フォーラム自由幻想

アクセスカウンタ

zoom RSS 米本昌平『バイオポリティクス』(中公新書)

<<   作成日時 : 2008/03/06 03:19   >>

トラックバック 0 / コメント 0

近代資本主義は、自然を商品化し、徹底的に消費した。

森林を破壊し、漁業資源を枯渇させ、希少な動植物をも商品にしてしまった。

ペットショップでお金を払ってイヌやネコを買うことに、
抵抗感を持つひとはほとんどいなくなった。

中南米やアフリカ産のめずらしい動物も、値段のついたモノになった。

資本主義はいま、人体という「自然」まで商品化しはじめている。

「外なる自然」を開拓し尽くした資本主義は、
「内なる自然」を新たなマーケットとして開拓しはじめている。

規制緩和、経済の自由化を求めた人びとは、
このことをどう考えているのだろうか。

本書では、遺伝病スクリーニングやES細胞研究の問題も取り上げているが、
ここでとくに注目したいのが、「人体の商品化」だ。

今、世界が直面している問題は二つある。一つは、先進諸国が成立させた臓器移植法が対象としていなかった皮膚・骨・軟骨・腱・心臓弁などの利用価値が大きくなり、この採取・保存・加工・分配をどう管理するかという問題、もう一つは世界的に移植用臓器の不足が甚だしくなり、21世紀に入って国際的な臓器移植ツアーが一段と増えていることである。前者を促進する要因が、アメリカ型自由主義であり、後者を生み出している大きな要因が、先進国と非先進国間に横たわる経済格差である。(182頁)


世界の格差構造を利用するかたちで、人体の再利用・商品化が進行しているのだ。

アメリカでは、ひとが亡くなると、あるNPOのメンバーが遺族の前に現れ、
「火傷や怪我で苦しんでいる人を助けるため、
皮膚や骨の一部をいただけないでしょうか」と申し出ることが多いという。

遺族は、無償の善意として同意することがあるそうだが、
その後、摘出されたヒト組織は、
美容整形やその他の目的で利用されることも少なくないという。

たとえば、1回1050ドルでファッションモデルの唇をふくらませるために皮膚移植が行われる。ペニスを太くしたり、目尻の皺をとるために使用される場合もある。また歯科医は、差し歯用インプラントに、粉末化された人骨を年間に20万回も使用している。(186頁)


これが、いま進行している現実である。

1994年時点で、全米でヒト組織採取のために6000の遺体が処理されたが、その後急増し、現在では年2万以上の遺体が、ヒト組織の製品化リサイクルに組み込まれている。……こうして買い集められたヒト組織は、殺菌・加工・梱包され、多種多様な製品としてカタログ販売され、医療用ヒト組織の全米市場規模は2003年に10億ドル(1100億円)に達したとみられている。(188頁)


このマーケットは、今後ますます拡大していくにちがいない。

毎年、1万7500の遺体が医学研究と医学教育のために献体として提供されているが、これ以外に4000体が遺族に説明することなく、さまざまな他の目的の実験に用いられている。乗用車のエアーバッグの機能検査、ヘルメットの強度の試験、スノーボードの締め具の実験などに、献体やその一部が転用されている。(192頁)


遺体への敬意などというのは、資本主義の下では、
単なる「主観的な思い込み」にすぎないのであろう。

世界的な臓器不足は、よく知られているように経済格差を利用した「移植ツアー」を生んでしまっている。実際、湾岸諸国(クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)やマレーシア、シンガポールから、インドに腎臓移植手術を受けに行くことは定番化している。また台湾、香港、韓国、シンガポールからは、中国本土に手術を受けに行くケースが少なくない。腎臓移植手術はこの1995年の時点で、先進諸国では4万〜7万ドル経費がかかるのに対して、これらの国では1万5000〜2万ドルで手術が受けられる。(195−196頁)


尚、中国政府は、外国人の臓器移植ツアーの受け入れをすでに規制した。

このことはメディアによって報じられている。

海外で臓器を買いあさっている日本人も、少なくない。

WHO(世界保健機関)は、臓器売買は世界人権宣言に違反するものである、
との決議を何度も出しているという。

売ってはいけないものが、世の中にはあるだろう。

とくに日本の場合、学界のガイドラインに強制力がなく、
病院がガイドラインを破ったとしてもこれを規制することができない。

アメリカでは、「自己決定」を重視している。

ヨーロッパでは、「連帯」という概念をこれに対置している。

社会的な規制を考えるなら、「自己決定」にかわる枠組みが必要であろう。












テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
米本昌平『バイオポリティクス』(中公新書) フォーラム自由幻想/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる