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zoom RSS 前田朗『軍隊のない国家』(日本評論社)

<<   作成日時 : 2008/10/22 00:04   >>

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アメリカと自民党によって、日本国憲法第9条は骨抜きにされてしまった。

自民党は、自分たちで憲法を破り捨てた。

憲法違反の既成事実を積み重ねてきた。

そのくせに、こんどはルール(憲法)自体を変えるべきだ、
などと言い出す始末である。

万引きを重ねる常習犯が、
万引きを合法化するべきだと言っているのと同じだ。

痴漢の常習犯が、
痴漢を合法化しろと言っているのと同じだ。

彼らはいう。

自衛隊を国防軍にして、「普通の国」になろう、と。

しかし、軍隊のない国家は、いくつもある。

コスタリカのように憲法に戦力不保持を明示している例は少ないが、実際に軍隊を持っていない国家は少なくない。(003頁)


軍隊を持っていない国は世界にいくつあるか、ご存知だろうか?

実に27か国もあるのだ。

本書は、軍隊のない国をそれぞれ紹介している。

旅行ガイドブックにもなっている。

1946年から62年が経過した。この間に、日本政府が第9条を世界に宣伝し、推奨してきたならば、今頃、世界には戦争放棄憲法があふれ、軍隊のない国家は100を数えていたのではないかと想像してみよう。現実は逆であった。日本政府は第九条を捻じ曲げ、空文化することに最大の精力を注ぎ込んできた。(003頁)


日本政府に軍隊を持たせるのは、
アルコール中毒患者に日本酒を渡すようなものである。

日本政府は第九条を空文化してきた。半世紀以上も米軍駐留を続けて、米軍によるアジアでの戦争犯罪に協力してきた。軍需景気に便乗して高度成長を遂げてきた。戦争のおかげで経済発展を享受してきた。自衛隊を創設し、世界有数の軍事力を誇り、海外派兵も強行してきた。「第9条の歯止め」も次々と破壊して、いまや集団的自衛権まで公然と唱えるようになっている。(004頁)


先日、この集団的自衛権に国連で言及したのは、
麻生太郎であった。

戦争絶滅受合法案」が実現すれば、
麻生太郎を戦場に送り込むことができるのだが。

さて、軍隊を持たない国を列挙してみよう。

◆ミクロネシア

ミクロネシア連邦

パラオ共和国

マーシャル諸島共和国

ナウル共和国

キリバス共和国


◆ポリネシア

クック諸島

ニウエ

サモア独立国

トゥヴァル


◆メラネシア

ソロモン諸島

ヴァヌアツ共和国


◆インド洋

モーリシャス共和国

モルディヴ共和国


◆ヨーロッパ

アンドラ公国

サンマリノ共和国

モナコ公国

ルクセンブルク大公国

リヒテンシュタイン侯国

ヴァチカン市国

アイスランド共和国


◆中米・カリブ海

ドミニカ国

グレナダ

セントルシア

セントヴィンセント・グレナディンズ

セントクリストファー・ネヴィス

パナマ共和国

コスタリカ共和国

以上27の国々である。


これを見ると、
「軍隊のない国は普通の国ではない」という考えが
過っていることが分かるだろう。

「軍隊を持っているのが普通の国」という考えが
過っていることが分かるだろう。

そして日本のお隣の国には軍隊がない。

筆者はそう述べる。

「?」と思うひともいるだろうが、事実だ。

ミクロネシア連邦は日本のお隣の国だが、軍隊を持っていない。

では、国防については、どうしているのだろうか?

国防については、アメリカとの自由連合協定により、ミクロネシア連邦の安全保障、国防上の権限はアメリカが有する。……もっとも、米軍がミクロネシア連邦を何から守るのかは不明である。むしろ、アメリカのアジア太平洋戦略ゆえに、自由連合協定を押し付けたというほうが正確であろう。アジア太平洋戦略において、ミクロネシア連邦、パラオ共和国、マーシャル諸島が占める地理的位置と意味が、これら諸国の現代史を大きく左右してきたからである。なお。ミクロネシア連邦内に米軍基地はない。(014頁)


ここの部分は、筆者のユーモアが感じられて、思わず笑ってしまう。

アメリカが何からミクロネシアを守ろうというのか、わたしにも分からない。

何からだろ?

