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zoom RSS アラン・ブライマン『ディズニー化する社会』(明石書店)

<<   作成日時 : 2008/12/13 12:23   >>

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以前ここで『マクドナルド化する社会』というおもしろい本を紹介した。

今回は、筆者は異なるが、「マクドナルド化」の次を見通そうとしている著作である。

ある意味で、ディズニー化はマクドナルド化が終息するところから始まる。マクドナルド化は均質化と画一化の世界を創り出すことで非難を受けることが多い。ディズニー化の主な基礎となるのは、商品とサービスの魅力を引き出し、マクドナルド化の産物である均質化の浸透した環境で商品とサービスの提供を行う場面の魅力を高めることである。本質的にはディズニー化は消費に関するものである。消費、特に消費傾向を高めるのがディズニー化の原動力である。ディズニー化は、マクドナルド化が画一性と類似性を生み出すところに多様性と差異の創出を求めているのである。均質化した消費経験の日常的凡庸さを、豪華ショーを思わせるような経験と交換するのである。また、ディズニー化が求めるものは、消費者が基本的欲求を平凡なやり方で満たすことを否定し、単なる必要性を超えた消費へと誘うことなのである。(20頁)


ディズニーのビジネス・モデルが成功しているので、
これが世界中に普及していくだろうことは、容易に想像できる。

……ディズニーゼーションは、多様性と選択によって成り立ち、消費者が最高位に君臨するポスト・フォーディズムの世界と密接に結びついていると言える。(21頁)


ポスト・フォーディズムの世界は、ディズニー化する。

問題は、そこで何が起きるのか、ということだ。

では、ディズニーランドについて見てみよう。

ディズニーランドがつくられる以前、遊園地のイメージは決してよいものではなかった。

ウォルト・ディズニーが遊園地建設を企画していたとき、
妻はあんなひどい場所を造るのかと言って失望をあからさまにしたという。(49頁参照)

そこで、ウォルトは徹底してテーマパークをデザインしていく。

ディズニー・テーマパークに表現されている無菌化したノスタルジー志向の歴史観を投影していることに加えて、批評家が指摘するように、ディズニー社は常に企業の引き起こした問題――階級、民族、ジェンダーの問題、紛争などの領域――を省略するのである。(80頁)


ディズニーランドでは、暴力・血の歴史が描かれることはない。

ディズニーは「動物への愛と動物保護の関心を呼び覚ますことは、アニマル・キングダムに微に入り細にわたり表現されている根本的なテーマである」と語る。この言葉は見事に、マクドナルドが後援しているランドがあること、パーク自体が大量のステーキ、バーガー、ホットドッグ、ナゲットを販売していること、以前湿地だった所に建設されていることなどの事実を回避している。(93頁)


貴重な湿地帯を埋め立てておきながら、「動物愛護」を謳うという矛盾。

次に、外部のひとがもっとも知りたいであろうことについて。

つまり、ディズニーランドの「監視体制」のことだ。

犯罪学者クリフォード・シアリングは、
ディズニー・ワールドで家族とともに休暇を楽しんでいた。

彼の娘が踵に水ぶくれができたので、
楽になるために靴をぬいで裸足で歩き始めた。

10ヤードも行かないうちに、そのエリアにぴったり合う白いヘルメット帽をかぶり、白手袋をしたバハマの警察官のような制服を着た警備官が近づいてきた。……(それで、初めは、警備員というより風景用の小道具のような感じで)、裸足で歩くのは「訪問客の安全確保のために」許されていませんと注意してきた。


シアリングは事情を説明した。

ところが、警備員は退場を迫ってきたという。

ディズニー・ワールドの批評家として小説家カール・ヒアーセンは次のように述べている。

  時折現実が介入してくる。万引、露出狂、客の喧嘩、落下事故、スペース・マウンテン・ジェットコースターの致死的心臓発作。このような事件が驚くような迅速さと手際よさで処理される。現場は通常瞬く間に元の状態に戻る。

 したがって、ディズニースタイルの監視は自足に秩序を回復できるのである。
実際、ほとんどの場合、思いもよらぬ事件はほとんど起きない。というのも、アトラクション内で訪問客を迅速に処理できるのは、訪問客がディズニー内の規則を遵守することに慣れているからである。(239−240頁)


徹底した監視システム・監視社会である。

アメリカでは、ディズニー批判はよくあるという。
日本ではほとんど聞かれないが。

その批判の中心点は、「想像力の管理」だそうだ。

ディズニー文学に対しても、テーマパークに対しても、
「想像力の管理」という批判が投げかけられているという。

では、どのように管理しているのだろうか?

