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zoom RSS 石弘之『地球環境報告』(岩波新書)

<<   作成日時 : 2008/12/19 23:20   >>

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この本に書かれているのはずいぶんと古いネタになるのだが、取り上げておきたい。

というのも、「金融危機」以来、というか不況になると、
環境破壊の話題が取り上げられる頻度がめっきり減るように感じるからだ。

錯覚かもしれないが、そうでもないような気がする。

「景気回復」をお題目にして、またもや古臭い経済成長モデルが語られる。
その繰り返しである。

だから、環境問題を取り上げる。

この本を読むと、まるで鉛のように重苦しい気持ちになる。
ショッキングな話の連続だからだ。

今や北極のシロクマでさえ高濃度のPCBで汚染され、南極のペンギンからもDDTが検出される。深海底はストロンチウム90、成層圏はフロンガスで汚染されている。汚染源とは無縁の辺地に住む人々でさえ、本来のレベルをはるかに超えた水銀、鉛、カドミウムなどの重金属や放射性物質を体内に蓄積している。(A−B頁)


辺地に暮らすひとたちは、先進諸国の被害者である。
何の責任もないのに、被害だけを一方的に受け続けている。

同時期、エチオピアでも20万人を超える人が飢え死にしていた。そして、82〜85年の最近の干ばつは、3500万人が餓死線上をさ迷い、300万人以上が死んだと推定されるほど悲惨なものになった。いずれも、サヘル地方からエチオピアにかけて被害が集中した。(5頁)


とてつもない数字である。

途上国の人命がこれほどまでに失われ、
先進国とのあまりの非対称性に愕然とする。

土地集中は中南米ではさらに進んでいる。国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、7%の人口が93%の農地を独占している。米国のフロリダなどに住んで、自家用機で自国と行き来する不在地主と、家族さえ養えない零細農民とに、両極化した国々だ。(24頁)


この格差構造を見ておかないと、近年の中南米の変革のうねりの意味は見えてこない。

次に、筆者が指摘する熱帯雨林の大量伐採コネクションについて。

@ 「ハシ・コネクション」
A 「ハンバーガー・コネクション」
B 「コフィン(棺桶)コネクション」

だそうだ。

日本は、一部にせよ、割り箸を東南アジアの熱帯材から作り、米国はハンバーガー用の安い牛肉を生産する牧場をつくるために中南米の熱帯林を焼き払った。そして、欧州は高級棺桶材を西アフリカから伐り出した。いずれも愚かしい資源の浪費の象徴として、欧米の環境保護団体が槍玉に挙げている。(95頁)


割り箸は廃材を利用するから有効利用である、
という意見ももはやありふれたもので、
本当のところはどうなのか分からないが、
棺おけというのはたしかに埋葬文化の地域では需要が大きいだろう。

次のエピソードもショッキングだ。

1975年にはこんな〈事件〉もあった。米国の人工衛星の赤外線センサーが、アマゾンの上空で異常な高熱地域をキャッチした。通常なら火山活動を意味する。米国政府からの連絡でブラジル政府が調査団を送り込んだところ、西独の多国籍企業が牛の放牧場をつくるために、何と40万ヘクタール、つまり東京都の二倍ほどの森林を一度に焼いていた現場だった。(98頁)


東京都の2倍!

『土と文明』の名著を残したV・G・カーターとT・デールは、その中で「人類は地表をわたって進み、その足跡に荒野を残した」と一言で要約している。ナイル川流域、メソポタミア、インダス河口、黄河流域の古代文明の発祥地は、現在すべて砂漠や荒野である。さらに、幾多の文明の花開いた北イラク、シリア、レバノン、パレスチナ、チュニジア、クレタ、ギリシャ、イタリア、シチリア、メキシコ、ペルー……、どこを訪ねても、地表を剥ぎ取られた岩だらけの荒涼とした光景が続く。これらの光景は、文明の名のもとにいかに激しい土壌の収奪が続いたかを、何より雄弁に物語っている。(139頁)


経済を優先するとどうなるか、という教訓である。

その極端な例は、ハイチである。コロンブスが1492年の第一回航海で上陸したとき、その航海日誌にはこんな豊かな自然が活写されている。「この島には険しい山々が連なり、その一つ一つが実に美しい。何千もの種類の木々が山を覆い、天に向かってそそり立つ。まるでスペインの五月のようにある木は花をつけ、またあるものはたわわに実り……」。ハイチの国名も原住民のインディオの言葉で「緑の山々」に由来する。だが、一歩でもこの国に入ると、こんな光景は想像もつかない。(156頁)


現在のハワイもそうである。

常夏の楽園と言われるハワイも、
観光資本によって見事なまでに開発されてしまった。

日本も、東京23区から出される残飯だけで毎日2000トンと、発展途上国5万人分の食べ物を捨てているような飽食を続けているわけにはいかない時代が迫っていることだけは確かであろう。(190頁)


毎日……。

アラスカ最北端のバロー岬の大気観測所で測定を続けてきた、米国大気海洋局のR・シュネル博士はこう形容する。「地上から見ると、数カ所の石炭火力発電所の煙を一本にまとめて吐き出したようで、上空を飛ぶと火山の噴煙に突っ込む感じだ」。この北極スモッグを報告しても、最初は信じる人がほとんどいなかった、という。(192−193頁)


「北極スモッグ」!