1945年3月1日、衝撃的な事件があった。

覚えているだろうか?

マグロ漁船第五福竜丸がマーシャル諸島のラリック列島北端ビキニ環礁付近で
操業中にアメリカの水爆実験に遭遇した事件である。(030頁参照)

美しい海をもつ太平洋の国々は、欧米の核実験によって汚染された。

米・英・仏3カ国の太平洋地域における核実験総数は327回に及ぶという。(031頁)


日本の右派・ナショナリストたちは、
過去の植民地支配を必死に正当化しようとするが、
そのときに決まって持ち出される言い訳が「白人支配からのアジア解放」だ。

しかし、彼らは太平洋で行なわれた白人による核実験に抗議しなかった。

このことは、しっかりと覚えておこう。

ミクロネシアやパラオには米軍基地はないが、マーシャルには米軍基地がある。自由連合協定により、国防・安全保障の責任はアメリカに委ねられている。このためにマーシャルは自前の軍隊を保有していない。ここでも米軍がマーシャルを何から守るのかは不明であり、むしろアメリカの軍事戦略にとってマーシャルの土地利用が不可欠とされたという方が正確である。(035−036頁)


ふむ。

アメリカはマーシャルを何から守ろうとしているのだろうか?

これも謎である。

……ミクロネシアの島々に住む島民……。日本の支配から米国統治に置きかわってまもなく、諸島民は「疑似核戦争」の恐怖の中での生活を余儀なくされた。広島原爆の1000倍もの破壊力をもつビキニ島の水爆など、実に66回もの核実験が行われ、弾道ミサイルやスターウォーズ計画の実験地にされた。(036頁)


日本の保守系政治家たちは、
北朝鮮の核実験には反発するものの、
こうした欧米による野蛮な行為については黙認してきた。

ちなみに、太平洋の国々は、かつて日本が侵略したところでもある。

当時のことを知るひとの証言を聞いてみよう。

「ブタリタリ、タラワ、アベママ、バナバの日本による占領は、人々に個人としても集団としても多大の影響を及ぼした。占領された島でも占領されなかった島でも、恐怖が一般的となった。占領された島では、日本軍は、物理的手段を用いて人々に日本軍が望む労働をさせた。懲罰は厳しかった。たとえばバナバでは、3人が鶏を取ったかどで首を切られ、見せしめとして全員にその恐ろしい光景を目撃させられた。ブタリタリでは裸にされて木につながれ鞭打ちされた者もいる」。(054頁)


これが「アジア解放」の正体である。

これが「大東亜共栄圏」の正体である。

第二次大戦が始まると、バナバを占領した日本軍は、無抵抗なバナバ人の5分の1を殺害し、残りを強制労働に使役した。……終戦2日後、戦時中に行った戦争犯罪の発覚を恐れた日本軍は、不法処刑の目撃者であった約200人のキリバス人とトゥバル人労働者たちを岸壁に集め、機銃掃射と銃剣で殺害した。(055頁)


ネット上で日本の侵略戦争を正当化している連中にも、
同じ目にあわせてやりたいという気持ちになるだろう。

さて、次はヴァヌアツ共和国について。

2006年7月28日、イギリスのシンクタンク「ニューエコノミックス財団(NEF)」と国際NGO「地球の友」は、世界でもっとも地球に優しく、幸せに暮らす国はヴァヌアツ共和国であるとする報告書を発表した。独自の「幸せ地球指標(HPI)」に基づいて、世界178カ国のランキングを行なった初の報告書である。HPIは、各国における世論調査に依拠した「暮らしの満足度」に「平均寿命」を積算し、二酸化炭素排出量などをもとに数値化した「環境への負荷」で割って算出したという。NEFの説明によると、「自然環境を害することなく、どれだけ幸せに暮らしているかを示す新しい指標」だという。なお、日本は95位、アメリカは150位、最下位は独裁政権下で貧困にあえぐアフリカのジンバブエである。(096頁)


すばらしい。

さすが「世界のヴァヌアツ」。

それに比べて、世界の178カ国中、第95位の日本。

「中の下」である。

もっとひどいのがアメリカだ。

次にリヒテンシュタインについて。

リヒテンシュタインは、戦後、ナチスとの関係を疑われたとき、
独立歴史委員会を設置して徹底的に真相を調査したという。

独立歴史委員会の徹底調査によって、ナチス期におけるリヒテンシュタインの役割の全貌が明らかになった。結論として、総体としてリヒテンシュタインは対ナチス協力をしなかったことが確認された。ユダヤ人難民の亡命にも人道的に協力していた。(163頁)


このような調査を行なったリヒテンシュタインの意義とは何だろうか?

