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zoom RSS 長尾龍一『法哲学入門』(講談社学術文庫)

<<   作成日時 : 2008/06/23 17:22   >>

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法とは何か。何のために法があるのか。

これは、初心者向けに書かれた、
豊富な事例による軽快なエッセイで楽しませる本である。

これも友人が紹介してくれた。
(T同志、ありがとう。)

本書のタイトルは堅苦しいが、
内容はエッセイ集だと思っていい。

わが日本には、かつて聡明な総理大臣がいた。

彼は、ほとんど本を読まず、料亭が大好きで、
消費税率以下の支持率しかなかったことで知られている。

そう、彼の名を「森喜朗」という。

彼には、こんなエピソードが残されている。

米合州国大統領クリントンが来日したときのことだ。

会見の冒頭、挨拶のつもりだったのか、こんなことを森は言った。

Who are you?

これはたぶん「How are you?」の間違いなのだろうが、
いきなり「誰だ、あんたは?」と問われたクリントンはジョークで返した。

I'm Hillary's husband.

機転がきいているかな。

すると、わが森首相(当時)は、 なんとこう返したという。

Me, too.

(本書270頁参照)

真偽のほどは定かでないが、彼ならこれくらいのことは言いそうだ。

なにせ「IT革命」の「IT」を「イット」と読んだくらいの御仁だ。

私たちは子どもたちに教えていかなければならない。

こういうひとになってはいけませんよ、と。

そのための一歩として、本書を読んでみるのもいいだろう。

古代ギリシアから現代まで、豊富な事例が楽しめる。

昔ギリシャにメトロドーロスという哲学者がいた。彼の学説は「私は何も知らない。『私が何も知らない』ということさえ知らない」というものであった。こういう人物にどうして弟子がつくのか不思議であるが、彼には弟子や孫弟子がいろいろおり、そういう孫弟子たちの中にピュロンという人物がいた。彼の学説は、「何ごともそれが正しいか正しくないかわからない」というものであった。彼はこの哲学に忠実に生き、生きているほうがいいのか死んだほうがいいのか、けがをするほうがいいのかしないほうがいいのかわからないというので、歩き出したら向うから馬車が来ようが猛犬が来ようが、向うが絶壁であろうがまっすぐ歩いた。それで、彼が出歩くときは、友人がついて歩いて危険から護ってやらなければならなかった。
 彼の先生はアナクサルコスという人物であったが、ある日ピュロンが表を歩いていると、先生が池に落ちてもがいているのに出喰わした。しかし、彼は、助けたほうがいいのか助けないほうがいいのかわからないので、そのままそこを通りすぎた。他の弟子がかけつけて先生を助け出し、「いかんじゃないか、ピュロン。先生の危急の時に」と叱った。ところが、そこは哲学者のこと、アナクサルコス先生は「いやピュロンのような者こそわが真の弟子だ」といってほめたという。
 ピュロンは都市国家エリスの市民であったが、市民たちは彼を非常に尊敬し、市会は、以後哲学者からは税金を免除するよう決議した。彼は90歳の長寿を保った。(39−40頁)


じつは、古代ギリシアには、この類いのおかしい逸話がたくさんある。

興味のある方は、いくつか出版されているエピソード集を読んでみてほしい。

次に、「国民性」を扱ったジョークだ。

「象について」という論文を課されたところ、フランス人とイギリス人は早速動物園で象を観察し、各々「象の恋愛」「象飼育の収益性」という論文を書いた。ドイツ人は動物園でなく図書館に行って万巻の書を読み、「象の本質」という論文を書いた。日本人も図書館に行って万巻の書を読み、「ドイツにおける象本質論の系譜」という論文を書いたという。(44頁)


「国民性」を実体化する発想には警戒しないといけないが、
このジョークには思わずくすっと笑ってしまうところがある。

また、日本の昔話に関するエッセイもおもしろい。

筆者は、「桃太郎」を取り上げて、
鬼が島で鬼退治をした「桃太郎」の行為を、
「強盗からの強盗」であると断罪し、
せめて鬼の財宝をもとの所有者に返還すべきであったと論じている。
(遺失物法違反)

また、「かぐや姫」についても、次のように批判している。

彼女〔かぐや姫〕は、自分が月世界に連れ戻されること、したがって地上の男とは結婚できないことを十分知りつつ、5人の貴公子を手玉にとり、散々に辛酸を嘗めさせ、ひどい屈辱を与え、それで落命した者さえいる。これこそ自分の美貌を鼻にかけたサディズム以外の何ものでもない。(153頁)


この本の楽しさの一端が分かっていただけるのではないか。















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