脳されると、
どうなってしまうのかということを。

ちなみに、日本の学生たちも、
「イラク戦争」と「9.11」を結びつけて理解しているものが少なくない。

アメリカのプロパガンダは、日本の若者にも効果があったということか。

2002年、イスラエル空軍の10パーセント以上が東トルコの巨大な米軍基地に常時配備され、イランとの国境を越えて偵察飛行をしていると報じられました。さらに、アメリカ、トルコ、イスラエルがイラン北部でアゼルバイジャン系の民族主義勢力を立ち上がらせようとしているという、信憑性の高い報道もあります。つまり地域内でイランに敵対するアメリカ・トルコ・イスラエルの枢軸がイランを揺さぶり、最終的には軍事攻撃につながるかもしれないのです。(18頁)


これは、日本ではまったく報道されないことである。

日本のメディアは何をしているのだろうか?

〔第一次大戦のとき〕プロパガンダ作戦は数ヶ月の間に、比較的平和主義的な国民を、錯乱した反ドイツ主義者へと変貌させたのです。アメリカはヒステリーへと追い立てられました。ボストン交響楽団がバッハを演奏できなくなったほどでした。(28頁)


政府によるプロパガンダには、さまざまなものがある。

なかでも典型的なものが、「外国の脅威」を捏造したり強調したりすることだ。

国民の「不安」や「恐怖」を煽るのだ。

それによって、国民の分裂が解消され、一体感を生み出すことができる。

支持率アップにつながる。

国内の問題・不満を外へそらすことができる。

安倍晋三がなぜ北朝鮮の脅威を強調していたのかを考えると、分かりやすい。

もっとも安倍は、自分が首相になるやいなや、
現実の政治がそれほど甘いものではないことを知らされることになった。

ある種のプロパガンダを行うことが、とても簡単になります。40年前の冷戦期に私の子供たちが学校に通っていた頃、彼らは、原子爆弾から身を守るために机の下に隠れなさいとほんとうに指導されていました。(37頁)


机の下に隠れる?

地震じゃあるまいし。

1962年、アメリカの飛行機が南ヴェトナムを爆撃していると報道されましたが、反対運動などありませんでした。アメリカは農作物を全滅させ、何百万もの人々を実質的には強制収容所であった「戦略村」へ追い込むために化学兵器を用いました。これらはすべて公表されていましたが、反対運動は起こらず、人々は声を上げようともしませんでした。ボストンのようなリベラルな街でさえ、反戦集会を開こうとすると学生たちに妨害されたものでした。……反戦運動が起きたのは、戦争が長年にわたってつづいた後で、その頃には、何十万もの人々が殺害され、ヴェトナムの大部分は破壊されていました。(47−48頁)


現在のわたしたちは、ベトナム反戦運動がアメリカ全土で盛り上がったことを知っている。

しかし、じつは開戦直後から反戦運動が大きかったわけではないのである。

チョムスキーは、開戦当初から反戦の声をあげていた。

なかなかできることではない。

だからわたしたちも、
イラク戦争に反対する運動が日本でそれほど盛り上がらなかったことに、
落ち込んでいる場合ではない。

まだまだ、何年もかけて、
反戦・反帝国主義の戦いをつづけていかなければならない。

オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは「帝国主義の社会学」という1919年のエッセイで、次のように書きました。「世界中でなんらかの利益が危険にさらされている、または実際に攻撃を受けていると言われていた。その利益がローマになければローマの同盟勢力のものであり、ローマに同盟勢力がなければ、それは捏造される。利益というような理由づけをするのがまったく不可能であれば、国の誇りが侮辱されたというのだ。戦闘は、いつも合法性のオーラをまとっていた。ローマは常に悪事を企む隣国に攻撃され、ひっきりなしに戦っていることになっていた。全世界は敵の群れで埋め尽くされており、確実に侵略的な彼らのもくろみに対する防御がローマの明白な務めであった」(59頁)


