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zoom RSS 福岡伸一『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)

<<   作成日時 : 2007/10/31 02:38   >>

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いま話題の本である。

著者の福岡伸一は、先日のNHKテレビ「爆笑問題のニッポンの教養」に出演していた。

言葉のつかみ方がなかなか誠実で、好感がもてた。

わたしの仕事上の関係もあって、早速読んでみた。

すごくおもしろかった。

生命とは何か。

生物とは何か、生物と無生物との違いはどこにあるのか。

分子生物学の発展過程を、研究者のエピソードとともに辿ってゆくのが、
この本の筋である。

読ませる、よどみなく流れる著者の言葉とユーモアが心地よい。

生命とは「自己複製を行なうシステム」であるという見方に対して、
著者は「動的な平衡状態」という概念で捉えなおそうとする。

本書の内容に新しい知見があったわけではないのだが、
研究者のエピソードがおもしろい。

DNA二重螺旋構造の発見で、
1962年にノーベル医学・生理学賞を受賞したワトソンとクリック。

彼らの偉大な科学者というイメージは、この本によって、大きく変わる。

狡猾で野心的な人物像が次々に描き出されている。

とくにワトソンがずるい。

また野口英世のアメリカでの評価についても記されている。

まあ、このあたりの事情については、著者が非常にうまく説明してくれているので、
実際に読んでいただく方がよいだろう。

つい先ごろ、このワトソンは人種差別発言で問題になったばかりだ。

いちおう記事を引用しておこう。

「黒人は白人よりも知性が劣る」とも受け止められる人種差別的発言をし、物議を醸した米ノーベル賞科学者、ジェームズ・ワトソン博士(79)は25日、ニューヨークにある所属先の「コールド・スプリング・ハーバー研究所」の職務を辞任したと発表した。


博士は18日、発言は恥ずべきものだったと謝罪している。
新著「Avoid Boring People: Lessons from a Life in Science」の宣伝で17日から英国を訪問した。しかし、英国入りする前、英紙の取材を受け、「アフリカに対する見通しは、本質的に悲観している」とし、「すべての社会政策は、彼らの知性が我々と同等であるという事実に基づいて行われているが、あの土地で出てきた結果はすべて、これが真実ではないことを示している」「黒人の従業員を雇う人々は、(人々は等しいということが)真実ではないと分かっている」などと語っていた。


CNNのWEBサイト」より引用

この本を読むと、ワトソンとこの差別発言が、違和感なく結合する。

ともあれ、研究というのは、先人たちの研究の蓄積の上に達成されるものである。

研究者が成果をひとり占めにするのも問題だが、
有名な賞をとったひとだけにスポットライトを浴びせる人びとも、
権威主義的である。

知的財産権の問題を考えるうえでも、ぜひ知っておくべきことだろう。

また、この本でおもしろいのは、分子生物学から見た身体観である。

皮膚の内側に、確固とした「自己」を想定するわたしたちの身体観は、
さぶられる。

では、分子レベルで身体を考えると、どうなるか。

私たちは、自分の表層、すなわち皮膚や爪や毛髪が絶えず新生しつつ古いものと置き換わっていることを実感できる。しかし、置き換わっているのは何も表層だけではないのである。身体のありとあらゆる部位、それは臓器や組織だけでなく、一見、固定的な構造に見える骨や歯ですらもその内部では絶え間のない分解と合成が繰り返されている。


よく私たちはしばしば知人と久闊を叙するとき、「お変わりありませんね」などと挨拶を交わすが、半年、あるいは一年ほど会わずにいれば、分子のレベルでは我々はすっかり入れ替わっていて、お変わりありまくりなのである。かつてあなたの一部であった原子や分子はもうすでにあなたの内部には存在しない。


このような身体観は、
「私とは何か」「自己とは何か」という哲学的な問いにも影響を与える。













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