この雪と氷の世界に生きるシロクマは、汚染とは縁遠い生き物のはずだった。しかし、「いまでは、大都会にうごめくドブネズミさながらに汚れてしまった」と、沈痛な表情で、カナダ環境省野生動物研究センター化学部長のノーストローム博士は語る。部長は、1981年から、北極圏各地で原住民のイヌイット(エスキモー)が射止めたシロクマの脂肪を集めて分析しているが、「初めは自分でも信じられなかった」という。
 殺虫剤のDDT、HCH(BHCと同じ)、クロルデン、それに電気のトランスなどに広く使われたPCBを含めて、代表的な有機塩素化合物が軒並み検出された。北極点からわずか500キロのところで撃たれたシロクマの脂肪には、67ppmのPCBが含まれていた。環境庁の85年度の環境測定でもっともPCB汚染のひどかった東京湾のウミネコでさえ、最高2.1ppmだった。(195−196頁)


北極のシロクマが、都会のドブネズミのように汚染されているという。

もはや、世界のいかなる場所に棲む生き物も、有機塩素化合物で汚染されていた。(200頁)


化学物質は、排出されても地球に返っていくことができない。
そこが問題なのである。

「TBTは、人間が海洋環境に意図的にまき散らした最強の毒物だ」と、スクリプス研究所のE・ゴールドバーグ教授は指摘する。それは、殺虫剤、殺菌剤、防腐剤、除草剤として、「殺生物能力」が秀れていることを意味する。今でこそ「劇物」に指定されて日用品への使用は禁止されたが、規制前には、おしめカバー、よだれ掛け、下着にまで防カビ剤として使われていたぐらいだ。
 とくに海の中で、船底やいけすの網などに貝類や海草がくっつくのを防ぐ「防汚剤」としての能力は飛び抜けている。船底を何の処理もしないで半年間放っておくと、フジツボやアオノリが付着して船足が遅くなり、燃料費が40%も増えるという。従来の亜酸化銅を使った船底塗料では、二年に一回は塗り直す必要がある。だが、TBT含有の塗料だと、船底に取りついてくる貝の幼生や海草の胞子を殺すので、5〜7年間はその必要がない。
 この塗料のお蔭で年間の燃料費が15%、額にして1億5000万ドルも節約できる、と米国海軍がソロバンをはじくほど経済的効果は大きい。過当競争から経費削減にしのぎを削っている石油タンカーなどでは、今や不可欠の船底塗料だ。魚介類養殖の盛んな日本は、ハマチのいけすなどに同じ目的で大量に使ってきた。(202−203頁)


経済効率を優先すると、どうにもならない。

無気力、軽い精神障害があるといった子供の中には、鉛中毒がかなり含まれているという警告も出されている。(221頁)


これはずいぶんと前に話題になったと思う。

数年来、古代のローマ帝国が滅亡したのは、鉛中毒が原因だったとする説が論争を呼んでいる。鉛の鍋や食器が食べ物を汚染、さらに鉛の混入したワインやシロップを飲んだためだという。確かにローマ人の骨を分析すると、異常に高い鉛が検出される。文明が進歩したというわりには、こういった教訓がさっぱり生かされていない。(212−213頁)


鉛の鍋を自宅で使わないことはできるが、
お店や工場で使っていないかどうかは分からない。

スェーデンが1972年、ストックホルムに国連人間環境会議を招致したのは、この酸性雨の被害を世界に知らしめる意図があった。この会議で、同国代表は「湖水のpHがこのまま下がり続けたら、50年以内に湖沼の半分は死滅してしまう」と、悲痛な訴えをした。
 現在では、国内の8万5000の湖沼のうち、1万8000ではほとんどの魚が死滅、または激減した。(216頁)


現在、原油価格が低下しつづけているというが、
そうすると酸性雨問題もまだまだ繰り返されてしまうのだろうか。

PCBは、人類が長く追い求めた「燃えない油」だった。そのため、絶縁油や潤滑油としての用途が広がった。だが、燃えないために現在、回収したもののその処理に困り果てている。アスベストは「燃えない繊維」だった。これが、電子顕微鏡でしか見えない繊細な針となって大気中をうろつき、肺に突きささって悪性のガンを引き起こす。冷やしても熱しても丈夫なフロンガスがなかったなら、これほど安価な冷蔵庫やエアコンが普及しただろうか。だが、その気体が数十キロ上空のオゾン層を破壊するのを心配しなくてはならなくなった。(225頁)


アスベストの問題は、これからまだまだ深刻化していくのではないか。

米国の製薬メーカーの業界団体によると、米国内で製造される医薬品の売り上げの44%は発展途上国向け(1985年)という。(246頁)


これは意外な数字である。

ともかく、このような深刻な問題があるというのに、
「小さな政府」で「経済成長」を目指そうなどと言っているひとがいるとしたら、
もはや犯罪的であるだろう。




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