現在のアメリカがまさにこれだ。

そして、ローマが帝国になってしまったのと同じように、
アメリカもいまや帝国になりさがっている。

アメリカはイラクを弾圧している。

イラクだけではない。

世界中の国々を弾圧している。

しかし、アメリカ国内では、それらの行為は「相手のため」として正当化される。

「中東の民主化」という口実で、アメリカはイラクを武力攻撃した。

なぜ弾圧している相手をなんらかのかたちで益しているふりをするのでしょう。さもなければ、自分の道徳性がむしばまれるからです。……帝国的制度においてはほぼ常に当てはまります。知識層が自身の善行を賛美しなかった帝国的制度を探す方が困難です。ヒトラーによるチェコスロバキア解体は、紛争に陥った民族集団に平和をもたらし、慈悲深いドイツの監視下での楽しい生活を保証するという美辞麗句を伴いました。(64頁)


どうだろうか?

これは、まさに、日本の帝国主義者にもぴったり当てはまることではないか。

「日本が行なったのは侵略戦争ではない」

「日本のお蔭で、アジア各国は発展したのだ」

このような恥知らずな自己正当化が行なわれるのは、
自分たちの「道徳性がむしばまれるから」にほかならない。

フランスの国防相がアルジェリアの住民を抹殺することになると言う場合、「文明化の事業」を遂行することになるのです。ナチスでさえ、こうした言葉を用いました。悪行の極みにおいても、同じ感情が見られるのです。日本のファシストが中国を侵略するにいたっては、その背景にあった美辞麗句は涙なくては語れないものになってしまいました。アジアの人々が協力できる地域を創造していた、彼らを共産主義の「無法者」から守り、皆が平和と繁栄を享受できるよう自ら犠牲にするつもりだったというのです。(67頁)


よく覚えておこう。

侵略行為の正当化は、帝国主義者がいつも使う手なのだ。

ユーゴ特別法廷がNATOの犯罪を調査しそうになった瞬間に起きた反応を覚えているでしょうね。カナダやイギリスの弁護士がNATOの犯罪を――それは間違いなく起きました――調べるよう訴えたのです。しかし、アメリカが法廷に対して、アメリカや同盟国側の犯罪を追及するなと警告しました。犯罪とは私たちではなく、ほかの者たちが行うものだということです。(73頁)


だから、世界中のひとは、誰も、
アメリカやイギリスが「正義」の側にいるとは思っていないのだ。

……現在〔2004年2月〕、マイアミの控訴裁判所へもち込まれています。「キューバの5人」という事件ですが、あまり報道されていませんね。(75頁)


アメリカの報道も、相当にひどい状態にあるようだ。

この「キューバの5人」事件の詳細については、本書を読んでいただきたい。

ベネズエラ政府は今、カラカスでの爆弾テロに参加した容疑で告発され国外逃亡した2人の将校の、犯罪人引渡しを求めています。彼らは、アメリカへの政治亡命を申し立てているのです。2人はチャベス政権を数日間追放することに成功した、2002年の軍事クーデターに関与しました。アメリカ政府はクーデターを大っぴらに支持したどころか、イギリスのメディアのまっとうなジャーナリストによれば、唆してさえいたのです。アメリカで軍将校らがホワイトハウスを乗っ取って政府を運営したら処刑されるでしょう。ところがいまだに旧体制のままでとても反動的なベネズエラの裁判所は、将校らを裁こうとした政府の取り組みを拒否しました。復帰した「全体主義的」なチャベス政権も裁判所の決定に同意し、裁判を受けさせませんでした。自由の身となった彼らはアメリカへの政治亡命を狙っており、きっと受け入れられるでしょう。(77頁)


アメリカこそが、世界中でテロを支援しているのである。

エマニュエル・コンスタンの例はどうでしょうか。彼は4000人から5000人ものハイチ人の死について責任を負っています。犯罪人引渡し要求に応答することさえもアメリカが拒否していますので、ニューヨークのクイーンズ区で幸せに生活しています。(77頁)