 第一に、疑惑が生じると政府はただちに委員会を設置して、真相究明の努力を行った。
 第二に、調査にあたった独立歴史委員会であり、そこにはリヒテンシュタインだけではなく、スイス、オーストリア、そしてイスラエルの歴史家が加わった。委員会の活動と調査結果は公開されている。
 第三に、対ナチス協力をしなかった事実を確認した上で、なおかつ、政府はナチスのような歴史の悲劇を繰り返さないために、人種主義やユダヤ人差別を克服するためのプロジェクトを始めた。
 自らの歴史に責任を持ち、過去に向き合う姿勢に学ぶ必要があるだろう。(163頁)


日本が見習うべきことである。

次にコスタリカについて。

コスタリカが常備軍を廃止したことについては、よく知られている。

ここで重要なのが、司法のチェック機能がきちんと働いていることだ。

2003年3月のイラク戦争に際して、コスタリカ政府は、アメリカを中心に組織された有志連合に加わった。コスタリカの外交の柱は対米協調だからである。これに対して、市民、弁護士協会、護民官がコスタリカ最高裁判所憲法法廷に提訴した。憲法法廷は、2004年9月8日、7人の裁判官全員一致で、政府の行為を憲法違反であり、永世・積極的・非武装中立宣言、国際人権規約に違反し、無効であるとした。これによって有志連合のリストからコスタリカの名前が削除された。コスタリカの永世中立が再確認された。(241頁)


国際人権規約も根拠にしているところに、特徴がある。

これも日本が見習うべきところだろう。

なにせ日本の権力は三権分立になっていないのだから。

小学校の教科書で「三権分立」を子どもに教えているが、
実際には日本の権力機構は「三権分立」ではなく「三位一体」である。

コスタリカ憲法の規範と現実の意義について、吉田稔は次のように述べている。
 「@対外的侵略を誘発するあるいは他国の戦争に巻き込まれることを防止することである。コスタリカや日本は紛争が多発する世界にあって、限界はあったにしても基本的には侵略を受けたことはなく、国民を戦争に駆り立てることもなかった。“武装すれば侵略されないというのは神話”であって、武装した国の間で侵略があり、戦闘は行われる可能性は高い。Aもし紛争が国に及んだ場合に、軍隊を持たないことが被害の拡大を防ぎ被害を少なくすることができる。核兵器、兵器の高度化、精密化が進んだ現状にあって、戦闘行為は、大量殺戮を発生させるし、その被害は世代を越えて受けるであろう。“軍隊の存在は被害を拡大する”であって、防止したり少なくはしない。B軍隊の創設、維持、増強には金がかかる。それで儲けている、利権を得ている企業や人がいる。名誉や地位や支配欲を満足させている国や人がいる。すなわち、“戦争や軍隊で得をする輩がいる”のである。そして他方で軍事費は国の予算を食い、圧迫する。軍隊を廃止すれば、その軍事費を人類の環境問題の解決、飢餓に苦しむ人々、国民の生活向上のために使うことができる」。(241−242頁)


軍隊が国民の生命・財産を守るなどという考えは、「神話」である。

ここで筆者が提案していることが、注目される。

それは、「無防備地域宣言運動」というものである。

一つには、地域で第九条を活用することである。無防備地域宣言運動はその好例である。
 無防備地域宣言は、国際慣習法として認められてきた無防備地域の設定であり、1977年のジュネーヴ諸条約第1追加議定書第59条にも根拠規定がある。武力紛争から民間住民を守るために、国際人道法の軍民分離原則を具体化した規定の一つである。要するに軍隊のない地域であり、無防備地域を攻撃すると戦争犯罪とみなされる。(253頁)


政府・自民党が戦争のための準備をつづけるならば、
わたしたちは反戦のための根拠地を各地に築くことができるというのだ。

おもしろい本だった。












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伊藤真『高校生からわかる日本国憲法の論点』(トランスビュー)F
改憲派のターゲットは、やはり9条だろう。 ...続きを見る
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2009/08/25 00:23

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