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zoom RSS 原田正純『水俣病』(岩波新書)

<<   作成日時 : 2006/01/09 13:54   >>

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この本は、当時、熊本大学医学部で研究をしていた筆者が、
水俣病をめぐる諸問題と格闘してきた生々しい証言である。

水俣病は、熊本県水俣湾周辺で発生した有機水銀中毒症で、
チッソという企業が原因であった。

チッソの工場が排出した有機水銀で汚染された魚介類を食べて、
人間にも被害が及んだのである。

なんと1000人近くの人が水俣病で亡くなっている。

まぎれもなく大量殺人である。

この本を読むと、さまざまな苦難と障害があったことがわかる。

責任を認めようとしないチッソだけではない。

原因物質の特定を遅らせ、問題の先延ばしをはかる医学者たち。

患者を置き去りにして。

支援を求める患者の必死の訴えに対して、
「お金がほしいのか」と言い放った水俣市人権擁護委員会のひとり。

また、「世間」の目を気にして、被害を訴えることを躊躇する患者。

患者たちはこのチッソの支配する町のなかで、なるべく病気を隠そうとした。
たとえば〔昭和〕45、6年になってすら、私たちはしばしば診察を拒否され、
申請を拒否する人々に出会った。
その理由は、「チッソがなくては水俣は成り立たない、チッソをつぶしてはいけない」というのである。
さらには、「娘がいて、縁談に差しつかえる」とか、
「魚が売れなくなるから、漁協のみんなに申しわけない」とか、
「人から金ほしさに申請したと言われるのがくやしい」という理由など、さまざまである。

ある患者の家で、私はたまりかねて、どうしてこんなにひどいのに、
10年も放っておいたのかとその妻に聞いた。
その妻は畳に頭をすりつけ、悪うございました、すみませんでしたとあやまるのである。
あとになって、その意味がわかった。
それは〔昭和〕34、5年ごろ、当時認定された患者さんたちに対して、
その妻は、「水俣病はよかねえ、寝とけば金がもらえる」などといやがらせを言って、
よく、患者家族を泣かしたのである。
かつて加害者であった人が、いま、逆に被害者となった。
なんと悲しい、現代版いじわるばあさんの物語だろう。


日本社会の一面がくっきりと浮き彫りになる出来事である。

いまでは、公害もだいぶ減ってきた(もちろんなくなったわけではない)。

しかし、日本の厳しい公害規制を逃れて、
日本企業はいまもなお公害を途上国に輸出している。















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