次に、アメリカの恐るべき計画について書かれているところを紹介したい。

アメリカ政府は、なんと宇宙を所有しようとしているという。

宇宙の所有とは何か? 上層部向け文書にはっきり記されていて、一部はリークされ、ほかは公開されています。核やレーザーを含む強力な兵器を、世界のどこへでもいきなり発射できるプラットフォームを宇宙に配備するということです。(88頁)


まさに映画『スター・ウォーズ』の帝国軍そのままである。

1995年、世界は核戦争の寸前まで行っていたという事実を、知っているだろうか?

ロシアのコンピューター・システムが、ノルウェーの科学ロケット発射を先制攻撃として探知し、作動しました。幸いなことに当時の大統領のボリス・エリツィンが中止を命令しましたが、ロシアのシステムの現状はもっとひどいものになっています。(89頁)


このような悲観的な現実に対して、わたしたちに何ができるのだろうか?

私たちにできることはたくさんあります。投獄され拷問を受けるわけではありませんし、暗殺されたりもしないでしょう。多大な特権と、はかりしれない自由を手にしています。それは無限の機会を意味します。アメリカで講演を行うと必ず、「変化をもたらしたいのです。どうすればよいですか?」と聞きにくる人々がいます。コロンビア南部の農民や、悲惨な抑圧を受けているトルコ南東部のクルド人といった、苦しんでいる人たちからそんな質問が出たことはない。彼らは、どうすればよいかを尋ねるのではなく、実際に行っている活動を話してくれるのです。(95頁)


日本人にだってできることはたくさんある。

わたしもよく若い連中から聞かれる。

「どうしたらいいのですか?」

しかし本当はその「問い」が間違っているのである。

なぜか?

みんながほんとうに聞きたいのは、「あっという間に、苦労せずに解決するための行動は何か」という質問だと思います。……しかし、物事はそのようには運びません。世界に変化をもたらしたいのなら、ある問題に関心のある数人を集め、少し大きな組織をつくり、次の段階では挫折を味わってからやっと前進するという退屈な作業を、来る日も来る日も、徹底してつづけることが必要なのです。(94頁)


世界を一挙に変えてほしいと思ってしまう気持ちも分かる。

せめて日本の政治を一挙に変えてほしいと願うひとがいるのも分かる。

だが、そうした気持ちがじつは「強い指導者」を生み出してしまうのだ。

政治指導者に強いリーダーシップを期待するのは、じつは危険なのだ。

これは民主主義にとっては、明らかに「後退」だからである。

ところで、レーガンがアメリカ国民の共感を呼んだというのは、まったく嘘です。人気の高い大統領ではありませんでした。……在任中のレーガンの支持率はほぼ並みの水準で、ブッシュ2世を除いた後継者全員のそれを下回っています。1992年には、レーガンはリチャード・ニクソンを除けば最も人気のない存命中の元大統領でした。それから彼を神格化するために10年ほどつづいている大規模なプロパガンダ運動が展開され、いくぶんの成功を収めたのです。(100頁)


どうしてレーガンの虚像を追い求めるひとがいるのだろう?

不思議である。

これもプロパガンダのなせるわざだろう。

ワシントンは完璧な人間に、地球上に現れた最もすばらしい人物に仕立て上げられました。北朝鮮では金日成について聞くような話です。(100頁)


ここで「ワシントン」というのは、アメリカ初代大統領の「ジョージ・ワシントン」のことだ。

 ……ムジャヒディン〔イスラム自由戦士〕は主にパキスタンの情報機関によって武器を与えられて訓練され、指揮されましたが、イギリスなど他の国々の支援とともに、CIAの管理、監督下にありました。(108頁)