・ 産業と企業の価値と業績の称賛と同時に、それらの企業が起こしている環境悪化の無視(言いかえると、この問題が言及される場合、環境問題を克服するための産業の現在までの取り組み、また今後の取り組みとその可能性の観点から述べられる)。
・ 伝統的家族の美徳を強調、現在では一般的になってきている片親家族や離婚家族などの非伝統的な家族形態を無視。
・ 苦闘や人種差別が起こっている小さな町の現実を顧みることなく、想像上の純朴さを連想させるノスタルジアの強調
・ 性差別や人種差別を過去のものとして、また現在の現実生活を反映せずに行われる、限定的な説明(242頁)


ディズニーランドによる監視は、「ゲスト」(訪問客)に向けられているだけではない。

キャストに対しても向けられている。

……警備担当者はまた、キャストの行動をチェックするためにもパークを巡回している。これはテーマパーク従業員が規則や手順を正しく守っているか、また、期待どおり適切に感情労働を行っているか確認するために監視していることを意味する。スタイル基準からも逸脱していないかチェックされる。現場監督官はユニフォームを着用していることもあるし、観光客を装っていることもある。また、ディズニーは、「買物客」、すなわち、観光客を装い、キャストをわざと挑発してディズニー的でない対応を引き起こさせて、それを報告(言いかえると、密告)するための監視員を使用している。……

  ある日私のところに買物客を装った調査員が来ました。私はいつも客には気さくに親しく対応しているので、彼女はいい報告をしてくれました。彼女が誰だったのか今でもわかりません。彼らは入ってきて、品物を2、3買います。その代金はディズニーが彼らに渡すんです。(265頁)


こうした監視による秩序を乱す者があらわれることもある。

 『ピノキオ』に登場する狼がパークを歩きまわっていると、10代の女子のグループが写真を撮りたいから、ポーズをとってほしいと狼に頼んだ。壁を背景にして注意深く狼を立たせ、左右の腕の下に1人ずつ、前に2人しゃがむ。写真を撮る女の子は、「位置について……用意……」と声をかける。しかし、写真を撮ろうとした時、脇にいる女の子がさっと向きを変え、狼の腕を壁に押さえつけたあと、他の2人が立ち上がって、狼の局部に触った。その瞬間に、シャッターを押したのである。(272頁)


まあ、若者ならやりそうなことではある。

しかし、次の例になるといたずらの域を超えている。

また、ミニー・マウスや白雪姫の胸が触られることがあるし、2人の白雪姫がレイプされたと言われている。ディズニーランド・パリでも、子供がぬいぐるみのキャラクターを攻撃したと報告されている。ディズニーランドでは、プルートが子供からパンチをくらって、鼻血を出すことがよくある。ブレア・ベアはナイフで刺されたこともある。
 その他に、ティーンエージャーを含めた若者がドラッグを使ったり、アルコールを飲んだりしている場面に出くわすことも時折あるし、列への割り込みもよく起こる。(273頁)


ゲストのマナー違反にキャストの側も黙っていないらしい。

ひそかに抵抗を試みるというのだ。

そのいくつかを紹介しよう。

ゲストの態度がわるいと、ライド・オペレーターが次のような罰を与えるのだという。

・ シートベルト絞め シートベルトをきつく絞める
・ シートベルト打ち シートベルトで乗車客をきつく打つ
・ グループ分割戦略 グループを乗車直前に分けて、別々の車両に乗せる
・ ハッチ・カバー作戦 潜水艦操縦員は面倒な訪問客が滝の下を通過する時、びしょぬれになるようにする(このアトラクションは廃止されている)
・ 「失礼、手(足、指、腕、脚など)が見えませんでした」策略 ライドの設備の一部で客の手足などをわざと押す(274頁)


まとめよう。

筆者はディズニー化の特徴を次のようにまとめている。

テーマ化、ハイブリッド消費、マーチャンダイジング、パフォーマティブ労働(15頁参照)。

『マクドナルド化する社会』に比べると、
事例がそれほど豊富ではなく、分析も甘いと思う。

しかし「ディズニー化する社会」という見通しは、間違っていない。



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