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zoom RSS レジス・ドゥブレ/樋口陽一/三浦信孝/水林章『思想としての〈共和国〉』(みすず書房)

<<   作成日時 : 2008/06/08 03:02   >>

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1989年のフランスで、いわゆる「スカーフ事件」が起きた。

とても有名な事件だが、知らないひとのために説明しておこう。

パリ郊外のクレーユ町の公立中学校で3人の女子生徒がイスラムのスカーフをかぶったまま教室に入ろうとしたので、校長がスカーフをはずしてから教室に入るように指示した。フランスの公立学校は、ライシテ(非宗教性)の原理によって、学校空間からあらゆる宗教的サインを排除しているからである。3人の女子生徒は、スカーフをはずすことを拒否したため図書館での自習を命じられた。(本書31頁)


これが「スカーフ事件」の概要である。

当初この出来事は、フランスにおける宗教弾圧として受け取られた。

イスラム教徒をはじめ、他の欧米諸国からも批判があがった。

日本でも、イスラム教に対する不当な弾圧だという受け取り方が多かった。

しかし、そうした理解はじつは早計である。

というのも、フランスの公立学校で禁じられていたのは、
イスラム教徒のスカーフだけではなく、
キリスト教徒の十字架も禁止の対象だったからだ。

この「スカーフ事件」をきっかけにして、
2003年フランスでは宗教シンボル禁止法が成立した。

これによって、公立学校では「宗教への帰属をこれみよがしに示す標章や服装」を
明確に禁止することになった。

なぜフランスでは、このような法律がつくられるのか。

それは、「政教分離」の原則を徹底させているからである。

本書は、冒頭のレジス・ドゥブレの論文
「あなたはデモクラットか、それとも共和主義者か」ではじまる。

この「デモクラットか、共和主義者か」という二者択一は、
わたしたちの感覚からすると奇異に感じられるのではないか。

デモクラットとは、民主主義者という意味である。

共和主義というのも、通常の理解では、
民主主義とほぼ同じような意味で捉えられている。

あるいはせいぜい君主のいない政治体制を共和制としている程度だろう。

このような消極的理解からすると、
日本は天皇制がある限り共和制ではないが、
天皇制が廃止されれば共和制になる、ということになる。

じつは、共和主義とは何かというテーマは、けっこうむずかしい。

それほど単純ではない。

とりあえず、ドゥブレのいう意味は、
デモクラシー=アメリカ流のリベラル・デモクラシーであり、
共和主義=フランス流のリパブリカン・デモクラシーであると受け取っておいてよい。

ドゥブレはこの論文で、フランス流の共和主義の伝統である
「政教分離」を賛美し、「スカーフ事件」での校長の対応を擁護したというわけだ。

これを読むと、日本で天皇制が廃止されたとしても、
それだけで自動的に共和主義になれるわけではない、
ということがよくわかる。

この論文の後、ドゥブレのインタビュー、
日本人の学者3名による議論などが掲載されている。

この本は、ひじょうにおもしろい。

超おすすめ。

なにしろ、訳注がとてもていねいに書かれている。

フランス知識人の政治的配置についてもわかりやすく解説している。

ある程度の前提的知識がないひとにはつらいかもしれないが、
共和主義とは何かというテーマに関心があるひと、
政治・文化・哲学に関心のあるひとには、おすすめする。













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