じつは、のちにタリバンとアルカイダに変身するムジャヒディンを支持したのは、
ほかならぬ「レーガン政権」だったのだ。

……アルカイダが組織ではなくネットワーク……。似通ったイデオロギーをもつものの、大部分は独立したネットワークが非常に緩やかに提携した「ネットワークのネットワーク」だ、と。(111頁)


テロが起きるたびに、
背後に「アルカイダ」の存在が懸念されるとの報道が、よくなされる。

しかし、そうした報道は、
アルカイダを「ネットワークのネットワーク」として捉えていない。

現地の兵士ではなく、ワシントンにいる戦略家こそが真の戦犯です。一連の指令はワシントンに腰を据えた文民から発せられたのです。ニュルンベルクや東京ではそういう人たちが告発されました。もしも私たちが最低限の誠実さを示すつもりであれば、アメリカでも彼らが告発されるべきでした。(129頁)


ニュルンベルク裁判や東京裁判のことである。

……国内で最も信頼性が高いとされるシカゴ外交問題評議会とメリーランド大学国際政策意識研究プログラムによる共同世論調査の結果が、2004年11月の大統領選の直前に発表されました。それがあまりにも驚くべき結果だったため、マスコミは報道すらできませんでした。国民の圧倒的多数が、京都議定書への調印や国際刑事裁判所の承認、国際危機における国連の主導権を支持していたわけですから。過半数が、現在は攻撃の権利として解釈されている先制戦争と呼ばれるものに関して、安保理の拒否権を行使すべきではないと考えていたのです。(133頁)


このアメリカで報道されなかった事実というのは、
日本の保守派にとっても「都合のわるい事実」である。

……国内の問題では、80パーセント前後という圧倒的多数が医療制度の充実を願っています。約70パーセントが教育や社会保障制度に対する援助の増額を求めています。(135頁)


オバマが大統領になって、アメリカはどれだけ変わることができるだろうか?

「ワシントン・ポスト」紙には「キッズ・ポスト」という欄があります。その日のニュースを子供向けに伝えるのです。ヤセル・アラファトの死亡直後、誰かが「キッズ・ポスト」の記事を送ってくれました。大筋では、主要記事に複雑な表現で述べられている事柄を簡単な言葉遣いに置き換えています。ただ主要記事では許されないと思われることが付け加えられていました。「[アラファトは]物議を醸す人物だった。パレスチナの人々には、独立闘争の象徴として敬愛されていた。ところがパレスチナの祖国をつくるためには、現在イスラエルの一部である土地が必要だった。イスラエルの民衆に対して実行した攻撃によって、彼は多くの者から憎まれるようになった」。これは何を意味しているでしょう。「ワシントン・ポスト」紙は、占領地域がイスラエルに属すると子供たちに教えているのです。アメリカ政府やイスラエルでさえ口にしないことです。(150頁)


これぞ、メディア・リテラシーの実践である。

ジョン・F・ケネディが1963年にサダム・フセインのバース党を権力の座に据える軍事クーデターを援助しました。(158頁)


日本にも、ケネディに対する妙な幻想を持っているひとが多いので、
このことは強調しておきたい。

たとえば、私は、アメリカがブラジルくらい民主化できたなら、それは前進だと思います。……ここではイェール大学を卒業した2人の金持ち坊やのいずれかに投票するのです。……
 ハイチはどうでしょう。「破綻国家」だとされているハイチでは1990年に、私たちにとって夢のまた夢である民主的な選挙が行われました。ハイチは非常に貧しい国ですが、丘陵地帯やスラムの住民が実際に団結し、自分たちの候補者を当選させたのです。……アメリカをハイチ程度に民主化するのは、それほど現実味がないとは思えません。(194頁)


ここでチョムスキーがイェール大学卒の「2人の金持ち坊や」と言っているのは、
ブッシュ・ジュニア(共和党)とジョン・ケリー(民主党)のことであろう。

こういう皮肉が言えるのは、アメリカではチョムスキーくらいなのだろうか?




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