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zoom RSS 前田哲男『新訂版・戦略爆撃の思想』(凱風社)・続

<<   作成日時 : 2008/05/30 20:23   >>

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フランスの月刊誌『ルモンド・ディプロマティーク』(2001年11月号)に掲載された
次の記事(編集長イニャシオ・アラモネ執筆)を読んでほしい。

9月11日だった。意を決した数人のパイロットによって異常な針路を取った飛行機が、彼らの憎む政治体制のシンボルを破壊すべく、大都市の中心部に向けて突進した。瞬時の爆発、四方に飛び散る破片、地獄の轟音のなかで崩壊する建物、愕然として瓦礫のなかを逃げまどう人々。そして、この惨劇を生中継するメディア……。


これを読んで、みなさんは何を思い浮かべただろうか?

おそらく2001年に起こった「9・11同時多発テロ事件」だろう。

ニューヨークのワールド・トレード・センター・ビルにジャンボジェット機が
突っ込んだあの衝撃的な映像を思い浮かべたのではないか。

しかし、この記事は「9・11同時多発テロ事件」を描写したものではない。

つづきを引用しよう。

2001年のニューヨークではない。1973年9月11日、チリのサンティアゴだ。アメリカの後押しで、ピノチェト将軍が社会主義者サルバドール・アジェンデに対してクーデターを起こし、空軍が大統領官邸を集中砲火したときの模様だ。数十人が死亡し、以後15年にわたる恐怖政治が始まった。

(以上、引用は本書564頁より)

「9・11」は、アメリカにだけあったのではない。
「9・11」は、チリにもあったのだ。

ニューヨークのテロ事件に巻き込まれた無実の被害者に同情するのは当然であるにしても、アメリカという国までが(他の国に引き比べて)無実なわけではないことは指摘せざるをえない。ラテン・アメリカで、アフリカで、中東で、アジアで、アメリカは暴力的で非合法な、そして多くは謀略的な政治活動に加担してきたではないか? その結果、大量の悲劇が生まれた。多くの人間が死亡し、「行方不明」となり、拷問を受け、投獄され、亡命した。


著者の前田哲男は、
ボードリヤールの「それを実行したのは彼らだが、望んだのは私たちのほうなのだ」
という言葉を引いて、
「無垢のアメリカに対するいわれなき攻撃ではなかった」と結んでいる。(530頁)

なお、『ルモンド・ディプロマティーク』のこの同じ文章を、
憲法学者・水島朝穂も「『テロ特措法』の正体」のなかで引用している。
(加藤周一・井上ひさし・樋口陽一・水島朝穂『暴力の連鎖を超えて』岩波ブックレット)

「戦略爆撃の思想」は、このふたつの「9・11」にも見ることができる。

2006年、中国の重慶に住む40人が、東京地方裁判所に訴えを起こした。
重慶爆撃の謝罪と補償を求めて。

これに呼応して、「重慶大爆撃の被害者と連帯する会・東京」は、
次のように述べている。

◆日本は「戦略爆撃」の作戦名を公式に掲げ、組織的・継続的空襲を実施した最初の国である。
◆日本の66都市がナパーム弾攻撃にさらされるより5年以上も前から、重慶市民の頭上に、200回を越す間断ない空中爆撃をおこない、2万余の死傷者を出す痛切な体験を強いた。
◆その歴史責任に思いを馳せることなく、日本人は空襲被害者として、東京空襲と広島"からの道"のみを心に刻み、そこに至る"までの道"を無視して長い戦後をすごしてきた。
……(中略)……
「ゲルニカ」から60年経った1997年3月27日、ドイツのヘルツォーク大統領は、ゲルニカ市と市民に対し、「この残虐な行為の犠牲者は、非常な苦痛にさらされた。わたしたちはドイツ空軍による爆撃とそれが招来した恐怖をけっして繰り返さない。いま、両国民の間の和解と将来の平和を呼びかける」と謝罪しました。また、ドレスデンを壊滅させたイギリスは、2000年の「空襲55周年記念式典」にあたり、エリザベス女王の名代ケント公を派遣して、謝罪と破壊された聖母教会の再建費用負担を申し出ました。日本政府は、謝罪はおろか事実の認定すらしていません。(566−567頁)


日本政府は、また同じことを繰り返すつもりなのだろう。

無差別殺戮を反省しない日本は、また歴史を繰り返すにちがいない。

責任をとろうとしないならば、
他国から同じことをされたとしても文句を言う資格はない、
と思われても言い返す言葉はあるまい。

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