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zoom RSS 福岡伸一『もう牛は食べて安心か』(文春新書)

<<   作成日時 : 2007/11/04 17:48   >>

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これは、いずれ読もうと思って、しばらく前に買ってあった本である。

買ったときは気づかなかったのだが、この本の著者は福岡伸一だった。

先日ここで感想を書いた『生物と無生物のあいだ』の著者である。

お、と思って、早速読んでみた。

タイトルからは、「狂牛病」関連の本であることが分かるだろう。

ただ、中身を読むと、意外なことに、「狂牛病」のことだけではなかった。

『生物と無生物のあいだ』と、一部内容が重複するところもあったが、
臓器移植、遺伝子組み換え作物、記憶のメカニズムなど、多岐にわたっていた。

この本も、ひっじょ〜におもしろい。

このテの専門家は「狂牛病」というのを好まない。

「BSE(牛海綿状脳症)」という言葉を使う。

新聞社も、執筆者に対して、「狂牛病」を「BSE」に訂正するように求めるらしい。

しかし福岡は、「狂牛病」という言葉にこだわってこれを使いつづける。

また福岡は、全頭検査の見直し論を打ち出した、
内閣府直轄の食品安全委員会の対応についても、きびしく批判している。

アメリカの圧力に屈して、非科学的な判断を行なったからである。

狂牛病の問題については、報道は沈静化しているようだ。

だが、問題はまだまだ解決していない。

異常プリオンの蓄積が関係していることは、研究によって判明しているが、
感染源や感染経路など、まだ分かっていないことも多い。

特定危険部位を取り除けばいいのかというと、そうでもないようだ。

わたしたちが口にする肉(筋肉)の中からも、
異常型プリオンタンパク質が検出されたという。

血液で感染するという研究報告まである。

日本でも、一定期間イギリスに滞在していたひとは献血できないことになっているが、
それはこのためであろう。

薬害ヤコブ病事件もある。

ところで、「狂牛病」の問題について、イギリスは犯罪的行為を行なっていた。

 羊の風土病だったスクレイピー。その病原体が食物連鎖網の組み換えを伝って牛に広がった。感染源は肉骨粉だと特定され、その使用が禁止された。発生数の急速な減少を見て、2000年までには狂牛病禍は終息するとの見方もあった。しかし、その裏でイギリスはとんでもないことを黙認していたのである。(33頁)


さて、いったいイギリス政府は何を黙認したのだろうか。

 ……イギリス政府は1988年7月、肉骨粉飼料を反芻動物にタンパク質飼料として使用することを禁止した。しかしこれはあくまで国内に限ったことだったのである。レンダリング産業はそのまま続行され、使用禁止に伴ってだぶついていた肉骨粉は、国外へその販路を求めたのである。(33頁)


なお「レンダリング」とは、羊や牛や豚などの家畜から、食用肉を取り去った残りの部分の廃物やくず肉を集めて、加熱・脱脂し、これを乾燥させ粉末としたものを、タンパク質を含む家畜飼料として「リサイクル」すること、この廃物再生の工程のことをいう。(25頁)

イギリスは、危険であることを重々知りながら、
アジア諸国を含む各国に肉骨粉を輸出していたのである。

これはどうみても犯罪ではないか。

では、この時期のイギリス首相は誰だったのか。

本書にはそのことについては書かれていないが、犯人はハッキリしている。

マーガレット・サッチャーである。

楽観的で暴力的な市場主義者サッチャーは、
世界中のひとびとの健康よりも、レンダリング産業の利益を重視したのである。

「狂牛病」は、今も解決してはいない。

結論を言えば、まだまだ牛を食べても安心ではない、ということだ。

これが本書の結論である。
















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