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zoom RSS 池内了『疑似科学入門』(岩波新書)

<<   作成日時 : 2008/08/27 17:41   >>

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およそ非合理的な妄想・思い込みの類いが、日本全国を覆っている。

あるものについては、カルトと呼んでもよい。

古くからあるのは、お神籤、絵馬、占星術、干支占い。

手相占いに骨相占い、顔相・人相占い、そして足の裏占い。

この「足の裏占い」は、教祖が逮捕されたことでも有名だが、
この教祖は番組「笑っていいとも!」にも出演していたこともあって、
テレビ局の責任は大きいと言わざるをえない。

それにしても、
「最高ですかぁー?」と信者に叫んでいた教祖が、
警察に逮捕・連行された情けない姿は、
見る者にとっては何とも「最高」であった。

連日占いの女性がテレビに登場し、いかにも全てを見通しているかのように発言している。あるいは、スピリチュアル・カウンセラーと称する男性占い師が人気を得てテレビや週刊誌を占領している。これを単なる見世物だと無視していては危険である。少しずつ人々の頭に刷り込まれ、そのご託宣を待ち望むように洗脳されていく恐れがあるからだ。(5頁)


女性占い師というのは、細木数子のことであろう。

あの、時代錯誤の価値観を吹聴していた、やたらと威張ったひとである。

スピリチュアル・カウンセラーというのは、江原啓之のことであろう。

オウム真理教事件を誰も反省などしていないということの、
これは何よりの証拠である。

同じことを繰り返しているのだから。

筆者もこう述べている。

テレビ局には「懲りない面々」が多数おられるらしい。オウム真理騒動の後しばらくは疑似科学の番組がほとんど放映されなかったのだが、数年経つと性懲りもなくまた登場し始めたからだ。今では、占い、スピリチュアル、UFO、透視などの超能力の怪しげな番組が花盛りである。(115頁)


非合理的な妄想は、他にいくらでも挙げることができる。
あまりに多くて、めまいを覚えるほどだ。

筆者が挙げているのは、たとえば次のようなものだ。

血液型占い

予知夢

テレパシー

透視

超能力

オーラ

サイキック

幸運グッズ

姓名判断

タロット占い(水晶占い)

念力

背後霊



ポルターガイスト

UFO

などなど。


ふむ……、ずいぶんとたくさんあるのだな。

これらは、以前からあったものだが、
次に挙げるのは新しく登場してきたものである。

一見、科学的な装いを見せているのだが、
これらも非科学的で何の根拠もないものばかりだ。

アルカリイオン水

クラスター水

還元水

磁気処理水

πウォーター(別名、生命水)


アルカリイオン水は、人体が酸性になると健康に悪いから、逆のアルカリ成分を多く取り込めば体に良いという印象を与えて成功した。還元水も酸化が悪いという先入観を逆手にとったものだが、果たしてどれくらい効果があるのだろうか。クラスター水は何がクラスターしているのか定かではなく、πウォーターは何がπなのかさっぱりわからない。言葉尻だけ科学的にして信用させ、牛乳より高い水が売られているのは本末転倒しているような気がする。疑似科学が商売になる好例だろう。(50頁)


先日わたしが紹介した「水からの伝言」も、ここで取り上げられている。

磁気ネックレスもよく知られた商品だが、
これなども効果が科学的に実証されているわけではない。

筆者は、「プラシーボ効果」だと述べている。

他にもまだまだある。

ホメオパシー

マイナスイオン

アガリクス

納豆ダイエット


わたしは、これらの非合理的で怪しげなもののリストのなかに、
ナショナリズムと拝金主義と歴史修正主義も加えたいところだ。

ところで、以前、納豆ダイエットが流行ったとき、
スーパーの棚から納豆が一斉に消えた。

その前の「スキムミルク・ダイエット」のときも、
スーパーの棚から「スキムミルク」が一斉に消えた。

納豆ダイエットが番組スタッフによる捏造だったと判明してから数日後、
わたしはスーパーで、両手に大量の納豆を抱えてレジに並ぼうとしている
若い女性を見かけたことがあった。

彼女は、納豆ダイエットが嘘だということを、まだ知らないのだろうか?

そう思って、教えてあげるべきか、そっとしておいてあげるべきか、
相当に迷ったのを覚えている。

「健康食品」は医薬品ではないから動物実験や人間を使った治験をしなくてもよい。そのため、果たして本当に効能があるかどうか不明である。(70頁)


効果が不明なものでも、
ひとびとは「健康ブーム」に乗って購入する。

根拠のないことを信じ込ませるのに、じつは「神話」の力が効果的である。

「原子力の安全神話」


これは原子力は安全だ」という神話である。

「民営化神話」


これは、民営化路線こそが経済成長につながるという神話である。

「神経神話」


この「神経神話」は、筆者によると、
「右脳教育」「早期教育」「3歳までの豊かな環境」という3つの神話を指すらしい。
幼児の脳の発達に関する「神話」である。

わたしなら、
「単一民族国家の神話」や「経済成長の神話」なども挙げたいところである。

「先進国日本という神話」もあるだろう。

「最近の若者は……神話」というのもある。

ところで、この本には、ある重要なことが記されている。
ほとんどのメディアが報道しようともしていないことである。

それは、拉致問題のことである。

横田みぐみさんの遺骨が北朝鮮から送られてきたとき、二つの機関に鑑定が出され、一つはDNAが検出できなかったが、もう一つは横田めぐみさんのものではないと断定した。果たして、高温で焼かれた遺骨から本当にDNAが採取できたのかどうか疑問が残る。(56頁)


じつは、専門家の間でも、
横田めぐみさんの遺骨と断定された「DNA鑑定」に対しては、批判が多い。

常識的に見て、
焼かれた遺骨から「DNA」が採取できるはずはない、と考えられているからである。

ところが、どの専門家も公にこのことは発言できない。
なぜなら、「言えない空気」が日本を覆っているからである。

しかし、専門家の多くは、鑑定結果を信じてはいない。

誰もが信じていないのに、誰もそのことが言えないのだ。

なんだか、日本国民の多くが天皇を崇拝しているわけではなく、
個人的には悪口も軽口も言っているのに、
公には誰も天皇批判ができない風潮ときわめて似ている。

その点を突いて雑誌『ネイチャー』が何度もデータの公開を要求したが、政府や警察は詳細をいっさい明かさないままであった。専門家の間では、DNA検出はできないというのが常識だったのに、誰もクレームをつけなかった。政治が関与すると科学的真実も曖昧にされてしまうのだ。こうなると遺骨のDNA鑑定は疑似科学に転落したと言わざるをえない。(56頁)


『ネイチャー』は、世界的にもっとも権威があると言われている科学雑誌だ。

その『ネイチャー』からの問い合わせに、どうして答えないのだろうか?

正々堂々と答えればよいではないか?

ちなみに、この問題のある鑑定結果を出したのは「帝京大学」である。

そして、鑑定不可能と結論づけたのは「東京歯科大学」である。

なるほどね。

それにしても、
「帝京大学」ならそういうこともありそうだと思わせてしまうのは、
一体何なのだろうか?

ともあれ、筆者はなぜこうした非科学的な傾向を危惧しているのだろうか?

笑って見逃すことはできないのだろうか?

何より私が恐れるのは、非合理を安易に許容することで人間の考える力を失わせているのではないか、ということである。「我思うゆえに我あり」と言ったデカルトの近代精神がむしろ現代において置き去りにされ、ある言説をひたすら信じる、お上のご託宣を待つ、世の中の大勢に従う、というような雰囲気が強くなっているような気がする。考えることは他人に「お任せ」し、自分はそれを信じ拍手を送るだけの態度が蔓延していると感じられるのだ。その根底には、非合理を警戒するどころかむしろおもしろがる雰囲気が強くなったことがあるのではないだろうか。(A頁)


なるほど。

判断力を失い、権威や大勢に従順な人間を作ってしまう。

このことが問題なのである。

情報が溢れているかに見える現代、実は真の情報は少なく、パフォーマンスを駆使して世論を操作しているのである。その意味では、「劇場化」と「観客民主主義」が両輪となって均質社会を生み出していると言えるだろう。(A−B頁)


批判精神・懐疑精神を失ったとき、
ひとびとは「劇場型政治」に翻弄され、ファシズムへと流れてゆく。

小泉純一郎に圧倒的な支持を与えたひとびとは、
こうした非合理的な心性を共有していたということであろうか。

筆者は最後に、処方箋として、「懐疑する精神」の重要性を説いている。

ところで、自然科学系の研究者による本は、
どうしても分析が甘いので、物足りない印象はぬぐえない。

ひとびとが信じ込んでいることが非合理的であることはその通りだが、
なぜそのような傾向が強まってしまうのかという問題は、依然残されたままである。

「懐疑精神」が欠如しているから、と指摘するだけでは、
考察としては不十分である。













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